6月の写真
小学1年生の頃、教室に掛けられていたカレンダーの6月のページが怖かった。
カレンダー自体は『戦争の恐ろしさと平和の大切さ』を題材として、各地の戦跡の写真や戦争画、紛争の報道写真などを載せた教育機関らしいものであるが、6月のページに載せられた写真は幼く無知であった私でも目を剥く程の異様さをしていた。
その写真は3コマに分かれていた。いずれも白黒写真であったが、一番広い真ん中のコマはどこかの浜辺を写していた。両脇の写真は同じ幅をした縦型の長方形で、濃い灰色の背景の中にはそれぞれ同じ装いの人が人物がいた。忍者を彷彿とさせる黒の装束に、狐の面を被った人。何かを踊っている様を正面から写しているように見えるが、そのポーズはもがき苦しむ人の様にも見えた。
私はこの写真が恐ろしく、6月の間はなるべくカレンダーに視線を向けないようにしていた。授業中はじっと黒板を見つめ、休み時間は教室を離れて、とにかくカレンダーを視界に入れないよう努めた。
そうして6月が終わりに差し掛かった頃の下校中。当時5年生であった兄貴と、同じクラスの友達と一緒に下校していた時、私は皆に「あのカレンダー怖くない?」と尋ねてみた。
「カレンダー?」
「教室のカレンダー。6月の写真が怖いんや」
「どこが怖いん。普通の絵やん」
「絵?」
どうも私にだけ別のものが見えているようだった。
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