第5話「合格」
今までの闘いを見て来た白神が、白蛇に乗って、審査官となった。
その姿を見て、ヤクモはとてもワクワクしていた。
しかし、志保は、恐怖を抱いていた。
手から伝わる恐怖の震え。
それを受け取って、ヤクモは、志保を落ち着かせる。
「大丈夫。私がいるから。志保は、私を離さないでいてくれればいいよ。」
「う…うん。」
しかし、震えは止まらない。
「何をしている、この白蛇に一発、どんな傷でもよい。当てれば、合格だ。」
白神は、志保の震えを知って、一言。
その一言が、志保には効いて。
「どんな傷でもいい。一発。」
希望が湧いて来た時、志保の身体が強化された。
それと同時に、志保の脳裏には、真田の型が過ぎった。
ホームページの動画も一度しか見ていないし、体験したのも一度だけ。
でも、何故だろう。
真田と打ち合った時の感覚が、手に宿るみたいに動いた。
まるで真田の型を、コピーしたようだ。
志保は、真田と打ち合った時から、真田の剣道が好きになっていた。
見るだけでも、優雅で、とてもキラキラと輝いている。
剣道に触れていない少女が、一回見ただけで惚れてしまうほどの剣道。
流石、剣道部部長である。
それに、数々の大会に出てはいて、全て、勝利をしているから、それも説得力がある。
志保は、ヤクモを握り直して、目を白蛇に向けた。
その視線は、白蛇は少しおびえた。
何故か、身体の底から痛い程感じる、寒気。
白神は、白蛇の感情が伝わって来て、とても興奮していた。
『どうして、剣の道に関係ない人生を送ってきた普通の女子高校生を、ヤクモが反応したのか、分かった気がする。』
目をつむり、開けて。
さあ、勝負です。
志保と白蛇の息が上がっている。
白蛇は、ヤクモと技術と志保の度胸に、他の蛇が持っていない防御能力を発揮して、白神を傷つけない様に守っていた。
だが、その防御を突破してくるように、志保はヤクモを防御している見えない壁に何度も攻撃してくる。
そしてついに亀裂が入った時、いきなり、壁が無くなった反動で志保の身体ごとヤクモが白蛇に直撃した。
瞬間、白蛇は崩れた。
息が上がり、床に寝転がる志保と、志保に確りと握られているヤクモ。
それを、見て、近づく白神。
「おめでとう。これでヤクモの神剣試験は合格だよ。」
その一言で、ヤクモを握っていない左手を、志保は上にあげた。
その手を、白神は握り。
「志保さん。貴方、剣の素質があるよ。基礎から学べば、すごくいい剣士になると思う。」
「え?でも。」
「もし、やる気があるなら、私は、志保さんの守り神になってもいいよ。」
「え?」
「だから、私は、志保さんが剣士になるなら、魂毎、来世も、これからもずっと、守護神になりますよ。」
志保は、疲れていて頭が回らない。
「それに、ヤクモさんと一緒にいられるようにして差し上げましょう。」
志保の身体を起こしながら、回復魔法をかけて、志保の身体を正常に戻した。
そして、ヤクモを志保から取り。
「さて、ヤクモ。神剣になる儀式をします。」
両手を広げて、ヤクモを丁寧に持つ。
「ヤクモよ。よく、ここまで精進しました。大変な道のりであったと思う。ですが、今、ここに、神剣ヤクモが誕生する。」
ヤクモに力を込めて、白色の光で包み込むと、両手をそのままにして、両腕を広げた。
それと同時に、木刀の木製が剥がれていき、鉄製の刀へと変化した。
キラキラしていて、キンっという音が響いてきそうなくらい、綺麗だ。
白神は、神剣ヤクモを、志保に渡すと。
「志保さん。貴方をこれから、神剣ヤクモの所有者とします。木刀だったから持ち運びは大丈夫ですが、神剣となると刃が付いていますので、持ち歩けないでしょう。」
白神は、ヤクモをペンダント型にした。
とても小さくなってしまったが、志保が祈れば、本来の大きさになると説明された。
特別に、ペンダントにする為の鎖も付いていた。
「よかった。地上には剣士が少なくなっていて、とても困っていたんだ。」
「えーと、私の了解なしに、守護神がついて、神剣の所有者になっているのは、気のせいかな?」
「だって、ヤクモに血を垂らしたのは、志保さんだからね。」
「あれは、ただの偶然で。」
「運命だと思ってみてよ。それに、ヤクモは志保さん好きらしいからね。」
ヤクモは、志保の首元で赤くなっていた。
