第12話 試し撃ち

Side:スルース

 リリアンヌから冒険者ギルドへ言伝がされていた。

 鉱山主になれたらしい。

 あの岩山一帯は石切り場として使うと言って格安で買った。

 石のサンプルを採取したら、ミスリル鉱石があったという筋書きだ。

 売った貴族はあんな場所が高値で売れたと最初喜んでいたが、ミスリル鉱石が出ると知って臍を噛んだ。


 しばらく金を貯めて、俺は鉱山の儲けを全て杭につぎ込んだ。

 見よこの黒光りするアダマンタイトの杭を。

 このオレンジ色のオリハルコンの杭を。


 俺は布で綺麗にコレクションの杭を磨くのが日課になった。


 試し撃ちだ。

 ゴーストが出るという墓場に行く。

 装備はミスリルの杭だ。


 灰色の霧のまとまりがフワフワと飛んできた。


「【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】」


 ジャキンと音がして、ミスリルの杭がゴーストを貫く。

 ゴーストは魔石を落として霧散した。

 たわいない。


 おっ、青白い光の霧が集まって人型を取った。

 噂に聞くレイスかな。


「掛かって来い」

「キシャー」


「【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。金縛りの声とて、パイルバンカーの敵ではない」


 パイルバンカーは宙を撃ったが、俺は金縛りにはならなかった。

 レイスはドレインタッチをしようと向かってきた。


「【アラーム、バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】。つまらぬ物を撃ってしまった」


 レイスはミスリルの杭に貫かれて、魔石を落として霧散した。


 よし、次はダイヤモンドタートルをやってみよう。

 草原の草は風にたなびいていて、遠くに陸ガメみたいなモンスターがいた。

 草を食んでいる。


「恨みはないが試し撃ちに付き合ってくれ。【バリヤー、エクスプロージョン】、ロケットダッシュ。【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ロール、エクスプロージョン、クールウォーター】」


 ロケットダッシュした俺は、ダイヤモンドタートルに肉薄。

 アダマンタイトの杭を、パイルバンカーで突き刺した。

 甲羅が見事に割れた。


 ダイヤモンドタートルは甲羅を脱ぎ捨てると走り去る。

 追うまでもないな。

 甲羅を貰って次の試し撃ちに向かった。


 次はミスリルワームだ。

 俺の所有の鉱山での仕事だ。

 勝手知ったるマイ鉱山。


 ずんずん中に入り。

 地面に耳を押し付けた。

 おっと隣の坑道か。


 隣の坑道に入るとお目当てのミスリルワームが姿を現した。



「【アラーム、シャープエッジ、バインド、バリヤー、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、ヒート、エクスプロージョン、クールウォーター】。ヒートパイルバンカー」

 灼熱のオリハルコンの杭が、ミスリルワームの脳天を溶かしずぶりと入った。

 冷却の水蒸気がいつもの5割増しだ。


 ヒートパイルバンカーは良いな。

 灼熱の杭は胸熱だ。


 全てのミスリルワームを討伐してギルドに帰ると、リリアンヌが来ていた。


「少しも顔を見せてくれないので会いに来ました」

「パイルバンカーは着実に進化している。リリアンヌが俺の物になる日は近い」

「まあ、そうなのですね」

「お嬢様、そのような蕩けきった顔をして、はしたない」

「アイラ、そんな顔などしてません」

「知ってますよ。スルース様に作ってあげたのと同じ杭を、毎日うっとりと見つめているではありませんか」


「おお、リリアンヌもパイルバンカー愛に目覚めたのか。パイルバンカーは良いぞ。最近開発したヒートパイルバンカーは熱くたぎった杭でずぶりと溶かし貫くのだ」

「熱くたぎった♡。溶かし貫く♡。まあ、なんということでしょう。受け入れられるかしら」


「アダマンタイトパイルバンカーは黒光りして恰好良い」

「黒光り♡。まあ♡。受け入れたい♡」


「リリアンヌはパイルバンカーを受け止めたいのか。絶対防御でも目指すのか」

「包み込むのです」

「パイルバンカーの砲身になりたいのか。その心意気や、良し!」


「お嬢様、はしたない妄想はおやめ下さい」

「何度も出入りする場面が頭にちらつくのです」

「そうだな。パイルバンカーの砲身は使い捨てではない。何度もピストンする」

「ええ♡」


「だめだこりゃ」

「アイラ!」

「素直にそのものをすぱりとおっしゃって誘ったらいかがです。もっとも私はお目付け役として許せませんが」

「そんなはしたないことなど言えませんわ」


「リリアンヌのパイルバンカーの砲身になりたい気持ちは分かった。共同作業で熱き杭を必ず打ち込もう。その時を待っている。魔法の腕を磨いておいてくれ」

「はい♡」


 更なる強力なパイルバンカーを目指すぞ。

 杭の材質は、汎用の鉄、聖なる力のミスリル、硬さのアダマンタイト、灼熱のオリハルコン。

 あとはドラゴンの牙を削り出した杭とか使ってみたいな。

 ドラゴンの牙は魔法が良く乗るらしい。

 ヒートも良いが電撃わ纏わせたパイルバンカーとかも良いな。

 きっと恰好良いだろう。

 でもショックの魔法はビリっと来るぐらいしか駄目なんだよな。

 スタンガン程度が精々だ。


 ドラゴンの牙なら電撃を溜められないかな。

 できるような気もする。

 電撃を目一杯溜めて打ち込むパイルバンカーは爽快だろうな。


 よし、ドラゴンが出たら討伐だ。

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