第21配信 HIGA

 ガブリエール・ソレイユ――Iカップ。アマテラス・ソル――Hカップ。ルーシー・ニュイ――Gカップ。そして、ベルフェ・ナハト――Aカップ。

 ぶいなろっ!!六期生、ゴッド&デビルのユニット内で起きた胸部格差社会。自分だけ圧倒的ペッタンコな状況にベルフェは泣いていた。

 ユニットの他三名は慰める言葉が見つからず見守ることしか出来ない。その時、コメント欄に反応があった。



コメント

:ちっぱいの何がいけないのかね?

:そうだ、そうだ! 大きければ良いという訳じゃないぞ

:ベル様はご自分の魅力に気が付いていないご様子

:小柄、ロリ、ちっぱい……これ即ち三種の神器ナリ

:ベル様は既にこれらの神器を保有しておられる

:ここに例えばスク水、ブルマなどが加わってご覧なさいよ

:無垢の結晶 尊さの極み……神々しすぎて溜息しか出ない

:その通りです。なので、ベル様、どうか……どうか我々背信者にあなた様のグラビアを!!

:何となく言いたい事は分かるが、これは……犯罪のにおいしかしない

:我々を犯罪者と言うのならそれは君たちも同罪だよ

:ほう、それはどう言う意味かな? 説明して貰おうか

:六期生だけに限らず、ぶいなろっ!!メンバーの多くは配信開始時の準備中画面に自分のデフォルメキャラを出しているが、君たちはそれを見てどう思うね?

:とても可愛いと思います。ってか、デフォルメキャラを可愛くないと思う人はいないと思います

:おいおいおいおい、いきなり言質取っちゃったよ

:君は今、自分はロリコンだと自白したんだよ

:なん……だと!?

:デフォルメキャラを可愛いと思う理由を述べなさい。その時あなたは「まさか俺はロリコンだったのか!?」と言う

:何をバカなことを。そんなの小さいからに決まって――! まさか俺はロリコンだったのか!? ……ハッ!!

:気が付いたかね? デフォキャラを可愛いと思うこと即ち……ロリコンなんだよ

:一体いつから自分がロリコンじゃないと錯覚していた?

:つまり我々が何を言いたいかと言うと……ロリは正義。ちっぱいはロリにとって無くてはならない因子ファクターなんだよ



「俺は……俺たちはロリコンだったのか。これがベルリスの……背信者たちの本当の実力……」


 これはもうバストサイズがどうのこうのと言う問題では無さそうだ。

 本性を露わにしたベルリスがコメント欄を支配し、その他勢力のリスナーが屈服している。まさか、初回コラボでいきなり仕掛けてくるとは思わなかった。


『ロ、ロリは正義……Aカップでも……いいのか。フフ……ハハハ……ハーハッハッハーーー!! そうだ、よく言った背信者どもよ! さあ、よく聞け愚民共! 我はベルフェ・ナハト、ロリの悪魔よ!! 我が支配がより強固になった暁にはグラビア撮影生配信だろうが何だろうがやってやろうじゃないか!!!』


 ロリの悪魔って何なんだよとコメントを打ちそうになったが、ベルフェは自信を取り戻しベルリスとの絆が深まったからそっとしておこう。

 今回のコラボでアマテラスとベルフェがそれぞれのリスナーと絆を深められたので、とても良い内容だったと思う。

 配信時間や内容からしてそろそろお開きになるかな? あれ、コメント欄が……。



コメント

:やった、やったぞ! ベル様が復活なされた!!

:見たか愚民共よ。これからはベル様の時代……我々、ベルフェ公国の時代なのだよ!

:ベルフェ公国……だって? オレ達はこのまま支配されて終わるのか……

ワンユウ:話が変な方向に行ってるな。バストサイズの話が何でこんな……

:何か手立ては……ロリへの対抗策……。バストサイズ……? Iカップ、Hカップ、Gカップ、Aカップ……

:I……H……G……A……ピキィィィィィィィン! えるっ!! さすがです。ワンユウ総司令!!

:ワンユウ総司令がいる限り我々に負けはない。ベルリスよ、我々ガブリスの結束力を今ここに見せよう。総員配置につけ!

:西暦2024年、ロリ思想を掲げたベルフェ公国は地球に宣戦布告、巨大人型兵器アバターを使って地球軍を追い詰めていった

:それから数ヶ月後、地球の学生ガブリエール・ソレイユは中立国ワン・ユウで平和に暮らしていたが、そこをベルフェ公国のアバター部隊が襲撃した

:戦火に翻弄され逃げ延びた工場の中でガブリエールは一機のアバターを偶然発見し、迫り来る炎から逃れる為にアバターのコックピットに乗り込んだ

:どうして中立国のワン・ユウの工場にこんなアバターが……こいつ、動くわ……

:モニターに文字が……V-Naro AVATAR Mk-Ⅵ……OSが立ち上がる……?

:Holy ホーリー(神聖な)

:Infernal インファーナル(地獄の)

:Galactic ギャラクティック(銀河の)

:Apple アポゥ(りんご)

:これは……ぶいなろ アバター六号機……ヒガ……?

:このアバター、動きが鈍すぎる! ……無茶だわ、こんなOSでこれだけの機体を動かそうだなんて。こうなったらOSを書き換えるしかない……!

:キャリブレ何とか取りつつ、何ちゃらモーメントとか何とかを再設定……ちぃっ!

:なら、ホニャララ皮質のウンタラポンプに何かを直結! ニュートラルかんとかネットワーク再構築、メメタァ何とかパラメータ更新!

:コリオリ……ルーチン? ええと、接続! システムオンライン! ええい、もういいや、その他まとめて全部起動!!

:ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁ!! 何処から突っ込めばいいか分かんないよ!!!

:ワンユウが国の名前になってる所から始まって、何を思って四人のバストサイズをOSの名前にしたんだよ! 頭おかしいよ

:まだ、H、I、Gは何か意味が格好いいから良いけどさぁ、A担当! お前だよ、お前!!

:Aから始まる単語なんて他に幾らでもあっただろ! 何でりんご……www 

:A担当にはやる気が無いと思ったら、どうして発音はネイティブ意識してるんだよ。努力する方向間違ってるよ。もうさぁーーーーーwww

:それに、この学生……全ッ然OSに詳しくないじゃん! 途中何回も理解してない発言してて草

:緊迫してる雰囲気を出してるけど最後は面倒になって丸投げしてるしさ、そんなんでOS弄ったら絶対メチャクチャになるだろwww

:ていうか、ヒガって何なんだよwww 神聖な地獄の銀河のりんごって何なんだよ、フザケンナwww

:ガブリスはコメントの為ならガブちゃんもワンユウも平気でネタにするのか。何て奴等だw

:くっ、機体のコントロールが更に悪くなったわ……どうして!?

:まだ続いてたのかよ! 言わんこっちゃない、余計酷くなっちゃった。OSがいよいよバカになった

:このままじゃ、やられる……武器……何か武器は……ちくわ……? これだけかぁぁぁぁぁぁ!!

:想いだけでも……ちくわだけでも……fin

:そこで終わるのかよ! りんごだったりちくわだったり、もう訳分かんねえよw

:これ絶対最後面倒くさくなって投げただろ。せめて最後は美しく見せようとしてfinって入れたのバレバレだかんな!

:クッソwww

:やはり最強はガブリスか……



 こうして最終的にはガブリス――使徒たちが暴走してコメント欄を乗っ取り訳が分からないままリスナー同士の抗争は終わった。

 六期生の四人もまた混沌極めるコメントの数々に翻弄されていたが、結果的には六期生の結束は強まり、それぞれリスナーとの理解も深まったので結果オーライとなって初コラボは終了した。

 俺が呟いた短いコメントが切っ掛けでこんな事態になるなんて予想出来ねえよ。

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