第40配信 夢で逢えたら 温泉編②

 戸惑いの中、俺はガブリエールに言われるがまま先に部屋付き露天風呂に入浴することにした。彼女はアクセサリーを外したりでちょっと遅れるらしい。

 このままガブリエールが浴室に入ってくる前に終了のパターンになる気がしてきた……。


 取りあえず服を脱いで浴室に入るとまずは髪と身体を洗い温泉に入る前に身を清める。その後はタオルを湯船に触れない所に置きゆっくりと温泉に入った。


「あーーー、気持ちいいーーーー!! 夢だと分かってるのにこの心地よさ。今度有給を使って温泉旅行にでも……いや、止めておこう。一人外食はともかく一人温泉は俺には少々ハードルが高い。最寄りのスーパー銭湯にするかなぁ」


 露天風呂には囲いがあって外からは見えない様になっている。プライバシー保護はしっかりしている。ここでナニかあったとしても誰かに見られる心配は無い。


「……俺は一体何の心配をしてるんだ。どうせ俺が楽しい思いをする前に夢が終わるに決まってる。あまり期待しないでおこう」


 肩透かしを食らったらダメージが大きいので期待せず何となく浴室扉に視線を向けると目を見開いた。

 扉のガラス部分の向こう側にぼやけた感じではあるが人がいるのが見える。

 その人物――ガブリエールが服を脱いでいく様子がリアルタイムに目に飛び込んでくる。ガラスの性質状はっきりと姿が見えないのが悔やまれるが、これはこれでエロい!

 ガラス越しにいる人物が全身肌色になったのがぼやけていても分かった。つまりガブリエールは本当に裸になっていると言う証拠だ。……マジで?


「ワンユウさん、入りますねぇ~」


 そう言って浴室に入ってきたガブリエールはハンドタオル一枚を身に着けただけだった。

 身に着けていると言ってもタオルを垂らして胸と下半身の重要部分を隠しているのみでその他には何も身に着けていない。


「うわぁ……」


「……ワンユウさん、見過ぎですよ。恥ずかしいです」


「ご、ごめん……」


「謝りながら直視しているじゃないですか。もう……!」


 ガブリエールは頬を少し膨らませて怒ったように見せていたがすぐに笑顔に戻る。恥ずかしさで騒いだりしない落ち着いた大人の対応にドキッとする。

 配信で見せる天真爛漫で無邪気な様子とは違う大人の女性としての一面を見て、二人だけのこの状況をますます意識してしまう。


「お風呂に入る前に身体を洗いますね」


 そう言ってガブリエールは浴室の椅子に座る。位置的に俺からは彼女の側面の様子が見える。つまり前に掛けていたタオルの存在意義が失われると言うことだ。

 それどころかガブリエールは椅子に座るとタオルの位置を変えて太腿の上に乗せた。つまり上半身は完全なフリー状態。

 視線を彼女の豊かな胸の先端へと向けると不思議な現象が起こっていた。


「あ……あれ? 今日は天気良いからか……日差しが強いのかな?」


 上空から降り注ぐ光が差し込んで胸の先端を隠している。それどころか、その光は彼女の下側も隠していた。

 身体を動かして色々な角度から見ても謎の光の仕事は完璧で全然見えない。

 怪我をしていない絶好調の若〇君に負けない鉄壁のキーパーぶりだ。俺のいかがわしい視線シュートを何度繰り出しても弾かれ受け止められ跳ね返される。


「これが世界の答えか……クソッッッ!! この期に及んで謎の光で重要部分を隠してくるのか! こんな中途半端なエロシーンなら無くても同じじゃないか。こんな不完全燃焼で誰が喜ぶって言うんだ」


