第2話 鉱山

Side:スルース


「僕、鉱山の依頼受けるの。きつい仕事よ」

「うん、やりたいから。恰好良いじゃない」

「へっ、鉱夫が」

「うん、男の仕事だよね」


 パイルバンカーで掘り進む。

 最高に良いじゃないか。


「そう言われればそうだけど。もっと別なのがあるわよ」

「いやこれが良いんだ」

「無理そうだったら帰ってくるのよ」

「うん」


 ギルドで鉱山の依頼を受けて鉱山行きの馬車にのる。

 これはギルドが用意してくれた馬車なので無料だ。

 金のない俺には好都合。


 馬車に揺られること2時間。

 山に着いた。


「うひゃあ、ここがパイルバンカー打ち放題の職場かぁ。たぎるぜ」


 ちまちま歩いてなどいられない。


「【バリヤー、エクスプロージョン】、ひゃっはぁ。ロケット加速」


 爆風で体が痛いが、そんなのは些細な事だ。

 一刻も早くパイルバンカーを打ちたいぜ。


 ロケット加速を連発して、誰よりも早く鉱山の入口に着いた。

 そこには袋に入った鉱石が山と積まれてた。


「おい、坊主。お前、ハンマーを振るえるのか」

「御心配には及びません。魔法でやるので」

「魔法増幅系のスキル持ちか。まあ良いだろ」

「鉄の杭を貸して下さい」

「ハンマーは使わないが、鉄ノミは使うのか」

「はい」


 ずっしりと重い鉄の杭と空の袋を持って坑道の奥へと入る。

 誰もいない場所を見つけた。

 観客がいる方が盛り上がるが、何となく失敗しそうなんだよな。

 じゃあ、一丁やってみますか。


「【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】」


 鉄の杭が空中に固定され、その後ろに結界が出来、結界の中が爆発。

 杭が岩に叩きつけられた。

 俺は岩に叩きつけられた。

 がらがらと鉱石が崩れる音。


「くっ、威力が強すぎたか」


 体が動かない。

 しばらく経って。


「坊主、しっかりしろ」


 という声が微かに聞こえた。

 眠いんだ。

 寝せてくれ。


 気が付くと鉱山の救護所だった。

 体は痛いが、たんこぶがある以外は大丈夫だ。

 余裕、余裕。


 脳震盪を起こしただけか。

 ベッド脇には札が3枚置かれてた。

 ええと、この札は何?

 俺は札を手に取ってじろじろ見た。


「坊主、初めてか。その札は、1袋の鉱石を採ると1枚もらえる。相場は変わるが、大体銅貨3枚だ。端数はここだけで使える鉄貨で払われる」


 隣のベッドに寝ている男に言われた。


「ありがと」

「いいってことよ。寝てるのが暇で暇で、ちょっと話し相手になってくれ」

「うん」


 それから、色々と鉱山の話を聞いた。

 鉱山では助け合いらしい。

 でないと簡単に死ぬ。


 ロックワームというモンスターいるらしい。

 おお、ちょうど良い敵だ。

 神様に感謝。


 実に良い。

 俺が掘った鉱石を札に変えてくれた人にはお礼を言わないと。


 さあ、もう一撃。

 俺は鉄の杭と袋を持ってさっき掘った場所に行った。

 うん、確かに俺が掘った跡がある。

 今度は上手くやるぞ。


「【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】」


 鉄の杭が空中に固定され、その後ろに結界が出来、結界の中が爆発。

 杭が岩に叩きつけられた。

 ガインと音がした。

 実に良い音だ。

 がらがらと鉱石が崩れる音。


 湯気が立っているがイメージには程遠い。

 もっと立ち込めるみたいに水蒸気が出ないと。


 それと、土埃みたいなのが凄い。

 いや砂埃か。

 服は既に全身灰色だ。


 山のふもとの宿泊所には洗濯夫がいる。

 男だ。

 男しかいない。

 男色は根絶されていると聞いている。

 それだけは安心だ。


 パイルバンカーは良いんだが、袋を運び出すのが地味に大変だ。

 こういう時の解決方も聞いている。

 ふもとの冒険者ギルド出張所で依頼を出せば良い。

 それには銀貨を3枚は貯めないと。

 ええと、100袋運ぶのか。

 苦行だな。


「パイルバンカーの為ならえんやこら。一撃必殺のためならえんやこら」


 くそっ、5袋も運んだら眠くなった。


 腹も減っているので、札一枚で軽食を買う。

 栄養バーみたいなのだが、わりあいに美味い。

 腹が一杯になって、救護所のベッドで寝る。

 そして起きた。


 寝てから起きるまでが1瞬だ。

 隣に聞くと2時間ぐらい寝てたらしい。

 さて、パイルバンカー打ちまくるぞ。


 そんなこんなで1週間。

 そして、ついにあいつに遭った。


 地面が振動して、飛び退くと地面から、胴回りが1メートルはあるミミズが飛びだした。

 ロックワームだな。

 くくくっ、パイルバンカーの餌食になれ。


「【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】、うおりゃ」


 拘束魔法の時に、ロックワームも一緒に固定した。

 逃がさんよ。


 轟音と共に打ち込まれる鉄の杭。

 緑色の血が飛び散った。


 やったか。


「ギシャー」


 要らんフラグを立てたらしい。


「【バインド、バリヤー、エクスプロージョン、クールウォーター】」


 今度は爆発をかなり強めにしたので、俺も飛ばされる。

 だが深々と鉄の杭は刺さった。

 そして、ぐったりとしたロックワーム。

 こういう時は報せると後片付けをしてくれて、素材の代金が貰える。


 金貨1枚と少しを貰った。

 ロックワーム美味しいな。

 動きもそんなに速くないし。


「坊主、お前、英雄の生まれ変わりかなんかか」

「いや、これぐらいできるっしょ」

「6歳児でできる奴なんかいない」

「でもスキルがあれば」

「まあな。だがビビって腰を抜かすのが普通だ」


 パイルバンカーさえあればミミズの化け物ぐらい恐れることはない。

 パイルバンカーが通用しない敵などいない。

 ゴーストだって杭に聖水掛ければいいんだし。

 何を恐れることがある。

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