第4話 悲劇の前兆

同棲生活も半年。

付き合って1年が経った。趣味も生活パターンも好きなものも似ている私たち。

正直、親友だったらこの上ないって思う位、息は合っていたと思う。


彼の中学の頃からの集まってる4個下から6個上までいる大人数の仲間達みんなとも仲良くなってた。彼が仕事の時もキヨちゃんも遊ぼうってサッカーとか混じって遊んだりしていた。リーはいつもラインも通話も出ない癖があったから、代わりに私に電話がかかることも多かった。得に彼はドがつくほどのゲーム好きで、PCゲームに負けたらめっちゃ大声出して怒ったり喜怒哀楽が激しいモンスターみたいになっている。ゲーム中は携帯代わりに出てとか俺居ないって言っといてとかいつの間にか私は家政婦?それとも思春期男児のお母さん?のようなポジションになっていた。


リーの周りの友達からもリーの愚痴を聞いたり、代弁したりする時もあって、彼の友達からも虚言すんなよとか必要な時だけ連絡するなって怒ってる友達も何人かいた。 


だけど結局会って遊んで呑んだりしてると、怒ってた友達もキレつつも憎めないんだよなっていいながら仲直りしていたり、不満持ってても「こいつはこういう奴だから。」って感じで済んでいた。


評判が悪い割に昔に比べたら本当良くなったよって評価されるタイプのリー。

この時には私に出会う前のリーの姿を赤裸に「過去」だからと色んな話を耳にしていた。 学生の頃も不良ではないけど不真面目なタイプでガタイが良いから喧嘩とかも結構あったらしく、キレたら誰も止められない子だったらしい。しかも女の子数人をヤリ捨てみたいな感じでしたらしく、彼の地域の女子高には有名だったらしい。


私にも何度かわけも分からずフェイスブックとかで嫌味言って来た女子とかも多くて、彼と付き合ってるってだけで嫌っている女の子達も居たという事を知り始めた時だった。


正直とっても不思議だった。

クズって呼ばれてる奴の割に寄り添ってくれる優しい友達もいることも。

普通白い目むかれるような行動をリーがしたら許されるのも。

文化の違いだからなのかなって理解しようと特に偏見を持たないようにしてた。

自分が好きな人の悪口や嫌な部分は目をつぶって変にポジティブだった自分が今思うと本当に情けない。

だからこの時も既にイエローカードは出ていたはず。だけど私は見ようともしなかった。短所なんて誰でもあるし、過去は過去。できるだけ人の長所を見るようにしなさいってよく耳にする言葉。私は本当警戒心やこれから起きる悲劇の始まりだとも知らず、能天気に自分が良い人間に居続けようって頑張れば、リーはもっと良く変わるだろうと信じ切っていた。それを利用しようとする奴だとも知らずに。



クズほど住みやすい世の中。

そして本当アイロニーに感じるのは、普段真面目に生活している人がブチギレて殴ったら、「あの人すごい良い印象だったのに実はこんな人だったんだ。」って言われる世の中。気性荒くてクズと呼ばれてる奴が誰かを殴ったら「またかよあいつ(笑)」って、もはや怖いもの見たさで笑い話にする世の中。


世間って本当残酷。自分自身を「世間体」に当てはめて、自分はまっとうな人間だと

自身にも嘘を実はついてるかもしれないという事にこの時までも気づかなかった。


だから真面目で、切実に、そして人を傷つける事は絶対しない、いい子ちゃんで居続けたかった。

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