第4話 『棚からぼた餅』で得た戦果 前編

ー真珠湾・南方ー


真珠湾の南方から少し離れた空に1機の零戦が飛んでいた。

零戦のパイロット羽田修二少尉は、途方に暮れていた。

何故ならば、彼は『迷子』になっていたからだ。


羽田は仲間の零戦隊と共に、第一次攻撃を終えて母艦である空母『神鶴』に帰投しようとしていたが、アメリカのF4Fワイルドキャット隊の襲撃を受けて乱戦状態となった。


何とかワイルドキャット隊を撃退したが、羽田の零戦だけが仲間達の機体とはぐれてしまい迷子になってしまった。

連絡を取ろうにも、無線機が壊れてしまい羽田は途方に暮れてしまって現在に至るのだった・・・。


暫くして、羽田は前方に複数の機影が見えた事から、友軍を見つけたと喜んだ。

しかし、すぐに羽田の喜びは絶望に変わった。

前方にいたのは、アメリカのF4Fワイルドキャットの編隊だったからだ。


羽田は、絶望感から怒りに変わった。

「お前らのせいで、俺は迷子になってしまったっ!!この償いは、お前らを海の藻屑にする事で償って貰うぞっ!!」

そう言って羽田は機銃を撃とうとしたが、ある違和感に気付いて止めた。


その違和感は、自分のいる位置だ。

太陽の位置と、ワイルドキャット隊が飛んでいる方角から、ワイルドキャット隊は真珠湾とは真逆に飛んでいた。

そこで羽田は、ある事を思い出した。

出撃前に空母『神鶴』の格納庫内で、同僚達の話から直前まで真珠湾にいた空母『エンタープライズ』と空母『レキシントン』が真珠湾から離れて不在だという事だった。


羽田は、あの話が本当ならば、ワイルドキャット隊が向かう先に空母『エンタープライズ』か空母『レキシントン』がいるかも知れないと考えた。

そして、羽田はワイルドキャット隊に気付かない様にしながら、尾行する事にした。


羽田の迷子が切っ掛けで、この後で第二航空艦隊は、もう一つの戦果を作る事になるのだった・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る