私の怖い話
むーこ
ジンクス
私が「いなくなってくれないかな」と思った相手は、個人だろうが団体だろうが遅かれ早かれ私の生活圏から消えていく。それが私のジンクスだ。
例えば食べ残しを無理矢理口に詰め込んだり他の子の吐瀉物を食べさせたり様々な虐待を私にしてきた保育園は卒業から間もなく園長先生が死に、続けて保育園自体が経営難で潰れてしまった。
次に小学生から高校生にかけても、何人もの人が私の前から消えた。何かと因縁をつけてきた樫原という男子は急病で死に、高学年になって私に嫌味を言ってきたギャルの鳥山はいつの間にか引きこもりになっていた。何度も喧嘩をした黒田という女子も、唾のかけ合いに発展する程の大喧嘩ののち突然転校した。苦手だった数学教師の田島も数回しか授業を行わないうちに休職してしまった。高校の文芸部で一緒だった中村という男子も、斜に構えた態度が嫌だと思っていたら幽霊部員になり、その後2年生の半ばには退部していった。
社会人になってもこのジンクスのようなものは健在で、私の勤め先である運送会社には気に入らないことがあるとすぐに怒鳴る課長が複数人いたが、いずれも1年ほどで他所の支店に飛ばされた。扱いが面倒な新入社員もみんな体調を崩すか問題を起こすかして退職した。友人にくっついていたモラハラ男も「はよ消えてもらわんと」と思っていたら、勤め先で左遷を喰らったらしく故郷に飛ばされた。SNSで「コイツ嫌だなぁ」と思っていたインフルエンサーも初めて見た頃に比べてフォロワーが激減しており、インプレッションを稼ぐ為なのか企業への脅迫や一個人への名誉毀損などを無様な投稿を繰り返している。もう逮捕か訴訟まで秒読みといったところだ。
とはいえ、いずれの人もたまたま私の生活圏から消えていったのかもしれない。ただの人間如きが"嫌な人間を生活圏から消す"などという神通力も同然の力を使えるわけが無い。とはいえ些か消えた人数が多いような気もするが。
偶然なのか、本当にこういうジンクスなのか。煩悶まではしないものの時折思い出して迷っていた矢先、夕飯の折に母からこのようなことを聞かされた。
「昔の職場に厚子っていう奴がおってなー、よく苛められたわ。でもその厚子、お母さんが辞めた後に死んだんやって。私をいじめるからよ」
ジンクスであることが確定した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます