第5話 お願い、殺さないで
*このアプリの機能
1.通話中の会話を盗聴。
2.電源が切れた状態のスマホの電源をONにして、盗聴器同様に相手に気付かれずに会話を盗聴、録音。
3.エマージェンシーコール。詳細はアプリの説明欄をご覧ください。
・・・・・・・・・・・・・
無料版のアプリを起動した。
アプリ側が勝手に選択した電話番号につながった。相手の電話番号は表示されない。
対象者は電話をしていない。
盗聴が始まった。何気に録音ボタンを押した。
・・・・・・・・・・・・・・
「その事を知った以上、生かしては置けない」
・・・男の声。
「んぐぐぐ」
女性のくぐもった声。
(テープか何かで、口をふさがれているのだろうか?)
ゴソゴソと身体を動かす音。
(手を縛られ、逃げようともがいているのか?)
ズル、ズル、ズル。
衣擦れの音。
(女性は、恐らく横たわったまま後ろにさがっている)
コツ、コツ、コツ。
革靴らしい乾いた音。
(恐らく、繋がったのは女性のスマホだろう。靴の音が次第に大きくなる)
「あんな男に肩入れして、探偵ゴッコなんてするからだ・・」
男の声が大きくなった。
「ヲネxx、xxxxxx」
くぐもった声で、良く聞こえない。でも、必死さは伝わってくる。
(恐らく、お願い、殺さないで?)
「恨むなら、あの男を恨むんだな」
(ここは、どこだ? 警察に知らせなくちゃ・・)
バーーーン。
拳銃の音がした。
「ギャッ」
女性の声。
ドサッ。
女性の身体が、崩れ落ちる音。
(くそ、間に合わなかった・・)
・・・・・沈黙。
コツ、コツ、コツ。
遠ざかる靴音。
バタン。
ドアの閉まる音。
・・・・・沈黙。
・・・・・沈黙。
(あっ、エマージェンシーコールがあったんだ。エーと、あっ、ここだ)
(なんだ、このナゲー文章は。 はい、同意、ドーイ・・・)
ルーー、ルーー。ルーー。
ガチャ。
「いつも盗聴アプリをご利用頂きまして、誠にありがとうございます。
製品のバグについては、1を。
有料版への切り替えにつては、2を。
その他のお問い合わせについては、3を、押してください」
(はい、3と・・・)
ルーー、ルーー、ルーー。
ガチャ。
「現在、電話が込み合っております。このままお待ちになるか、しばらく経ってからお掛け直しください。尚、この通話は有料となります」
3分経過。
「現在、電話が込み合っております。このままお待ちになるか、しばらく経ってからお掛け直しください。尚、この通話は有料となります」
ガチャ。
僕は、電話を切った。
(どこの誰だか分からん人間の事なんか、知ったこっちゃない!)
(恨むんだったら、こんなイーカゲンなエマージェンシーコールの方を恨んでくれ・・)
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