第3話 敵?だと!?
「結婚だと?変な文化もあるんだなぁ。俺は、事故だと言っている。それだけだ。それよりも、こんな森で大声を出してるから、何かがこちらに近づいてきているようだけど?あれは……?」
「ちょっとまだ、話の途中よ。ねぇ、聞いてる?ねぇってば、んーん!」
俺は彼女の口を再び塞いだ。
銀色の鎧を纏った兵士たちが五人程度近づいてきた。どうやら何かを探しているようだ。
「いたか?」
「いないな。確かにこちらから声が聞こえてきたはずなのだが?」
「お前たち、何をぼーっとしておるのだ?我がフィアンセを早く探し出せっっ!!何をしておるか!早く早く!」
「了解であります!王!」
あれが王だって?小太りで、ダイヤが散りばめられた赤と白の王冠を被っただけのやつが。にやにやとへの字みたいな目をして何を考えているのやら。自慢げに三日月に整えられた髭を触ったり、自分は動けないがために、お神輿のようなもので運ばれているようだ。担ぎ手は辛そうに持つのがやっとのようだ。
首に奴隷のような印がされているので、言うことを聞くしかないのか?
「ごめんね。助けてあげたいけど、今は無理なんだ。もうちょっとだけ辛抱してね」
「ぐしゅしゅしゅっしゅ!もうすぐだねぇー。もうすぐ、ぼくちんも結婚かぁ!おいお前たちどこ見ている?何を止まっておるのだぁ早く動け!!フィアンセが僕を待っている!!」
「ちょっと行ってくるからここにいろ。なぁに、すぐに終わるさ」
「えっ、ちょっと待っ……!」
ざっと2階程度の高さから木から下に降りると兵士たちは何事かとこちらを見る。
「貴様何者か!王の前であるぞ。返答次第ではこの場で殺すぞ」
「そうだじょ。僕ちんは王様なんだ!!」
「そんなことは、どうでもいい。お前らが何者であろうが俺には関係ない。なんせ俺は、勇者……いや、もうどうでも良いことだ。理由は、女の子に涙を流させたということかな」
兵士たちが俺を囲み、剣を構えて戦闘の陣形をとる。しかし、戦闘の経験でいえば俺の方が上だ。不慣れな場所での戦闘には慣れていないはずだ。必ずどこかに隙が生まれるはずだ。
俺は、武器を持っていないため拳で戦うしかない。せめて何かあればいいのだが、周囲を警戒するように見てみると、木の枝がいくつか落ちているのが目に入る。俺はそれを拾い上げた。
兵士たちは、緊張が解けたように肩を揺らし、腹を抱えて笑い出した。
「はっあはははっ!!おいおい、やめてくれ、冗談だろ?木の枝なんかで勝てるはずがないだろ?」
「見てみて、この剣は鉄鉱石から作られたんだ。わかるか?あーもしかしてわからなかったかなぁ?」
森が振動する。
地震?いや、獣が追い詰められた時に出すような威嚇のようなものに近いかもしれない。揺れる大地や木々、危険を感じた鳥たちが次々と飛び去っていく。
「まあ、見てろよ。大地の精霊よ!!我に力を与えたまえ!」
「こ、殺せぇぇぇぁ!!」
王は、兵士たちを鼓舞するように言い放つ。
「おらぁ!!死ねぇや!」
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