第19話 親玉との戦闘
Side:ウェイ
「さあ、親玉と一騎打ちだ」
「スキル鑑定、どんなスキルを持っているかと思えば何もないではないか。とんだ道化よな」
「ふん、パイルバンカー馬鹿は道化に映るかも知れない。だが、それが何だ。パイルバンカーが最強であることは変わりない。どんなゲームでもたいがい最大の攻撃力を誇る」
「戯言を。死ねっ。火球つるべ打ち」
おい、ファイヤーボールだぞ。
これ平気なのか。
「ふん、ふん、ふん、ふん」
ミスリルの杭が四度、突き出され火球を撃ち消した。
「いでよレイス。精気を吸いつくしてしまえ」
レイスと冒険者が位置取りをするためにクルクルと回る。
まるで踊っているかのようだ。
焦れたレイスが手を伸ばす。
その隙を冒険者は見逃さなかった。
「【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター、パヒューム】、ミスリルパイルバンカー」
「キェェ……」
ミスリルの杭に貫かれ、恐ろしい形相の青白い光を放つレイスがあっさりと倒された。
「ふん、金属には電撃だ。サンダー」
スケルトンの突き出した手から眩い光と共に電撃が放たれた。
「避雷針」
冒険者が鉄の棒を地面に突き刺すと電撃はそこに吸い込まれた。
「電気の性質を良く知っていたな」
「当たり前だ。こんなのは常識だよ」
「めんどくさいが相手にしてやる。掛かってこい」
「【バリヤー、エクスプロージョン】、ローラーダッシュ」
冒険者が滑るようにスケルトンに近づいた。
冒険者がスケルトンに捕まえられた。
ピンチだ。
これで冒険者が負けて終わるのか。
「捕まえたぞ。精気をみんな吸ってくれる」
「さて、どっちが捕まったのかな。【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター、パヒューム】、聖なる石パイルバンカー」
冒険者が杭を放つ。
黄金色の光を放つ石の杭が喋るスケルトンの頭を貫いた。
「ぐっ、なぜ。我が負ける。なぜだ……」
「そんなのは決まっている。パイルバンカーが最強だからだ」
あっさり勝っちゃったよ。
なんなのこの冒険者は。
後には特大の魔石が残された。
赤ん坊の頭ほどはあるだろうか。
Sランク魔石よりでかいだろう。
「村の復興に使え」
「この魔石をくれるのか」
「ああ、パイルバンカーの偉業を知らしめてくれ」
「そんなことで良いのなら」
「聖なる石の杭は貰っていくぞ。アンデッド退治に役立つからな。次はドラゴンゾンビとやってみたい」
「よしてくれ。そんなのが現れたら死ねる」
「パイルバンカーを覚えたいと言っていたな」
言ってしまった。
仕方ない付き合おう。
「ああ、その通りだ」
「まずは結界魔法だ。そして爆発魔法。この時に結界の一方向をわざと薄くしておく」
「【バリヤー、エクスプロージョン】。いてて、いてえな、この野郎」
「まあ最初は難しいと思う。それができたら爆風が飛びだす方向へ杭を置いておく。拘束魔法で杭を保持するのが良いぞ。手だと消し飛ぶかも知れないからな」
「ああ、気をつける」
「そして重要なのは。最初にジャキンという音。そして最後に水蒸気と火薬の匂い。これは作法だ」
「分かった。パイルバンカーができるようになったら必ず付け加える」
冒険者は鉄の杭を100本置いて去って行った。
俺は村人にパイルバンカーのことを伝えた。
「この間、川の岩にパイルバンカーを打ったら、魚が大量に浮かんできたぜ。パイルバンカーのおかげで魚には困らない。先が平たい杭なんて何に使うのかと思っていたが、これ良いよな。最強だと思うぜ」
良いのか。
だが村人は喜んでいる。
まあいいか。
「ウサギの巣穴近くで地面に使ったらウサギが飛びだしてきたぜ。最強だな」
これも良いか。
俺は冒険者に、魚とウサギに対して最強を誇ると書いて送ったところ、せめて猪に使ってほしいと返事がきた。
猪の鼻づらにかますのはとてもじゃないが、恐ろしくて出来ない。
俺達は魚とウサギで十分だ。
「樹をパイルバンカーで打って、カブトムシを獲ったよ。みんな最強と言っているけど、これこそが最強だ」
子供はカブトムシか。
平和で良いな。
この村では、あのスケルトンが倒された日に、毎月、パイルバンカー祭りを開く。
魚とウサギとカブトムシを一回のパイルバンカーでどれだけ獲れるか競う。
みんなパイルバンカーの腕を磨くのに余念がない。
あの音と匂いと水蒸気の作法もやっている。
意味のないことだと分かっているが、ジャキンという音がしたら、危なくないように離れる。
水蒸気で終わったことを報せるのだ。
匂いはまあ意味がないと思うが一応やっている。
今回から、美しいパイルバンカーを競う競技も始まった。
平和な事だ。
いつかあの冒険者をこの祭りに招待したい。
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