第14話 飛びナイフ
Side:パーチェス
俺はオーガが封鎖している街道を通り抜けて買い出しに来た商人。
奇妙な男、スルースに出会った。
オーガの出現が自分のせいだと思っている。
あの靴の発明品は良かったが。
天才ってのはみんなこうなのか。
浮遊魔法は面白かったが、数秒浮いて終わりだ。
ナイフを飛ばす攻撃は良かった。
これがあればゴブリンには無双できる。
オーガみたいなイレギュラーは滅多にないからな。
「ところで何を買い出しに来たんだ?」
「塩だ。塩が足りなくなったんだ。俺が背負える量なんて、たかが知れているが、滅亡するわけにも行かない」
「塩なら俺が馬車一つ分ぐらいあるぞ。俺も塩を切らして困ったことがあった。それからそれぐらい備蓄しておくことにしてる」
「俺達に使って良いのか。ああ、問題ない。また買えば良いんだ」
良い人だ、変わり者だが。
「さあ、街への旅を再開しよう」
「そうだな」
ローラースケートの旅は速い。
瞬く間にオーガの縄張りに入った。
「ここからは気をつけろ。オーガが出てくる」
「出て来たら振り切るさ。ローラーダッシュより遅いだろう」
「そうだな」
オーガの縄張りを飛ぶように移動する。
ズシンズシンという足音が聞こえた。
オーガだ。
木々の間から赤い肌のオーガが見えた。
生きた心地がしない。
どうか振り切ってくれ。
なんとか振り切れたらしい。
オーガの足音が聞こえなくなった。
ふう、ほっと胸をなでおろす。
住んでいる街は小さい街だ。
住人は1000人ほど。
城壁はオーガが攻めてきたら持ちこたえられないだろう。
硬く閉ざされた門の脇にある通用門の扉を叩く。
「パーチェス、塩はなんとかなったか?」
門番が開けてくれて、第一声がこれだ。
「手に入ったよ。馬車一つ分だ」
「よかった。塩が足りなくて力が入らなくなっている人がいる。このままだと動けなくなってオーガが攻めてきても何にも出来ないところだった」
スルースが倉庫で塩を出す。
持っていると話には聞いていたが、実物を見るまでは半信半疑だった。
さあ、飛びナイフの魔法をみんなに教えるぞ。
「兵士を集めてくれ。飛びナイフの魔法を教える」
「何だ。それは強いのか」
「ああ、滅茶苦茶な」
兵士が集められた。
「結界魔法は使えるな」
「もちろんだ」
「爆発魔法と拘束魔法も使えるな」
「兵士なら当然だ」
「まず拘束魔法でナイフを空中に固定する。そしてその後ろに結界を作る。結界の中で爆発を起こすわけだが、ナイフの側の結界を薄くする。そうするとそこへ爆発が吹き出すという具合だ。やってみるぞ。【バインド、バリヤー、エクスプロージョン】」
的の端にナイフが深々と突き刺さった。
「命中率は悪そうだな。中距離攻撃には良いだろう。よし練習しよう」
結界を上手く作れなくて自爆する奴とか色々と失敗したが、半日立つ頃にはみんなできるようになってた。
「くそっ、暗黒面に落ちた奴がこんなに出てしまった」
スルースががっくりしている。
確かに手が届く距離なら飛びナイフは外さない。
だけどそれなら手を使って突き刺した方が早い。
飛びナイフの魔法も投げナイフが上手い奴なら必要ないだろう。
「くい打ちも土木作業で使うから、やるよ」
「そうなんだけど、そうじゃない。硬い敵を打ち砕くのがパイルバンカー」
「丸太に一斉にみんなが飛びナイフの魔法を使ったら、確かに城壁も目じゃないとは思うけど、使う場面がないよ」
何が不満なのかな。
使い勝手がいいように改良していくのは当然だ。
飛びナイフの魔法も良いとは言えない。
「飛びナイフならばねで作れる」
おお、そんなことを思いつかなかったとはな。
設計図を書いてもらった。
簡単な構造だ。
飛ぶナイフを筒にすると血が流れ出て良いらしい。
ゴブリン程度ならこれぐらいで十分だ。
「パイルバンカーもバネでやらないのか?」
「爆発で突き出さない杭はパイルバンカーとは認めない」
こだわりがあるんだな。
天才はみんなそんなものだ。
「爆発を起こす何かがあればいいのにな」
「火薬を作って雷管を作れというのか?」
「もうそういうものがあるんだな」
「頭の中にな。実現は程遠い」
スルースが可哀想だ。
ひとつ教えてやろう。
「魔石の粉に魔力を注入すると爆発するぞ」
「なにっ本当か。それなら火薬と雷管の問題が解決する」
でも、薬莢を作るのがとスルースがブツブツと言い始めた。
「飛びナイフもそれで作れば良いのか。かなり高くつくが」
「暗黒面に落ちた者が何をしようが構わない」
浮遊魔法の推進も魔石の粉で出来るが、凄い高値になるな。
隣町まで出かけるのに金貨が100枚ぐらい必要になりそうだ。
誰もやってないということは駄目だったってことだな。
飛びナイフを魔石の粉で飛ばすのは高級品になる。
金持ち相手の商品になるだろう。
作ってみるか。
兵士にはバネ式ので良いな。
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