第5話 『棚からぼた餅』で得た戦果 中編

ー真珠湾・南方上空ー


羽田は付かず離れずの形で、ワイルドキャット隊を尾行していた。

間もなくしてワイルドキャット隊が降下し始めた事から、羽田も機体を降下すると雲の切れ端から空母艦隊を発見した。

巡洋艦1隻と駆逐艦5隻に守られている空母『エンタープライズ』だった。


羽田は一旦、海域を離れて第二航空艦隊との合流を目指したが、羽田には欠点があった。

羽田は計算などが苦手で、速攻で方角を調べるのが出来なかったのだった。


だが、そんな羽田に救世主が現れた。

重巡『羽黒』から発艦していた水上偵察機だった。

遠藤は周囲の警戒を怠らない様に、『大和』、『那智』、『羽黒』、『神鶴』、『飛鶴』から偵察機を飛ばしていて、その内の1機に羽田は接触する事が出来た。


通信機が使えない事から羽田は携帯用の黒板に『我、敵空母ヲ発見』と書いて、『羽黒』の偵察機のパイロット達に見せた。

偵察機のパイロット達もすぐに携帯用黒板で『敵空母ノ海域マデノ案内ヲ頼ム』と依頼した。


こうして、羽田の零戦が誘導する形で、『羽黒』の偵察機を案内する事になった。


やがて、海域に到着して空母『エンタープライズ』を確認した『羽黒』の偵察機のパイロット達は第二航空艦隊に打電を開始した。

だが、アメリカ側も羽田達に気付き、ワイルドキャット隊を出撃させて迎撃を仕掛けてきた。


羽田はたった1機で、迎撃に現れたワイルドキャット隊10機で挑む形になった。

状況は不利だったが、零戦のスピードと旋回能力を発揮しながら、次々とワイルドキャット隊を翻弄させて4機を撃墜する事が出来た。


しかし、羽田の零戦は銃弾が弾切れになってしまった。

そんな中、1機のワイルドキャットが『羽黒』の偵察機を攻撃しようとしていた。

弾切れの中、羽田は零戦でワイルドキャットに体当たりをして『羽黒』の偵察機を守った。


羽田の零戦がワイルドキャットに体当たりをして、自分達を守ってくれていたのを目撃した『羽黒』の偵察機のパイロット達は羽田の安否を気にしていた。

だが、羽田が体当たり直前にパラシュートで脱出したのをみて安堵した。

彼等はパラシュートで脱出した羽田に敬礼しながら、呟いた。

「後で必ず、助けに来ますので、どうか無事でいて下さい・・・。」


そうして、『羽黒』の偵察機は現場を離れつつも、打電を続けた・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る