#22 ダンジョンマーケット

「「せーのッ!!」」


 セイギとリズがスライドしきぐちゆびけ、こじける。


 すなどろ小石こいし何度なんどっかかったがひらくことに成功せいこうした。


 そしてククとクラサ、天宮天アマミヤアマ、ユリ、比嘉琉那ヒヨシルナカイアオイ、リズ、鵜鷹テイヨウ、セイギのじゅんとびらくぐける。


 とびらこうがわひろがっていた空間くうかん不可思議ふかしぎなものだった。


 それはシシュウの壁内街へきないがいのショッピングモールの地下駐車場ちかちゅうしゃじょう構造こうぞうほとんおなじだった。


 ひとつをのぞいて。


さかさだな」


 ククは足元あしもとにある蛍光灯けいこうとうう。


 セイギがすぐそばにさかさまになって、座席部分ざせきぶぶんつぶれている自動車じどうしゃれようとすると、ククはそのかるたたいた。


さわんな。きたねぇ」

「それよりもよクク、なんかへんにおいしねぇか?」

おれはおまえほどはなくねぇからからねぇよ」

「そっかー。わりぃ」


 セイギとククがはなしているところへリズがなにきたいとはしってきた。


「なんでこんなところにくるまがあるんですか?」

「ダンジョンは基本きほん旧時代きゅうじだい建造物けんぞうぶつもと復元ふくげんしてるらしいからな。そのなかにあるくるまとかも復元ふくげんしちまったんだろ」

二体にたいともしずかに……」


 ユリが帽子ぼうしり、二対についみみうごかしている。


 しばらくして、ユリは帽子ぼうしかぶなおす。


「どうだ?」


 ククのいにユリはなおると、くちひらく。


おもったよりあさいですね。まだこまかくはらないけど、さんかいぐらい……」

「それぐらいかれば十分じゅうぶんだ」


 ユリとククがそんなやりりをしているよこかみ一枚いちまい図面ずめんながれるようにいている。


 になったリズがのぞんだときにはすで大雑把おおざっぱ図面ずめん出来上できあがっていた。


「なんですかコレ?」

『うん?ダンジョンの地図ちずだよ。いてるの』

れるの?」

勿論もちろんとくぼくらがいまるダンジョンなんか高値たかねれるよ!』

「おぉー!!ってあれ?まだここまでってないのになんでかるの?」

『それもぼくのアペイロンでやってるんだよ』


 リズの質問しつもんアマ即座そくざかえす。


アマさんのあぺいろんってじゃないの?」

いまはまだ秘密ひみつ

「えー!ケチんぼ!!」

『ごめんね〜』


 アマはリズを適当てきとうにあしらいながら、さきすすむ。


 リズはあしらわれていることに不快感ふかいかんおぼえているのか、不服ふふく表情ひょうじょうかべている。


「ねぇねぇククさん、アマさんがいじわるしてきます」

安心あんしんしろ。アマ無意味むいみ行動こうどうはしねぇから」


「みんなストップ!」


 ククがリズをなだめていると、ユリがみなめる。


「なんだ?シャッターか?」

「そうそう、シャッター」

「しゃったー?」

したのあの隙間すきまえるか?」

隙間すきま?」


 リズが目線めせんしたけると、たしかにゆか隙間すきまがあった。


「コレがしゃったー?」

「いや、そこからてくる鉄板てっぱんがシャッターだな。たまーにきゅうてきて、それにはさまれてくたばるぞくるから、をつけろよ」

「はぇ〜」


 ククが真面目まじめ説明せつめいしているうらでそのほかみながシャッターをえる。


