第3話「資格」

白水は、木刀と訊いて、部活で作ったのかな?と思い、使い方を考える。


「木刀は持ち運べるけど、場合によっては迷惑になって、軽犯罪法違反や迷惑行為防止条例違反になりかねないから、剣道や職人、それに関わる専門の人以外は、持ち歩かないといいわ。」

「うん。それは、私も知っているんだけど、でもね…。」


木刀を、白水に見せる。

白水は、出された木刀を見ると、すごくきれいに作ってあったから、見惚れた。


「これ、志保が作ったの?」

「ううん。」


志保は、真実を話す。


どうして、志保は両親に木刀の事を話そうとしたかは、過去に見て来た魔法少女やロボットのアニメを見て来て、両親に隠すと、後で大変になるのを知っていた。

だから、内緒だと言われても、両親にだけは知って貰おうと思った。


それに、この両親は、きっと、何かあっても自分の身は自分で守れると、志保はこれまでの関わりで分かっていた。

だから、巻き込まれても、大丈夫と信用していた。


その話しを、今日は志保が母に話しがあるからといって、変わりに朝食を作っていた父は。


「なるほど、刀として使ってやれば、神剣として、神が使えるようになるのか。」

「だけど、今の時代では、少し無理ね。」


白水と一緒に話しをしている。


「他の人が使ってはいけないのか?」

「血の契約があるから、私しかだめなんだ。」


すると、白水は一つ提案をした。


「なら、志保が毎日素振りでもしてみたらどう?」

「素振り?」

「そう、毎日、何回と決めて、素振りをするの。素振りだけでも、刀は刀として扱えるわ。どうなの?ヤクモさん。」


ヤクモは、大人しく訊いていたが、話しを振られて。


「それなら、刀としては大丈夫です。本当なら、刀と刀を交えたいけど、この時代では出来ないなら、刀として扱ってくれるなら、それでいいです。でも、神剣になる試験には望めませんから、少し残念です。でも、昨日のように、草をなぎ倒して、円を描かれるよりはましです。」


つい、不安もあり、話しをしてしまい、志保は少し不利になった。

その一言で、志保は、晃司と白水に叱られた。

叱られた内容は、夜遅くに出歩いただけであった。


木刀を持ち出しや、草を倒した事ではなかった。


朝ご飯を食べて、身支度をして、これから眠る母に、ヤクモを任せて、父と一緒に出掛ける。





母と二人になるヤクモは、何を話せばいいかと思っていた。

母の顔を見ると、ヤクモはお嬢さんを巻き込んでしまったと思い、心のどこかで申し訳ない気持ちが広がっていた。


「ヤクモさん。」

「はい。」


名前を言われ、少し、ビクっとなった。


「もう、限界だから、寝るね。」

「へ。」

「おやすみ。」


母は、ヤクモを手に握ったまま眠りについてしまった。

ヤクモは自分の意思で動けるが、動こうにも動けなかった。





しばらくして、母が目を覚ますと、ヤクモが熱を持っていた。

母の手から伝わる熱がこもったのだろう。


「ヤクモさん。大丈夫?」

「動くにも動けなくて。」

「あー、ごめんなさいね。つい、触り心地がよくて。……志保じゃなくていいなら、私の学校の剣道部にお願いして、竹刀と打ち合いが出来ると思ったのだけど。」

「そんなごちそうが!」

「それに、私は、その剣道部の顧問だからね。」

「はー、そうなんですか。ああ……なぜ、私は志保さんと契約を結んでしまったのだろう。」

「寝ている時に考えていたのだけど、後、どれくらいで神剣になれるの?」


ヤクモは、今までの回数を思い出して。


「後、一回程、刀として扱ってくれれば、神剣になれる試験を受けられます。試験内容は、八つの蛇を倒すだけです。」

「八つの蛇、それって、ヤマタノオロチの話ですよね。」

「ヤマタノオロチとは、関係ありません。試験の蛇は、神様が用意してくれるので、ちゃんと、刀として育っているかが重要になります。」

「もしかしたら、ヤマタノオロチの話は、神剣になりたての刀を、どれくらいの切れ味があるのか、試し切りをする話だったかもしれないわね。それが、今の時代まで伝わって、木刀が神剣になる試験に選ばれたのかも。」

