第12配信 おつがぶ~
『えへ……えへへ……まさかいきなりワンユウさんが来てくれるとは思ってなかったです』
:「はぁ……今さらどう取り繕っても無駄だからなぁ。――久しぶり、凄いじゃん」
『ありがとうございます。あの時は守秘義務で詳しくは説明出来なかったんです。それにしても……あはは、やっぱり暴走しちゃいました。本当はもっと感動的な再会を考えていたんですけどね。お恥ずかしい所をお見せしました』
:「まさか、あんなヤバい配信をするとは……」
『私も気が付かなかったんですよ。まさかワンユウさんからコメントを貰えなくなった事であんな風に禁断症状が出るなんて――そのせいでこのガブリエール・ソレイユのデビューの為に尽力してくれた皆さんに迷惑をかける結果になっちゃいました』
俺の生コメントを摂取した為か正気を取り戻したガブリエールは冷静に今の状況を受け入れている。前世バレしたし、これは完全に炎上案件だ。多分無事では済まないだろう。
もしかしたら、このまま――。
『かなり脱線してしまいましたけど、この配信はガブリエール・ソレイユをリスナーの皆さんに知ってもらう為のものですから、ここからは本筋に戻って色々と説明させていただきます!』
コメント
:ハッ! そうだった
:初っぱなからぶっ飛んでて自分が何をしていたのか忘れてた
:今北産業。同接エグいことになってるけど、理由を誰か説明してクレメンス
:新人天使VTuberの昇天&前世バレ
:そこで天使の前世のボスリスナーワンユウを召喚!
:現在、正気に戻った天使とワンユウの会話でターンエンドだ!!
:どんなデュエルだよwww
:これから何を教えてくれるんだろう?
:既に俺たちは天使のイキ顔を見てしまったのだが
:これ以上リスナーに晒せる何かがあるというのか!?
:うおっ!? 同接二十万人超えたぞ。ヤバいヤバい
:同接のインフレ具合が某戦闘力みたいになってきたな
『リスナーの皆さん、恥ずかしい姿を見せてしまい申し訳ありませんでした! ここからは当初の予定通りに進めていきます。まず注目して貰いたいのは、このガブリエール・ソレイユのLive2Dです。それでは行きますよぉ!!』
最初に出てきた時の動作でアバターの動きが凄いことは俺も皆も分かったと思うが、ガブリエールは何をする気なんだろ?
取りあえず喉渇いたからお茶飲も。
『せーの、よいしょっ! よいしょっ!』
「ゴク、ゴク、ゴ……!? ぶふぉっ! げほっ、げほっ、げほっ、おえっ!!」
『どうですか、この動き? ワンユウさん、これ凄くないですかぁ!?』
ガブリエールが勢いよく身体を左右に振り始めると、その豊かな双丘がバルンバルンと揺れまくる。こぼれ落ちるんじゃないかと思うほどの見事な揺れ具合だ。
驚いた俺は盛大にお茶を噴き出した挙げ句、変な所にお茶が入ったらしく咳き込んでしまう。それでも視線だけはガブリエールから外さない。本能が画面を見ろと言っている。
「ごほっ、ごほっ! これは……すっご……せ……セクシー過ぎる!!」
気が付けばこのセンシティブな光景を前にコメントを打たないと気が済まない気分になっていた。
コメント
:うわぁ……うわぁ……
:しゅごいぞ、これはーーーーー
:デッッッッッカ!!!
:ありがとうございますありがとうございますありがとうございます
:この天使には羞恥心が無いと言うのか。もう神じゃん!
:Q 神の定義とは?
:A 個としての恥ずかしさを捨て全にエロを提供する存在
:それ即ちONE FOR ALLの心構えなり
:888888888888
:これはいいものだ
:これで我々リスナーは、あと十年は戦える
:サービスサービスゥ
:ここ(胸の谷間)に注目
:Fooooooooooooooooo!!
:お前ら興奮しすぎやで
:そう言うお前は鼻血出てるぞ
:チョコレートを食べ過ぎた
:子供かよ
:子供はこんなエッチなの見ちゃイケません
:ありがとう天使様ァァァァァァァァァ!!
:これが神族のやぁぁぁり方かぁぁぁぁぁ!! 感謝! 圧倒的感謝!!
:満足しちゃったよw
ワンユウ:何て精密なLive2Dだ。身体の動きに対してお乳様の動きが自然かつダイナミックなものになっている
:ワンユウ!? どうしたどうした?
:急に語り出したぞ
ワンユウ:しかも……皆、耳を澄ませてごらん
:えっ?
:どう言うこと……?
:何だろう?
『よいっしょ! よいっしょ! よいっしょ!』
タプッ……タプッ……タプッ……タプンッ……タパッ……タパンッ……!
コメント
ワンユウ:ほぉら。聞こえただろう?
:――っ!! 聞こえた! 聞こえたよ!!
:これはもしかして、お乳様の音なの!?
:二つのお乳様がぶつかり合う音ってこと!?
:まさか、このアバターのLive2Dは!!
ワンユウ:そうだ、精巧な乳揺れだけでなくおっぱいビンタの音までも再現しているんだ
:おっぱいビンタ!? 何てパワーワードなんだ!
:この一瞬でこんな事に気が付くなんて、こいつやべえぞ!
:只者じゃあないぜ!
:オッパイに対する執念が俺たちとは一線を画する!!
:さすがは伝説のリスナーと言うべきか……お見それしやした
ワンユウ:いや、俺は普通のいちリスナーなので……
:お前のようないちリスナーがいるかっ!!
:お前のようないちリスナーがいてたまるか、ボケッ
:お前のようないちリスナーがいるわけねえだろうが!
:お前のような……もうネタが無いよぅ
ガブリエールの乳揺れ披露によってガブリエールリスナーの結束は強固なものとなった。
この後もガブリエールのアバターの動きや自身の趣味などについての説明があり、一時間にわたる彼女の初配信は穏やかに終了した。
『色々と暴走してしまいましたけど、私の初配信を観に来ていただきありがとうございました!』
ニコニコしながら手を振るガブリエールに皆の温かい声援コメントが殺到する。それを見て安心したのかガブリエールはホッとした表情をしていた。
安心したのは俺も同じだ。途中はどうなるかと思ったけれど、ガブリエール本人のパワーで何とか軌道修正した。
配信者として粘り強く最後まで配信をやり遂げる根性は出逢った頃と変わっていない……いや、あの頃よりパワーアップしている。
それに雑談中のトークが以前よりも主体的かつ自然に出来ていると思う。ぶいなろっ!!に入り、この二ヶ月の間で色々と練習したんだろう。
:「それじゃ、ガブリエールお疲れ様。安心したし、それ以上に凄く楽しかった。これからも応援するから頑張って!」
『ワンユウさん……はい、頑張ります! おつがぶでした~』
:「なるほど、それが終了時の挨拶なのね。おつがぶー」
とは言ったものの本当は心配でしょうがない。
初配信を開始して特定リスナーを探し続け、センシティブな行動をしまくる醜態を晒した挙げ句に前世バレするという前代未聞のオンパレードをやったのだ。
常識的に考えれば炎上して大変な目に遭う可能性が高い。
「せっかくぶいなろっ!!という大手のVTuberになれたのに……あいつは大丈夫なんだろうか?」
その夜は心配で夜中まであれこれ考えて過ごしていたが日付が変わる頃には眠ってしまった。
その為、スマホのチャットアプリ『AINE』の着信に気が付くのは朝になってからだった。
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