 最後さいごにリズがえる。


「よっと!ククさーん、はやくー!」


なつかしいな……)「あぁ、いま――」


 余裕よゆう表情ひょうじょうでシャッターをえようとした、その瞬間しゅんかんにシャッターががる。


「――ぐッ!?」

「「「あ」」」


 ククはシャッターにまれ、そのまま天井てんじょうたたきつけられる。


【|・・・-、・・・-、-・-・-、・--・-、・-・-・!!《ククさーん!!》】

「ククさーん!!大丈夫だいじょうぶですかー!?」

「ブフハハハハッ!!」

無事ぶじー?」


「あのクソいぬ……あとでぶっころしてやる……!」


 天井てんじょうまでげられたククをクラサが回収かいしゅうする。


 そしてりてきたククをセイギがあおろうとした瞬間しゅんかん、かかととしをたたまれた。


「オレ……わるくなくね?」


 あたまさえながら愚痴ぐちこぼす。


「さっさとくぞ」


 ククはそううとすすんでく。


 みなそろって足早あしばやすすむククをう。


 時間じかんけ、ダンジョンの一階層いっかいそう隈無くまな探索たんさくくすと、途中とちゅうつけたうごかないエスカレーターからすべらないようにりていく。


 りたさきおおきくひらけており、様々さまざま売店ばいてんがあり、すこすすむと細長ほそなが大穴おおあないていた。

 そこすなもれている。


 そこからまたダンジョンの地図ちず完成かんせいさせるためにまたあるはじめる。


 そのかんみな各々おのおのきな会話かいわをしている。


「それにしても、ダンジョンのってどれですか?」

「え?さっきからあるじゃん」

「へ?」


 リズが頓狂とんきょうこえすと同時どうじないものを琉那ルナたちる。


「それだったらなんで無視むししてすすんでるんですか!?」

「いやだって今回こんかい本命ほんめいはそこじゃないもん」

「……へ?」

団長だんちょうぼくおしえるよ』


 どういうことだと理解りかいくるしむリズにアマちかづく。


『まず最初さいしょ遺物いぶつってなにかる?』

旧時代きゅうじだいの……アレですよね!」

『うん、旧時代きゅうじだい様々さまざま道具どうぐ技術ぎじゅつ文化品ぶんかひんこと言葉ことばなんだ。だから、このダンジョンすべ遺物いぶつになる。それでリズに質問しつもん

「なんですか?」

何故なぜぼくたちはこれだけの遺物いぶつやま無視むししてるでしょうか?』

「いや、それがからないからいてるんですけど……」

くだけじゃダメだよ。自分じぶんかんがえることが大切たいせつだよ」

「うーん……」


 リズはあるきながらあたまなやませ、なんとかこたひねす。


「そんなにたくさんってかえれないから?」

『うん正解せいかい!こんなにもあったらクラサでもはこれないからね』

「よし!」

『あと、ほかにも理由りゆうがあってね――』


 アマはリズのこたえにつづけて遺物いぶつらない理由りゆうつらねる。


『――たとえば一階層いっかいそうくるまがあったでしょ?』

「うん」

『あれも遺物いぶつなんだけど、くるまってもう科学都市シシュウなかだととくめずらしくないんだよね。だからってかえってもたかれないし、おもいしで効率こうりつわるいんだよね。極端きょくたんたとえるなら、カイはこんで百円ひゃくえんか、セイギをはこんで五十円ごじゅうえん……どっちのほういとおもう?』

