第14話 お昼ご飯はまだですか?
有料版のアプリを起動した。
対象者は電話をしていない。盗聴が始まった。
いままで知らなかった現実が明らかにされる・・かも?
・・・・・・・・・・・・・
「正子さん。お腹空いちゃったわ。お昼ご飯は何時かしら?」
「おかあさん。お昼ならさっき食べたでしょ」
「あら、ほんと?」
「また、物忘れがひどくなったみたいですね・・・」
・・・・沈黙。
「でも、本当にお腹がすいちゃったのよ。お茶漬けでもいいから食べさせてくれない?」
「ダメです。お医者様から、食べ過ぎない様に注意されてるでしょ」
ゴソゴソ・・・。
「お母さん、冷蔵庫のなかアサルのはヤメテください」
「だって、本当にお腹が空いて耐えられないのよ・・」
「わかりました。じゃあ、今日だけは特別に3時のお茶に肉まんを付けてあげます」
「本当かい。そりゃーうれしいねー」
・・・・沈黙。
「正子さん。3時のお茶はどうしたんですか?」
「おかあさん。さっき飲んだでしょ・・」
「お茶は飲んだけど、肉まんは食べてないと思うけど・・」
「そんなことありませんよ。ほら、お皿に、肉まんの紙が残ってるでしょ・・・」
「あら、ホントだね・・」
・・・・沈黙。
ゴソゴソ。
「おかあさん。今度は何を探してるんですか?」
「銀行のATMカードがお財布から消えちゃったんだよ」
「それなら、私が預かってますよ。ほら、これでしょ?」
「あー良かった・・」
「でも、ATMカードなんて、どうするつもりなんですか?」
「もちろん、お金を送金するんだよ。さっき長男の次男坊から電話があって、どうしてもお金がいるんだって・・」
「あーら、それってオレオレ詐欺じゃないですか?」
「まさか、あれは確かに孫の声でしたよ。私に限って、騙されたりなんかしませんよ!」
「暗証番号を教えてくれれば、私が代わりに送金してあげますよ」
「そうかい。じゃあ、そうして貰おうかね・・・」
「暗証番号は何番です?」
「・・・確か、私の誕生日だったね・・」
「誕生日なら、11月13日ですね。1113ですか?」
「・・・確か、そうだったかね」
「お母さん、その番号なら違いますよ。昨日、買い物を頼まれた時に、遣って見たけどダメでした・・」
・・・・沈黙。
「それなら、亡くなったお父さんの誕生日だったかね?」
「それも違いましたよ」
・・・・沈黙。
「あー、思い出したよ。あんたの誕生日だった・・」
「お母さん。それって何番ですか?」
・・・・沈黙。
ピンポーーン。
「あら、お客さんだね」
「お母さんは、ここに居て下さい・・・」
ガチャ。
「どちら様ですか?」
「警察だ。カネオ・ホシコ。お前を不法侵入及び窃盗の容疑で逮捕する」
「何を言ってるんですか。私は次男の嫁の、今井正子ですよ」
「お前が正子さんに成りすましてこの家に入り込んだことは、複数の証言で分かっているんだ。なにより、こちらにいるのが本人の正子さんだ」
「えっ・・・」
・・・・・・・・・・
「本部、聞こえてますか?」
「ああ、そちらのお母さんの携帯経由でよく聞こえている」
「先程、オレオレいや、ワタシワタシ詐欺の現行犯で、カネオ・ホシコの身柄を確保しました」
「よくやった・・・。事件を未然に防ぐことが出来て何よりだった・・」
・・・・沈黙。
「・・・それにしても、最近のオレオレ詐欺は、世の中をナメキッタみたいに大胆になって来たもんだな・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます