第4話 全滅?だと!?

「しねぇや!」と兵士が叫び、剣を振り下ろす。しかし、その刹那、森が再び振動し、地面から太い根が伸びてきた。根は兵士の剣を絡め取るように巻きつき、振り下ろされた剣を止めた。


「な、何だこれは!」兵士は驚いて叫ぶが、根は彼を地面に引きずり込もうとする。


「大地の精霊よ、我に力を与えたまえ!」と俺は魔法を唱えた。手の中の枝に集中すると、枝が光り始め、まるで生きているかのように脈打っている。


「ば、馬鹿な!ただの枝が……!」別の兵士が叫び、俺に突進してきた。しかし、枝を振るうと、その先から突如として蔦が伸び、兵士を絡め取って動きを封じた。


「何だと!この男、魔法使いか!?」


「勝てるわけがないじゃないかぁぁぁ!」


 王は驚愕の表情を浮かべ、兵士たちに命令を飛ばす。


「早く殺せ!奴は我がフィアンセを奪おうとしているかもしれない!」


「フィアンセ?」俺は嘲笑を浮かべながら王を見据えた。「お前のような奴が誰かを愛する資格があるとは思えないな。」


「黙れ!お前ごときが王に逆らうな!」王は狂ったように叫び、さらに兵士たちをけしかける。


「やれ!やれ!全力で奴を倒せ!」


 兵士たちは恐怖と怒りに駆られながらも再び突進してくる。しかし、俺は枝を振り回し、次々と彼らを倒していく。蔦と根が兵士たちを絡め取り、動きを封じ、俺の前に倒れていく。


「やめろ!やめてくれ!」王は恐怖に震え、命乞いを始めた。


「私は悪くない!ただ、彼女が……彼女が必要なんだ!」


「必要?」俺は冷笑を浮かべた。「お前のような男に、誰かが必要だとは思えない。」


「許してくれ!何でもするから!」王は泣きながら地面に這いつくばった。「どうか、命だけは……!」


「命を乞うなら、その奴隷たちを解放しろ。そうすれば、命は助けてやる。あと、この場から消えろ!」


 俺は冷たく言い放った。


 王は震えながら頷き、奴隷を解放することを約束した。俺は枝を地面に突き刺し、大地の精霊に感謝の言葉を捧げた。森は再び静寂を取り戻した。


「うぅう、ありがとう……」奴隷たちは涙を流しながら俺に礼を言った。


「いいんだ。」俺は微笑んで応えた。「これからは、君たちは自由だ。自分の人生を取り戻すんだ。」


 いつのまにか、彼女は木から降りてきたようで、何かもじもじとしていた。顔もほんのり赤い。


「あなた、つ、つよいのね。ありがとう。私の同胞たちを解放してくれて、あの……一つお願いがあるのだけれど、いいかしら?」


「あ、ああ、大したことはできないが、それでも良ければ。」


「わ、私と結婚して下さい。わたし、あなたの強さをこの目でしっかりと見させていただきました。強いだけでなく、精霊術まで使われるとは!あっ、先ほどの身体を触った件については、これから夫婦になるという事で許します。もしもこの先の展開も視野に入れて頂いて大丈夫です!さあ、さあ!」


 彼女はじりじり寄ってきて、俺に抱きついてきた。解放された同胞たちはやれやれという顔をしている。


「待って待って、おかしいから。さっきまでとは全然態度が違うじゃないか。それに、あまり胸を押し付けないでくれ。ちょっとこう……ふ、いや、女性がそんなはしたないことをしない方がいいよ。」

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