第31話 修羅の王 2
距離を取り、向かい合う二人の間にしばしの静寂が訪れる。
「では改めまして魔徒……いや魔人アッシュ、全力でいかせてもらう!」
「いい気迫だが負けるつもりはない! 修羅にして現聖王エルステッド! 参る!!」
聖騎士とは違った鬼気迫るオーラを放つエルステッド。
修羅は超攻撃特化で防御力はほぼないに等しい。だが加護を全発動すれば最上位職並みの攻撃力を叩き出し、駆ける脚は神速に達する最凶の上位職。
修羅は尋常じゃない攻撃力と速さなんだよな。
防御力の低い魔人とは相性が悪い。
なら……
「こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ! エクスゥゥゥゥッ! ルシオォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!(※冥府の王)」
アッシュが冥府の王を発動。足元にはブンッ! と黒い魔法陣が現れて鈍い輝きを放ち、同時に黒い霧が発生してアッシュを包み込む。
そうしてアッシュの体に装着されるエクスルシオンの鎧。頭の天辺から足の爪先までを覆う
この姿が一番防御力が高く、装着することで防御力がSSSに達する。イメージで瞬時に盾を生成することも出来、様々な武器種も生成することが可能なのだが──
魔人の爪をダガーくらいに伸ばし、構える。そこへ──
「修羅の型・
エルステッドの姿がアッシュの眼前から消失。それと同時、アッシュの脇腹に肋骨がへし折れたような痛み。
修羅の型・
ぐぅ……
ダメージはないけどバカみたいに痛い……
エクスルシオンじゃなかったら胴体真っ二つじゃないか……?
「修羅の型・
アッシュが痛みで足を止めたところへ、高速連撃を叩き込む修羅の型・
修羅の加護には「一連撃毎に攻撃力上昇」というものがあるので、止めない限りは攻撃力が上がり続ける。
「殺す気かよエルステッド!!」
ブンッ! と、アッシュが目の前に大盾を生成。そこへ目掛けてのエルステッドの怒涛の連撃。やはり一連撃毎にエルステッドの攻撃力は上がり、大盾を支えるアッシュの手には骨が砕けるような痛みが走る。
「修羅の型・
エルステッドが連撃を切り上げ、続けざまに技を発動。修羅の型・
「ぐうぅ……」
あまりの痛みでアッシュがたまらず膝をつく。修羅の型・
もちろんエルステッドにはアッシュの加護の内容や驚異的な回復能力のことは説明してあるが──
くそ……
エルステッドのやつ
聖者の時も「一度殺しても死なないなら本気で戦える」って喜んでたからな……
修羅が予想以上に強く、アッシュが苦戦を強いられる。相性が悪いと言えばいいのか、普通に押されている。だがこれほどの痛みなのにも関わらず、体力は減っていない。
おそらくエルステッドの攻撃力はS。もしかすれば加護の効果でSSに達しているのかもしれない。対してアッシュの防御力はエクスルシオン効果でSSS。
ここまでの流れを勘案し、ダメージを受けるということはなさそうだが──
修羅の型・
盾なしで食らったら防具をすり抜けて攻撃力SかSSの斬撃を体に受けることになる……
エクスルシオンの防具がない状態での僕の防御力はBだ……
え?
ってことは一撃両断的な?
くそ……
被ダメージでステータス大幅アップしたいけど……
エルステッドの攻撃が一撃必殺過ぎてエクスルシオンを解除するのは怖い……
かといっていつもの軽鎧だと防御力はSだ……
SSくらいの防具を生成出来ればいいけど調整が難しいんだよな……
ペインニードルやロックランスだと最悪エルステッドを殺してしまうかもしれないし……
なら──
「
記憶した聖騎士の術技、聖龍剣を発動。アッシュの腕に漆黒の龍が巻き付く。
溜め時間に応じて体力減少、威力上昇の広範囲殲滅技。つまり体力が減少していくということは──
アッシュの腕に巻き付く漆黒の龍は一匹、二匹、三匹と数を増していき、禍々しいうねりをみせる。それはもはや漆黒の龍の渦。
風が吹き
「おいおいアッシュよ……さすがにそれは城ごと吹き飛ばすだろう……」
あまりにも常軌を逸したアッシュの聖龍剣をみて、エルステッドが後ずさるが──
エルステッドが言ったように、放たれれば
うわうわ……
ちょっとこれは想像以上だって……
だけど
とりあえず
アッシュが禍々しい漆黒の渦となった龍を空に向けて放つ。解き放たれた漆黒の龍は上空の雲を四散させて突き進み──
アッシュがステータス画面を出して確認する。
【名 前】アッシュ
【職 業】魔徒〘ユーネ〙
【H P】▅▅
【M P】▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅
【レベル】8
【体 力】SS
【魔 力】SS
【攻撃力】S/∞
【知 力】A/SSS
【防御力】B/SS/SSS
【素早さ】S/∞
※防御力の部分は左から順に、素のランク、ステータス大幅アップ後のランク、防具を装備した状態のランクとなっている。
やっぱりだ。
攻撃を受けなくても単純に体力が減ればステータスがアップする。
それにしても人間でも∞に到達出来るんだな……
「……まだ付き合ってくれるかエルステッド? ちょっと素早さが限界突破したからどんなものか見てみたい」
「いやいやいや……まったく勝てる気がしないが……」
そう言ってエルステッドが刀をカチャリと構え、「だがそれが面白い!」と言い放つ。
こうして神の領域に足を踏み入れたアッシュと、修羅の王エルステッドの第二ラウンドが始まった。
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