ぶいなろっ!!~デビュー3分で前世バレする伝説を作ったVTuber。そんな推しライバーの俺に対する距離感がバグっている件。俺はいちリスナーであって配信者ではない!~
第56配信 犬飼と相良、同僚になるってよ
第56配信 犬飼と相良、同僚になるってよ
本当に色々な事が立て続けに起こってパニック寸前だ。
いきなりファイプロの社長が家に来て陽菜との交際の話をしていたと思ったら、俺の勤めている会社がファイプロの子会社になり、週明けに俺はファイプロのスラッシュ&マジック及びGTR開発部門に異動することになった。
子会社から親会社への異動だから実質これは栄転なんだろうが、まだ頭がこの現実に追いついていない。
そもそも自分でも気づかない間にぶいなろっ!!の仕事に関わっていただけでも驚きなのに、今度はさらに大きなプロジェクトに直接関わる事になってしまった。
社長は帰り際にこの仕事は俺が適任だと言っていた。
GTRぶいなろっ!!サーバーの開発と実施にはエンジニアでありつつ、ぶいなろっ!!への深い理解と愛情に溢れている人間でなければ務まらないと言っていた。
今回の訪問は俺の陽菜やぶいなろっ!!に対する気持ちを確認する為でもあったらしい。
「ファイプロへの異動の件は陽菜に話しても問題ないけど、GTRの件はメンバーにもまだ秘密だから他言無用か。――本当にとんでもない事になったなぁ。はぁぁぁぁぁぁ」
「大きな溜息を吐いて……大丈夫ですか、優さん?」
「……うん、大丈夫」
キャニオン社長が帰った後、俺は陽菜の家に来ていた。本日のガブリエール重要告知配信まで一緒に居る予定だ。陽菜には俺の会社がファイプロの傘下に入り、ファイプロのスラッシュ&マジック部門に異動する事を伝えた。
陽菜は素直に喜んでくれたが、彼女に隠し事をしている自分としては申し訳ない気持ちがあって素直に喜べない。そして俺がげんなりしている理由はもう一つある。
「それにしても犬飼さんがあたしと同じ会社の人間になるとはねぇ。よろしくお願いしますね、ワ……犬飼さん」
「相良さん、俺を今ワンユウって呼ぼうとしたでしょ! いや、それ以前に喫茶店で話をした時にどさくさに紛れて俺をワンユウって言ってましたよね!? あれやっぱり俺の聞き間違いじゃなかったって事ですよね? だとしたらあんた、俺がワンユウだと知りながら陽菜に黙っていたって事ですか!?」
陽菜と付き合いだしてから一度だけ相良さんと会ったのだが、その時に彼女から自分はガブリエールのマネージャーだと改めて挨拶があった。
その時はそれで終わってしまったのだが、後で色々と思い返してみるとこの人の言動や行動はおかしかった。隙あらば陽菜を押し倒せと言っていた人物だ。
「いやだって、犬飼優でワンユウって……フフ、ちょっと安易なネーミングセンスじゃないですか。それにあれだけ興奮して太陽推しガブ推し言って、最終的に推し歴四年って自爆したの犬飼さんですからね。それにガブさんにあなたの事を伝えないというのは社長の方針でもあります。文句があるのなら社長に言って下さい」
「汚いぞ、あんた! あんな社長にそんな事言ったら俺の尻にナニされるか分かったもんじゃないだろうが!」
「きっと肛門括約筋がバカになるんじゃないですかね? フフッ」
「くぅ……!」
キャニオン社長がバックにいる限り相良さんには勝てない。この人からはあの社長と同じ雰囲気を感じる。真実を知っておきながら面白いという理由で俺と陽菜を放置していたに違いない。
「あたしもガブさんには悪いと思っていましたよ。でも、ここで第三者から答えを聞いたらドラマティックな展開にならないでしょ? せっかく本人の力でここまで獲物に近づいたんですから最後までやり抜いて貰った方がいいじゃないですか。まあ、あたしとしては、当初の予定よりかなり早くお二人が正体に気が付いてくれたお陰で甘酸っぱいラブラブ見せられて萌え死なずに済みましたよ。――そう言えば、作者は本作エロ過ぎる部分あるから修正しろと運営から連絡があってビビっていたみたいですね。多分あのシーンだろうと思った部分を泣く泣く修正したらしいですよ。一体どんなシーンだったんでしょうねぇ。もう修正しちゃったから分からないなー。病み上がりに無理させちゃいけないという感じで落ち着いたから良いのかなー?」
「はう……」
陽菜が顔を真っ赤にして俯いてしまう。このマネージャー、絶対どのシーンのどう言う内容だったか知ってて言ってるだろ。
「そう言うメタな発言は止めて貰って良いですかね? あんまり調子に乗ってると相良さんも何かしら大変な目に遭いますよ?」
「あたしですか? あたしは今後はあなた方のリミッターが掛かったイチャイチャを楽しむだけですよ。どうせ頑張り過ぎたら修正入るんですから適度なエロに落ち着くでしょうよ」
「この人完全にやさぐれてるなぁ……」
こんな感じで俺と陽菜は相良さんに振り回されながら配信の時間が近づいてきた。俺はマンションに戻り配信が始まるのを待つ。
今さらだが、さっきまで居た場所でこれから始まる配信が行われていると思うと変な感じがする。
AINEにはガブちゃん愛してるグループの連中からメッセージが入っていた。
予め許可は取って彼らには今回の配信内容を伝えていた。皆驚いていたが祝福のメッセージを送ってくれた。
「陽菜だけに任せるんじゃなくて俺もタイミングを見計らってコメントを入れないとな。キャニオン社長は大丈夫だって言ってくれていたけど、実際どうなるかはその時になってみないと分からないもんな」
緊張で鼓動が早くなる。自分は配信者ではないが直接関係している件がこれから配信されるので気が気じゃない。そして改めて思った事がある。
「陽菜は配信の度にこんな緊張と戦っているのか。凄いなぁ……」
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