カイくんのほういとおもう」

『でしょ?それに、正直しょうじきうと、べつくるまとか、そういう道具どうぐはあんまり価値かちいんだよね』

「どうして?」

『もうすで一般いっぱんぞくあいだにもひろまっているからさ。たとえるなら、リズはおにくき?』

大好だいすき!」

『おこめ一緒いっしょべるのは?』

「もっとき!」

『それじゃあリズは山盛やまもりの、本当ほんとうれないおにくってるとするでしょ?』

「うん」

『その状態じょうたいさらにおにくもらってもうれしい?』

「うーん……もういらない……かも?」

『でしょ?それじゃあぎゃくにおこめもらえたら?』

「すっごくうれしい!」

『でしょでしょ?だから、これまでてきた遺物いぶつがおにくで、ぼくらがさがしているのはおこめなんだよ』

「なるほど!!」


 リズは完璧かんぺき理解りかいしたのか、スッキリした表情ひょうじょう元気げんきよくあるいてゆく。


 そしてアマはククのほうくと、機械仕掛きかいじかけの親指おやゆびてる。


 ガラスしにえるアマ半透明はんとうめいかお自慢じまんげにあふれている。


おしえるっていうのはこういうことだよ?』

「なんかすっげぇ腹立はらたつ」


アマさーん」


 リズがふたたアマまえつ。


『どうしたの?』

「その、わたしたちさがしてるおこめってなんなんですか?」

ぼくらがねらってるのは基本的きほんてき雑誌ざっしけいかなぁ』

「ざっし?またらない言葉ことば……」

絵本えほんとか、漫画まんがとかだね。とく漫画まんが人気にんきだし』

「なんで?」

『それはー、団長だんちょうほうくわしいから、ちょっとってね』


 アマはポケットから硬貨こうか一枚いちまいすとゆかとす。


「……なにやってるんで――」

んだ!?」

「うわ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!?」


 背後はいごから突如とつじょあらわれた琉那ルナおどろき、絶叫ぜっきょうする。


 しかし、琉那ルナにすることく、アマとした硬貨こうかひろった。


『ねぇ団長だんちょう、リズになんで漫画まんがとかのほうたかれるのかおしえてあげて』

「いいよ〜。あるきながら説明せつめいするわね♪」


 琉那ルナはそううと、スキップしながらダンジョンのおくかう。


「それで、なんだっけ?」

漫画まんががなんでたかれるかってはなし

「そうそう!まずね、漫画まんがって面白おもしろいからみんなむの!だからみんながしがってるってのと、あとつづきがになるからってのもあるかも?」

つづきがになる?」

「そう!それでね、ダンジョンって一週間いっしゅうかんぐらいでなかかたちわっちゃうんだけど、かたちわるとなかにある遺物いぶつとかもわっちゃうの。そのとき遺物いぶつ補給ほきゅう?ってえばいいかな?あたらしくてくるんだ!かる?」

「えっとー……大体だいたいは……」

「それじゃあつづけるね!」


 琉那ルナ大穴おおあなのすぐそばをスキップしている。


「それでね!漫画まんがおんなかんじで補充ほじゅうされるんだけど、絶対ぜったい全巻ぜんかんそろってるってことはほとんどいんだー。一巻いっかんだけかったり、ぎゃく一巻いっかんしかかったり」


 琉那ルナ説明せつめいしている二階層にかいそう探索たんさくえ、三階層さんかいそうへのエスカレーターをりていく。


「それでね、たとえは十巻じゅっかんしかない漫画まんががあるとするでしょ?そのうち、一巻いっかんから五巻ごかんまでしかつからなかったら、そのつづきのかんはスッゴイ価値かちがるんだ!」

「どうしてですか?」

「だってみんなつづきがになるじゃん!だから、のこ一巻いっかんだけってなったらとんでもない大金たいきんになるんだよ!」


 琉那ルナかがやかせながら熱弁ねつべんしているその様子ようすをリズはめたている。


「ねぇリズちゃん!いおかね坩堝るつぼだとおもわない!?」

「は、ハァ……ん?」


 リズはめたをしていることをさとられないようにらしたその視線しせんさきわったものをた。


 様々さまざま売店ばいてんのほとんどには商品しょうひんいておくたな存在そんざいしているのだが、いまリズたちみせ商品棚しょうひんだな虫食むしくいされたあとのようにあなだらけになっていた。


