第2話 女?だと?!

 朝日が眩しい。

ここは、森か。

どうやら追放されたのは夢ではないようだ。

上体を起こし、背伸びをした。

俺はこの森には1人になりたい時によく来ていた。

秘密基地のような隠れ家まで用意してあり、そこまではあと少しの距離だ。


隠れ家といっても大したことはない。

ただ木の上に簡易的なハンモックを作っただけのものだが、俺にとっては癒しの場所となっている。


癒しの場所まで約十分ほど歩いた直後、ハンモックに誰かが寝ているのが見えた。近づいてみると、女性のようだ。ヒューマンにしては、耳が少し長い気もする。ヒューマンとエルフのハーフだろうか?起こしてみるか。


「おい、起きろよ。ここは俺の隠れ家なんだ。よだれ垂らしてないで起きてくれ、おーい、おーい、おーい……ダメか、寝たふりをしているわけではなさそうだ。こうなったら最終手段しかないな」


ふにゅん。


ぱっちりと目が覚め、触られている胸を見るや、彼女は顔を赤くして叫ぼうと息を大きく吸い込んだ。しかし俺は、口を手で押さえて大きな声を出させないようにした。なぜかって、俺は変態扱いされたくないからだ。


「んーんーん、ぷっはぁ。あなた、今さっき私の胸をエロい人族の顔で揉んで、楽しんでいたんでしょ⁈ この、スケベたらしおとこー」


涙目の蒼い瞳がこちらを見ている。エルフとヒューマンのハーフだろうと思っていたが、やはり正しかったようだ。灰色の髪、長めの耳、薄い唇。白くて胸元の開いたワンピースのような服に、襟の所に黄色のラインがある。


「誰がスケベたらしおとこだ!お、お前の胸なんか、や、やわらかく、じゃなくて、触ってなどいない。そう、これは事故だ。お前の身体に毒を持つ虫がついていたので、刺されたら麻痺毒にかかって大変だと思って潰そうと叩いていたら、いつの間にか胸のところへ移動してしまって、仕留めきれずに飛んでいったところで、目覚めたというわけだ」


「嘘ね。人族はそうやって私達のようなか弱くて美しい女性を狙うのよ。現に私に対してエロい視線を向けている。ほら、今だって、私の太ももを見た後に胸を見た!あー、いやらしい、いやらしい、これだから人族は嫌なのよ。また、寝るからあっち行って、しっしっ」


「このやろう、そんなわけ、そんなわけー、そんなわけあるよ。だってお前の身体がエロいのが悪いんだろ。触ってくださいと言わんばかりの服装じゃないか。見るのは無料だろ、そして俺は身体を触った。あくまで事故だからな、事故、事故」


「はぁぁぁ?!事故って何よ?!この衣装は、先祖から代々伝わる伝統的な服装なのよ。それをあなたって人は、私の身体がエロいだって。責任取って、ねぇ、責任取ってよ。まだ未婚の私の身体触ったんでしょ!私の国では、身体を触られるということは結婚を意味するの、わかる!?」

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