そう、ヤクモは志保をとても気に入っていた。
血をくれたからではなく、志保の無茶ぶりと最後まで付き合ってくれた優しさにひかれていた。
「しょうがないな。」
志保は、その事実を受け入れ、白神の前に跪き。
「白神様、これから私とヤクモを見守り下さい。」
色々なアニメや漫画で見た様に忠誠を誓う恰好になり、事実を受け入れた。
すると、白神は微笑み。
「喜んで。」
すると、試験が終わり、地上へと帰る。
その際に、白神は志保の前に手を出した。
志保は握手だと思い、同じくする。
「志保さん、お元気で。」
「白神様も、お元気で。」
志保が目を覚ました時、目の前にいたのは、両親だ。
両親は、帰ってきた事を話す。
志保の無事を二人で祈っていた時。
いきなり、目の前に白い光が現れ、中からは眠った状態の志保がいた。
宙に浮いている志保を抱きかかえる為に、父が両腕を出すと、そこに吸い込まれるように志保がゆっくりと収納される。
収納された志保を抱きかかえると、まだ白い光があって、中からは説明があった。
「有坂志保さんは、白神が守護神になりました。そして、首にかかっている剣がヤクモであり、所有者となりました。こちらでの闘いを見ていましたら、剣士になる素質があると認識しました。もしよろしければ、ご両親、有坂晃司さんと有坂白水さん、二人で剣士にして差し上げてください。きっと、この先、必要になってきます。」
と、言われ、両親にも加護を与え、少しの傷や病気などからは無縁の身体へと変化させた。
子供は、親なしで生きてはいけるが、でも、親がいてこそ子供は羽ばたける。
痛ましい事件もあるのを、白神は知っているからこそ、志保を通じて、これからの子供達が笑顔になれるならと、祈りもあり、有坂夫妻には志保を支える為に健康にした。
「では、この地に生まれた子供達に、希望を。」
その一言で、白い光は消えた。
「それから、志保を部屋のベッドに寝かせて、志保が起きるまで交代で見ていたんだ。」
父が説明すると。
「そう。で、私は、どれくらい寝ていたの?」
「大丈夫だ。平均的な睡眠時間。九時間くらいだよ。」
「九時間……学園!」
志保は、起き上がると、体中が痛い。
これは、筋肉痛だ。
「いたたたた……。」
「今日と明日は、休みなさい。」
母がいいながら、起き上がったら食べられるようにと、簡単に手づかみで食べられる朝食を用意してくれた。
それらを食べながら、両親にヤクモの試験について話しをしている。
食べ終わると、ヤクモを両手で包み、「ヤクモ」と名前を呼ぶと、ヤクモが本来の大きさになった。
その姿を見て、両親はとても驚いていた。
「これがあの木刀のヤクモさん?すごい、光っている。」
剣道部の顧問である母は、とても感動していた。
「志保さんのお父さん、お母さん、これからも志保さんと共にいる事になりました。よろしくお願いします。」
ヤクモが話すと、両親は微笑み。
「ようこそ、有坂家へ。」
迎えた。
それからというもの、志保は基礎体力をつける為に、ジョギングから始めた。
そして、時々、真田に基礎を教えてもらっている。
真田は志保を気に入っていて、下心が少しはあるのだが、有坂先生の視線もあり、中々前へと進めなかったが、志保からの行動で、ようやく、頬にキスが出来た。
それをきっかけに、真田は力を増して、志保に対する接し方も恋人へと変化した。
数年後。
真田は、有坂になっていた。
ヤクモと話しをしている。
ヤクモのことは、結婚を気に話しをした。
驚かれたが、ヤクモとは話しが合い、とても仲良くしている。
晃司と白水は、とても長生きをしていて、今でも健康体であり、年に一回の検診でも、健康とされていた。
きっと、寿命で亡くなるだろう。
そして、有坂志保と有坂光彦は、剣道は心を育てるとして、各地を回り、剣道を通じて子供達に健全な身体を作る活動をし始めている。
剣道を習い、礼儀を教わり、心を落ち着かせ、冷静に対処する。
その活動の中で、一人の少女に出会った。
その少女も、また、二人の打ち合いを見て、惚れていく。
こうして、色々なつながりが出来上がり、また、子供達の未来は輝くのだ。
終わり
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