「コレってなんですか?」


 リズがカイく。


「これは……テツクイムシだね」

「テツクイムシ?」

「そう、テツクイムシ。あり仲間なかまなんだけど、幼虫ようちゅうあいだ金属きんぞくべて成虫せいちゅうになったらてつわらないぐらいかたくなるんだ。そして――」


 カイ鵜鷹テイヨウおそおそる。


 そこにはけわしいかおつきになった鵜鷹テイヨウた。


「――テツクイムシがるってかると鵜鷹テイヨウ機嫌きげんわるくなるんだ」

「どうして?」

「それは――」


 カイ理由わけはなそうとしたそのときだった。


 金属きんぞく金属きんぞくがぶつかりおとった。

 何回なんかい何回なんかいも。


「え?!なになになになに!?」

「どうやら早速さっそくましだね」

あたしまかせて」


 鵜鷹テイヨウがそううと、みせおくあるいてゆく。


 そして、ダンジョンにはいまえから鵜鷹テイヨウちかくにいていた巨大きょだいふくろなかから一丁いっちょうじゅうはずす。


 火炎放射器かえんほうしゃきだ。


「え?」

「ちょ、鵜鷹テイヨウ!?」


FIREファイア


「バカヤロォ!!」


 鵜鷹テイヨウ以外いがい全員ぜんいんをセイギがかかえ、みせからると同時どうじに、みせなかほのおつつまれた。


相変あいかわらず派手はでにやるな〜」

鵜鷹テイヨウさん大丈夫だいじょうぶなんですか!?」

安心あんしんしろ。銃火器じゅうかきのことならアイツのみぎてこれるやつおれらねぇ」


 一分いっぷんたぬうちほのおえ、けむりななから酸素さんそマスクをけた鵜鷹テイヨウ姿すがたあらわした。


「ふぅ、スッキリ……!」

「スッキリ、じゃねぇよ」

「あでッ」


 ククが鵜鷹テイヨウあたま手刀しゅとうたたく。


「ダンジョンないめろってったよなァ!?」

「でもテツクイムシは絶対ぜったいころさないとでしょ!」

「でもじゃねぇ!酸欠さんけつんだらどう責任せきにんるつもりだ!?」

「まぁまぁククちゃん、いて」

鵜鷹テイヨウも。今回こんかいひらけてるからかったけど、ククのとおりだよ』


 アマアオイがそれぞれククと鵜鷹テイヨウなだめている。


 そんななか、ユリだけがしずかにすなもれた地面にれていた。


 ユリの不思議ふしぎ行動こうどうづいたカイる。


「ユリ、どうかしたの?」

「ちょっとになって……おと反響はんきょうへん……」

ぼくなにへんだとおもってた」

カイも?」

「うん、ちょっとってね。みんなー!ちょっと注目ちゅうもくー!」


 カイ全員ぜんいんけてこえすと、口喧嘩くちげんか一時中断いちじちゅうだんしてあつまる。


「どうしたんだカイ?」

「ちょっとこのダンジョンへんじゃない?」

『ってうと?』


 カイ先程さきほど鵜鷹テイヨウはらったテツクイムシの死骸しがい両手りょうてげる。


「まずテツクイムシなんだけど、このるのに一階層いっかいそうくるまにはまれたあとかった。それに女王蟻じょおうあり幼虫ようちゅう姿すがたえないし、これはおかしいよ。それに、セイギとアマづいてるよね?」


 カイ言葉ことばアマくびたてる。


 たいするセイギはなんことやらからずにあたまなやませている。


ぼくはセイギがへんにおいがするっていてちょっとにかけてただけだけどね』

「あ!ソレか!そうそう、入口いりぐちあたりでへんにおいしたんだよ!」

「どんなの?」

「うーんとな……大掃除おおそうじときいだがすんなー……なんだっけ?」

重曹じゅうそう?」

「あっ!そうそうそれそれ!」

『ってなると、におし?』

「つまり、どこかのアホタレが勝手かってにダンジョンにはいったってことか?いや、なんかっかかるな……」

「ッ!?みんな!なにる!」


 ユリがおおきなこえさけぶと同時どうじ地面じめんすなおときく波立なみたつ。


 地面じめんくずれると同時どうじに、砂中さちゅうから無数むすうびる。


 そのカイたちすななかんだ。


 そして、リズだけがのこされた。


「え?みんな?……みんなー!!」

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