第11話 第一次夜伽大戦
<リュカ、剣を持ちませんか?>
「え?」
昼食も終わり、さあ歩き出そうとしたところで、シーネが僕に提案した。
「僕は剣はからっきしだし、持ってても意味がないよ」
恥ずかしい話だけど、僕は一応冒険者なのに戦闘能力はゴミだ。僕の仕事は荷物持ちだったからね。剣なんて持ったこともない。
<いいえ。リュカは剣を持っているだけでいいのです。戦闘はわたくしたちに任せてください>
「どういうこと?」
<リュカ、考えてみてください。今のリュカは野盗です。剣を持ってる人と、剣を持ってない人。どちらの方を襲いますか?>
「ああ、なるほど」
たしかに、剣を持ってるだけで強そうに見えて、僕なら襲わないかも。シーネは無用なトラブルを避けるために僕に剣を持てと言っているのか。
<そういうことです。剣はお守り代わりですね>
「でもどうしよう? 僕は剣を持ってないよ。街に買いに戻る?」
<いいえ。下級精霊たちにお願いすれば、それなりの剣が創れるはずです>
「え!? そうなの!?」
僕が足元のハニワとトカゲ、水の玉を見ると、彼らは<任せろ!>とばかりに頷いてくれた。
そして、ハニワがちょこんと手を上げると、ゴボゴボと地面から土の塊が現れる。ハニワがちょちょいと手を動かしていくと、土の塊はぐにゃぐにゃと形を変えて、剣の形になった。
<クア!>
「うわっ!?」
トカゲが鳴くと、今度は土の剣が一気に燃え上がる。
ジュワッ!
しばらく土の剣を燃やすと、今度は水の精霊が真っ赤に燃え盛る剣に水をかけた。
「おぉ!」
もうもうと立ち込めた水蒸気が晴れると、そこには銀色に輝く一振りの剣ができあがっていた。
「すごい! 本当に剣を作っちゃった!」
しかも、宝石まで填められて、ピカピカ輝く伝説の剣みたいだ。
下級精霊たちが<どうだ!>とばかりに胸を張るのが見えた。
「すごい! すごいよ! ありがとう、大切に使わせてもらうね!」
僕は嬉しくなってトカゲとハニワと水の玉の頭? を撫でて、感謝する。
<ですが、鞘がありませんね>
<鞘が無いと危なくない?>
<ん……>
「あ、そっか。たしかに鞘は欲しいかも」
どうやら下級精霊たちは剣創りに夢中で鞘を作り忘れちゃったみたいだった。
下級精霊たちがわちゃわちゃと焦ったように慌てだしていた。まるで踊っているみたいだ。
その後、ちゃんと鞘も創ってもらえました。
◇
夜。
僕たちは大きめの村に到着すると、村長さんのお家の一部屋を借りることができた。
お礼に普通の宿屋くらいのお金は払ったけど、通された客間は豪華だし、食事もおいしかった。
「やわらかぃ……」
ベッドも信じられないくらい柔らかいベッドだった。いつもワラにくるまって寝ていた僕からしたら、まるで天国にいるみたいだ。
ベッドでウトウトしていると、中級精霊たちが宙で集まって、顔を突き合わしてなにか話しているのが見えた。
なにを話しているんだろう?
なんだか真剣な様子だし、ひょっとしたら、今後の方針とか話しているのかな?
なら僕も参加した方がいいよね。
僕は起き上がると、ベッドの端に腰かけた。
「ねえ、シーネたちは何を話してるの? 僕も入れてよ」
<リュカ? そうですね。たしかにリュカの意思が最も大事ですもの。リュカの意見も聞きましょう>
<え!? あたしはまだ覚悟が……。それに、ダーリンに聞かれるのはちょっと恥ずかしい……>
ジルがなぜか恥ずかしがっていた。今後の予定とか決めていたわけじゃないのかな?
僕は体を登ってきた火の精霊の頭を撫でながら、シーネたちを見上げていると……。
<恥ずかしいのなら、今回は棄権してもいいのですよ?>
<ん……>
<それとこれとは話が違うし!>
「ねえ、三人は何を話しているの?」
中級精霊三人は僕を見る。その顔は、シーネやノアも珍しく照れ臭そうにしていた。
<その、ですね。今夜のリュカの夜伽の相手を決めていたのです>
「よとぎ……?」
よとぎって……夜伽!?
「ええ!?」
僕も伯爵様のお屋敷で生きてきたから言葉の意味は知ってるけど、あまりにも予想外の言葉にすぐには意味が理解できなかった。
僕だってさすがに夜伽の意味は知ってるし、なにをするかも知ってるつもりだ。
でも、中級精霊たちは確かに絶世の美少女だと思うけど、お人形サイズなんだよ?
できるわけがない!
というか、話が急すぎるよ!?
「えっと、その、え? 本気!?」
<わたくしたちは本気です!>
<ん……!>
<うん……>
シーネとノアが力強く頷き、ジルが恥ずかしそうに俯いた。
<リュカの戸惑いも理解できるつもりですわ。わたくしたちは小さいですし、最後までできないのも理解しています。ですが、そんなわたくしたちでも、リュカへの奉仕はできますわ。リュカは女性の体には興味はありませんか?>
そう言って、シーネがスカートを摘まんで少しずつたくし上げていく。
「え!? え!? ちょ、あの、えっと!?」
ほ、奉仕って何!?
いつもは凛としたシーネが、少し顔を赤らめてスカートをたくし上げていく様子に、僕はうるさいくらい鼓動が早くなって顔が熱を持っていくのを感じた。
助けを求めるようにノアとジルを見ると、ノアは長い髪の毛から覗いた顔を赤くして、そのドレスの胸元を緩めていく。
「あえ!? ノ、ノアまで!?」
僕は最後の希望であるジルに目を向けると、ジルは一瞬怯むような姿を見せた。その顔はもう真っ赤だ。
<あ、あたしだってできるし!>
ジルは高速で僕の顔の目の前に来ると、潤んだ瞳で僕を見上げる。
<ダーリン……あたしの気持ち、受け取って……?>
そして、ジルがちょこんと僕の下唇に自分の唇を重ねたのだった。
<あなた! また抜け駆けを!>
<許すまじ……!>
その後、ジルは精霊たちからタコ殴りにされていた。
僕は、下唇に触れた柔らかい感触が今も残っているような気がして、その日はなかなか寝付けなかった。
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