「なるほど。だったら、どうして、八つの蛇なのかは、わかる気がします。」


少し、ヤマタノオロチの神剣について考えた後、白水はヤクモと話しをした。






「ただいま。」


志保が帰ってくると、母が置いていったメモを、ヤクモから受け取った。

ヤクモは、内心ドキドキしながら、メモを渡した。

志保は読むと。


「これなら、私がヤクモを持っていても違和感ないし、刀として振るえる。」


早速、準備をした。

といっても、制服からジャージに着替えた。

そして、母が用意してくれたホームページの動画を見た。


その間に、父が帰って来て、夕ご飯を作ってくれている。

父にも、メモを見せると、夕ご飯を食べ終わった後、父が車で母の仕事場、定時制高校へと向かってくれた。


県立照良てらす高校は、科学に力を入れている高校だ。

今の時代、科学が必要として、国語や社会よりも、数学や理科を多めに授業をしている。

実験や検証もしており、それを動画で撮って、高校のホームページで閲覧出来る。

そのレベルの高さから、世界の化学研究者達も、毎回、更新を楽しみに待っている。


それは、定時制であっても変わらない。


身体を動かすのも大切であり、体育もあり、部活も運動系は充実していた。

体育館に向かうと、そこには、剣道が出来るスペースがあった。

そこに、母がいた。


「お母さん、来たよ。」


すると、母の横にいた剣道の恰好をした生徒が一人いた。

その生徒は、短髪の黒髪に、切れ長な瞳、小さな口をして、防具を身に着けていた。

説明をされると、この生徒は、剣道部の部長であり、とても力は強い。

その部長には、母はこう説明をしてある。


「うちの子が、貴方の試合を見て感動して、木刀まで用意して、一度手合わせしたい。だけど、初心者も初心者なので、少しだけ相手をしてあげてくれる?」 


褒められて嫌な感情を抱く人は少ない為、剣道部の部長は気持ちを良くしていた。


「君が、有坂先生の娘さん?」

「はい。志保といいます。」

「俺は、真田光彦さなだみつひこという。よろしくお願いします。」


お互いに握手をすると。


「どこで俺の試合を?」


すると、志保はスマートフォンを出して見せたのは。


「この学校のホームページの紹介動画。ここに剣道部の紹介があって、これ、真田さんですよね?」

「ああ、これか。この時、動画撮るっていうから、緊張していたんだ。」

「でも、この動画を見て、貴方と打ち合いたくて。」


ヤクモを真田の前に出す。


「こちらの木刀を作りました。」


真田は、木刀を見ると、目を輝かせた。


「これ、すごく、綺麗な木刀だ。」

「はい。」

「作ったって。」

「はい、私、部活は、木工部ですから、木で作れるものは作る部です。」




志保は、あれから、木刀を作る方法を検索して、部活で作成をしている最中であった。

今まで手掛けて来た作品は、一度、横に置かれている。

長谷川先生も、いきなり木刀を作り始めたから驚いていたが、学校から出さないという理由で許可をした。




その試作品に、ヤクモを自分が作った事にして、差し出した。


「では、打ち合いはじめましょうか。」


母が言うと、いつもの剣道部が使っている領域に来た。

志保は、靴下を脱いで、母が用意した防具を付けてもらう。

そして、ヤクモを手にして、真田と向き合う。

父は、怪我をしないかとか、ハラハラしてみていた。


真田は、ふと志保の手を見ると、握りが違うといって、基礎から教えた。

構えも教えてくれて、手加減するからといってくれた。


「一度、この竹刀に当ててごらん。」

「はい。」


ヤクモを竹刀に当てると、そこから小さな光が出ていた。

その光は、志保が周りを見ると、見えていない。

志保にしか見えていない。


この光は、そう、ヤクモの感動する光だ。

「やっと、刀として使ってもらえる。」という声が、手から伝わってきた。





しばらくして、休憩となった。

ヤクモをみると、キラキラしているのを見れた。

この一戦で、八匹の蛇に挑める資格を得たヤクモは、とても嬉しがっていた。


最後の一戦が、剣道部の部長なのが、とても誇りに出来た。


真田は、少し教えただけだけど、志保には剣道の才能があると思った。


「志保さん。剣道は、このまま続けませんか?」

「え?」

「素質ありますよ。なんなら、俺が、専属で教えます。」

「でも、遠慮しておきます。」

「なら、この機会に、お話しでもしていきませんか?」

「え?」


この真田という男は、度胸がある。

志保の両親がいる前で、告白まがいな事をしたのだ。

それに気づいた志保の両親は、顔を合わせて、微笑んだ。


今日の所は、連絡先を交換しただけで、父と一緒に帰った。

帰ると、ヤクモが声をかけてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る