第25話 カメの引っ越し?

 左右に池がある道で、急に前を走る車が停まった。


 小生も追い越さずに、ブレーキを掛けて停まった。


 前の車がハザードランプを点灯させたかと思ったら、ドアが開いてドライバーが車の外に出てきた。


 そして、車の前の方に歩いて行った。


 何かあったのかな?

 何かにぶつかったのかな?

 障害物となるものでもあったのかな?


 などと思っていると、ドライバーが小玉スイカほどの大きさの、黒っぽい塊を持って、道路の左側の歩道に歩いて行く。


 ドライバーは黒い塊を歩道の左隅に置くと、車に戻って来た。


 前の車が発進したので、小生も車をゆっくり発進させた。


 前のドライバーが歩道の左隅に置いた塊りをチラッと観ると、カメだった。


 カメが頭と手足を出して、歩道の左隅から土手の斜面を降りれば、そこは池だ。


 カメが目指していた池かどうかは、カメに聞けないので判らない。


 でも優しいドライバーのお陰で、車にひかれて死なずに、命拾いをしたことだけは確かなことだ。 




 チョット文字数が少ないので、ファンタジー的にカメ目線でを考えてみる。



 吾輩は『カメ』と言う存在らしい。


 丈夫な甲羅も持たないで、他の存在の革や元は植物らしいもので、甲羅のかわりに身体を覆っている『人間』と言う存在が、そんなことを言っているのを聴いたことがある。


 吾輩は、吾輩が住む北の池から、餌が豊富にあるとの噂に聴く南の池に引っ越しをするために、のんびりと歩いていた。


 すると急に、吾輩の何千倍も大きい『超巨大なカメ』らしき存在が、目の前に現れて停まり、低い声で唸っている。


 そして『人間』なる存在までが現れて、吾輩は捕まってしまった。


 あぁ~殺されてしまう・・・と思ったが、あっという間に甲羅を掴まれてしまったので、抵抗することすら出来ず、手も足も出ない。


 かつて『巨大なカメ』らしき存在に、躊躇なく踏みつぶされた、仲間の無残な姿を見たことがあったからだ。


 恐怖に震えながら、頭も手も足も甲羅の中に入れて耐えていると、何故か解放されたらしく、『人間』の気配が消えた。


 さらに、『超巨大なカメ』らしき存在の気配も消えた。


 恐る恐る甲羅から頭を出してみると、目の前に南の池があった。


 吾輩は可能な限り急いで、南の池へと続く土手の斜面を必死に降って行った。



 カメラ目線ならぬ、カメ目線で少し書いてみました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る