「ふんふんふんふ~ん、ふふふん、ふふ~ん!」


 世界の規律に邪魔されて悔しがる俺とは対照的に髪を洗い終わったガブリエールは楽しそうに鼻歌を歌いながら身体を洗っていた。

 泡ボディソープを手の平に取って全身マッサージをするみたいに優しく揉み込んでいく。

 泡がセンシティブゾーンを隠すと光が消えて泡が肌の表面を滑り落ちてゾーンが露わになりそうになると再び光が出現する。

 俺はもうこの光を突破しようと努力するのは諦めた。俺の平凡なシュートじゃ絶好調の〇林君の守りを抜くのは不可能。あいつのゾーンディフェンスは完璧だ。


 それにそもそも突破する必要がないのである。

 ガブリエールのゾーンを守護する謎の光は本当に最低限の範囲しかない。ぶっちゃけ絆創膏で隠しているのと同じレベルだ。

 つまり光で隠れている部分を抜かせば九十五パーセントフルヌード状態なのである。

 ぶっちゃけ残りの五パーセントに関しては、こんな事言ったら怒られるかも知れないが他の女性のものとそこまで大きく変化しないだろう。

 それにむしろこの光がある方がエロい気さえしてきた。三箇所のゾーンを申し訳程度に隠す光がまるでスリングショット水着みたいに見えてくる。

 つまり今ガブリエールは光素材の紐水着を身に着けて身体を洗っているのと同じなのだ。


「ふふふん、ふふふふふん、ふんふふ~ん! よいしょっと……」


 身体を上の方から洗い進めていたガブリエールの手は巨大な二つの山に到達した。

 ふもとから山頂に向かって円を描くように手で優しくマッサージしながら泡雪で彩っていく。

 双子山が雪化粧した後は片手で山をそっと持ち上げ下乳と谷間を洗っていく。

 片方の山の手入れが終わると手を離しタプンッと音を立てながら元の状態に戻った。そこからもう一方の山も同じように洗われていく。

 とにかく巨乳の重量感がハンパない。それでいて物凄く柔らかそうでつきたての餅とプリンを合わせたような感じだ。ぷるぷる震えていて躍動感がある。


 ガブリエールは全身を洗い終えると髪をアップにし、タオルを浴槽の外に置いてゆっくり入湯してきた。


「お隣失礼します。思った通り二人で丁度良い大きさのお風呂ですね。ふぁ~、気持ち良いですぅ~!」


 ガブリエールが入った事でお湯がオーバーフローし排水溝にゴプゴプと音を立てながら飲み込まれていく。お湯が勿体ないかも知れないがこの贅沢な感じが掛け流し温泉の醍醐味だ。

 岩風呂の浴槽は大人二人が入って少し余裕があるぐらいなのでガブリエールとの距離は近く身体が触れそうになる。

 温泉に入っても謎の光は立派に務めを果たしていたが、俺にはスリングショット水着にしか見えないのでとてもエロい事に変わりはない。

 そんな光の紐水着姿のガブリエールが身体を寄せてきた。お湯に巨乳がぷかぷか浮いていて谷間にはお湯が溜まって小さな湖畔が出来ている。

 湯船の中では手と手が触れてお互い少しずつ手を動かしていたら俗に言う恋人つなぎになっていた。

 

「今のワンユウさんは配信の時と違って大胆で積極的ですね。これって私のことをそう言う対象として見てくれているって事ですよね?」


「それは……当たり前だよ。こんなに魅力的な女性が積極的にアプローチしてきて、おまけにこの場に俺たちしか居なかったら遠慮したり我慢したりする必要なんてないじゃないか」

 

「なるほど……いつもワンユウさんは我慢してたんですね。――エッチなんだぁ」


 クスクス笑い蕩けた声で囁くガブリエールの表情は配信では見たことが無い扇情的なものだった。それは初配信でナマナマ言っていた時とも違う。

 表面上は静かでも内ではマグマの如く情欲が煮えたぎっているオンナの笑みだ。

 これが夢であったとしてもガブリエールにこんな表情をする可能性があると思うだけで気持ちが昂ぶる。


「少し離れようか?」


「どうして?」


「ちょっと……このままだと色々とヤバくなりそうだからさ」


「……色々とヤバくなる為に私をここに連れてきてくれたんじゃないんですか? このお部屋用のお風呂もあのベッドも……それに夕食もお部屋に運んできてくれるみたいですし、このお部屋から出る必要なんてないでしょ? 部屋から出ずに温泉と私を堪能するためにここに来たんでしょ? 四年の付き合いなんですからワンユウさんの考えてる事なんてお見通しですよ。ムッツリなんだからぁ……」


 ガブリエールの声がどんどん甘くなり身体を密着させてくる。

 温泉で身体が温まっているからか彼女の白磁の肌は桃色に染まり、その肌の表面を温泉の水滴が滑り落ちていき、情熱を帯びた潤んだ瞳で俺を真っ直ぐに捉える。

 俺の理性はガブリエールからもたらされる情報で完全にショートして本能だけが働いている。


「ガブ……」


「ワンユウさぁん……」


 俺とガブリエールは見つめ合いどちらからともなく唇を近づけていく。

 これが夢であることなど今の俺にとっては些細な問題だった。四年前に配信の海で出逢い沼った彼女に俺は今もなおズブズブと沼り続けて浮上不可能な所まで沈んでいる。

 それを今、夢の中で俺はハッキリと自覚していた。

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