十七歳少年逮捕
約田卓也
十七歳少年逮捕
それは稲妻テレビ画面に映りたり、『十七歳の少年逮捕』
人殺す経験をしてみたかった顔も名前も知らないA君
少年A否定できずにいる心 名もない花を踏んでた記憶
その声は獣、亡霊、死神か少年Aを喰らった奴か
「判決は死刑」のところで飛び起きる朝のニュースは野球に移り
少年の気持ち分かれば罪となる腕の疼きに怯えておりぬ
ワイドショーコメンテーター唾とばす怒りの顔の目の奥笑みて
十七歳、十七歳と唱えられ『キレる若者教』は生まれる
進まない推理小説の次ページよ誰か教えて命はなんだ
哲学者哲学書の名を地図にして進むこの道また行き止まり
思いつくままに命の尊さを己に説いては汗と砕ける
こんな夜のこんな僕を訪ね来る兄貴のような僕の友達
この兄の会わす人らに数多ある人の生き方ひとつの哲学
行き止まりの壁が扉に変わる呪文『願兼於業』を見つけた瞬間
幸せになるから命は尊いと教えてくれた八歳少年
「そうきみは少年Aにはならないよ」運転席の兄の眼差し
宿命を使命に変えた人たちの一人になりたい夏の夜の町
もし君が少年Aでなかったらこんなところで出会ったろうか
人殺す経験したいと言った君、僕は誰かを幸せにしたい
この町が少年Aを忘れても君の犯したことは忘れない
十七歳少年逮捕 約田卓也 @takuya137954
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