第18話 瘴気
Side:ウェイ
奇妙な冒険者とふたり村へと戻る。
俺は鉄の杭に聖水を塗られて持たされた。
「本当は爆発で打ち込むのだが、今回は仕方ない。手で打ち込め」
「いつか爆発で打ち込む技を覚えるよ。ぜひ教えてくれ」
良い気分で仕事をしてもらうためにはお世辞も必要だ。
「そうか、そんなに覚えたいか。良いぞ。いつか、王都の道場に尋ねて来い」
「そうするよ」
スケルトンが現れた。
「【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター、パヒューム】、最近は無詠唱でやるが、今回は見せるために詠唱した。良く見て聞いて覚えるんだぞ」
「おう、そうする」
確かに爆発で杭を打ち込むと派手だ。
音と匂いがなんとも言えない。
だが、僅か腕の半分の距離を打ち込むのにこんな大層な仕掛けが必要なのかな。
狂っているとまでは言えないが、どうにもな。
何度もスケルトンが現れたが、ミスリルの杭を打ち込まれて、バラバラの骨になっていく。
腐臭が濃くなってきた。
ゾンビが現れる兆候だろう。
ゾンビには触りたくない。
「ゾンビが来たな。杭を打ち込むと腐汁が飛びそうだ。ここで本邦初公開、オリハルコンによるヒートパイルバンカー。よしいくぞ。【アラーム、バインド、バリヤー、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、、エクスプロージョン、クールウォーター、パヒューム】」
オレンジ色の金属の杭が真っ赤に熱せられて、ゾンビに打ち込まれる。
ゾンビは炭化して崩れた。
立ち込める湯気が凄い。
スケルトンとゾンビの軍団が来た。
数は100を超えるだろう。
「離れていろ。【アラーム、バインド、バリヤー、バリヤー、エクスプロージョン、エクスプロージョン、クールウォーター、パヒューム】」
聖水を塗られた鉄の杭がパイルバンカーで打ち込まれ爆発した。
鉄の破片でスケルトンとゾンビの軍団はずたずたに切り裂かれて、動かなくなった。
この技は良いと思うんだが、邪道らしい。
「この調子」
「くっ、敗北した気分だ。爆発する杭などパイルバンカーではない」
「良いと思うよ。何がいけないんだ」
「何がって、そりゃ。普通杭は爆発しないだろう。そうしたら打ったロボット自身も巻き込まれる」
「結界に守られているのに。前の話では敵が爆発して巻き込まれるって言ってた。どこが違うんだ?」
「ええと、そういう物なんだよ。お約束は守られないと」
言っている意味が分からない。
こだわりっていう奴かな。
とりあえずこの場は納得してもらうしかない。
「パイルバンカー単体では1体の敵しかやれないんだろう」
「そうだな。範囲攻撃用の兵器ではない」
「多数に立ち向かう兵器を普通は他に持っているもんじゃないのか」
「ああ、持っているさ。でも使いたくないんだよ」
「じゃあ、炸裂するパイルバンカーはパイルバンカーと呼ばなければ良いんじゃないか」
「おう、その通りだ。ええと杭型爆弾。【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、パヒューム】。こんな感じか」
再び寄って来たアンデッド達が杭の爆発で死んだ。
「詠唱も短いしそれで良いよ」
「なんか屁理屈を捏ねた感じだ」
「でも別の兵器を持っていたって悪くはないんだろう」
「そりゃ、ロボットは銃やらレーザーやらミサイルを持ってたりするけどな」
「その兵器がどんなのか知らないが、杭型爆弾があっても良いんじゃないか」
「まあな」
杭型爆弾で討伐はサクサク進む。
それにしても、鉄の杭と聖水の在庫が凄いな。
こんなに金を使って平気なのか。
「討伐の金は申し訳程度しか出せないぞ」
「良いんだよ。金なら腐るほどある。バンバン使って経済を回す」
「悪いな」
「悪くないさ。俺の方こそ道楽に付き合って貰ってる」
やがて、俺達は石碑のあった場所に到着した。
そこには瘴気みたいな物が渦巻いている。
やっぱりあの石碑が原因だったのか。
「とりあえず、この瘴気を晴らそう」
杭型爆弾でも瘴気は晴れなかった。
次にオレンジ色の杭に熱が込められて焼き払われが、これでも駄目。
ミスリルのパイルバンカーでは瘴気に穴が開いたがすぐに塞がった。
「ありったけの聖水を掛けたら」
「そんなことはとっくに分かっている。でもそれじゃパイルバンカーの敗北だ」
「確かに聖水を全部使ったら俺達の身が危ういかもな」
どうしたら良いだろう。
とりあえず瘴気から離れる。
そして、石碑の所に行った。
不思議とここはアンデッドが寄って来ない。
ちょっと休憩をとるには良い所だ。
「勇敢な勇者に聖なる武器を授けよう」
そんな声が聞こえた。
目の前には黄金色の光を発する石でできた杭がある。
「これでパイルバンカーを撃てというんだな。神様か何か知らないが分かっているな」
「瘴気が晴れるのなら、もう何でも良いよ」
瘴気の塊に、聖なる石のパイルバンカーが打ち込まれた。
そして瘴気は晴れた。
晴れた場所には禍々しいスケルトンが佇んでいた。
「騒がしいと思ったら、あいつの手下か」
このスケルトンは喋るらしい。
黒いオーラも纏わせているしただ者じゃないのは分かる。
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