#19 相関図

 カイとリズの植物類しょくぶつるい採取さいしゅチームにて。


 リズはもうすで大量たいりょう植物類しょくぶつるい両腕りょううでかかんで山積やまづちになった植物類しょくぶつるい次々つぎつぎいていく。

 それでもなお植物しょくぶつあつめるのをめうとしない。


 たいするカイは、リズがあつめてきたものなかべられるもの選別せんべつしていた。


(それにしてもリズちゃんははたらものだなぁ。っていい植物類しょくぶつるい指定していしたらちゃんとそれをってるんだもん。ん?コレって……)


 カイいたんでべられない選別せんべつしていると、ひとつだけ、やけにかる果実かじつがあった。


 カイはもしやとおもい、ってみると、なかから無数むすう甲虫類こうちゅうるい幼虫ようちゅうてきた。


「うわあ!」

「カイくんどうしたの!?」


 カイこえきつけ、リズが颯爽さっそう登場とうじょうする。


「クリームワームだ〜!」

「へ?」


 カイ嬉々ききとした表情ひょうじょう幼虫ようちゅうつまみ、ながめている。


「それじゃあ早速さっそく

「え?」


 カイつまんだ幼虫ようちゅうおおきくひらいたくちなかはこび、咀嚼そしゃくした。


 それをたりにしたリズは、ありえないものをるかのようにかおゆがめている。


「うん!美味おいしい!」

なにべてるんですか!?」

「ん?クリームワーム」

ちがちがう!なんでむしあかちゃんべてるの!?」

「うーん、でも意外いがい美味おいしいよ?クリームワームはもりのミルクってばれるほどタンパクしつ豊富ほうふで、クリームみたいなあじなんだ♪リズもべ――」

「いらないいらないいらない!!」

「でも――」

絶対ぜったいにいりません!!ありえない!!」


 リズはおこりながら、ククたちところへとってしまった。


 一体いったいだけのこされたカイあわててすぐにあつめた植物類しょくぶつるいまとはじめた。


 一方いっぽうその数刻前すうこくまえ料理りょうりのサポートをまかされたアオイはユリの機嫌きげんそこねないよう、努力どりょくしていた。


「ユリちゃん……」

「なんですかー?」

「その……大丈夫だいじょうぶそ?」

なにがですかー?」


 ユリは笑顔えがおこたえるが、アオイ理解かっていた。


 ユリがあきらかに機嫌きげんわるいことも、その原因げんいんも。


絶対ぜったいリズちゃんに嫉妬心しっとしんいだいてるよね……面倒めんどくさぁ……)


 そうおもいながらもアオイはユリの相談そうだんろうと、かたりかけるのをめない。


最近さいきんカイとはどうなの?」

「えーと……え!?は、え!?」

相変あいかわらず反応はんのう可愛かわいらしいわね)「それで、どうなの?」

「えっと〜、その……最近さいきんになってやっと、てでぶのにれてきました……」


 ユリはかおあかくしながらアオイ質問しつもんかえす。


「なら良いじゃない」

「……でも、その……最近さいきんになることがあって……」

なに?」

「その……カイの――がちょっと」

「ごめんね。れなかったからもう一回いっかいねがい」

「は、はい!……その、カイ体温たいおんが、なんかへんで……」

カイ体温たいおんへん?どういうふうに?」


 アオイはユリに質問しつもんげかけると、ユリは真面目まじめ表情ひょうじょうくちひらいた。


「リズちゃんがつぎから、カイ体温たいおんがってて……おとにはわりはいんですけど、ちょっと……」

「モヤッてしてるの?」

「……はい」


(うーんなるほどねー体温たいおんねー……その変化へんかがつけるってなにこわ……)


 アオイ気味ぎみになっていることにがついたのか、ユリがあわてる。


「そ、その、ごめんなさい!なんか気持きもわるいですよね……」

べつに大丈夫よ〜。おねえさんびっくりしちゃったけど。体温たいおんあがったってよくがつくわね〜」

「……カイだれにでもさわらさせてくれるので」

いてる。可愛かわいい♡)


 無愛想ぶあいそうこたえるユリをて、一瞬いっしゅんだけ恍惚こうこつとした表情ひょうじょうあらわにするが、すぐにただの笑顔えがおもどす。


「まぁそういうことなら大丈夫だいじょうぶよ」

「なんでれるんですか?」

「だってユリちゃん可愛かわいいもん」

「それをったらリズちゃんも可愛かわいらしいじゃないです――」


 ユリがきゅう普段ふだんじているおおきくひらく。


「……どうかしたの?」 

カイとリズちゃんが喧嘩けんか……とうよりか、カイがリズちゃんをおこらせちゃったみたい」 

「あらまあ……ちょっとって、なんでいてんの?」

「ずっとカイおと摂取いてないと、ちょっと不安ふあんで……それに……」

「それに?」

「もしもカイ危険きけんせまってきたらすぐにけつけるためです!なので、他意たいはありません!ウィン・ウィンの関係ってやつです!」

(この恋模様こいもよう間違まちがいなく純粋じゅんすいなんだけど……どこかのよねぇ……)


「ただいまッ!!」


 あたまかかえるアオイ心情しんじょうらないリズがおとてながらあるいてきた。


 その表情ひょうじょうかりやすく、いかりにまっており、そのままりたたみしき長椅子ながいす乱雑らんざつこしろす。


「リズちゃん大丈だいじょう――」

「ユリちゃん、ここはおねえさんにまかせて」


 アオイはそっとリズのとなりまで移動すると、まづいのか、リズはすこしだけ距離きょりをとる。


 そして距離きょりをとられたぶんだけアオイ距離きょりめる。


 それを三回さんかいかえすと、長椅子ながいすはしまで、められる。


「……なに?」

「いや〜なんか機嫌きげんくなさそうだなぁっておもって」

「なんでもないです……」

本当ほんとうに?おねえさんがはなしいてあげようか?」

「……いいんですか?」

「もちろん!」


 リズは最初さいしょ言葉ことばはっすることをこばんでいたが、すこしづつ、ついさっきの出来事できごとについてはなはじめた。


 その内容ないようアオイ肯定こうてい相槌あいづちつ。


むし子供こども美味おいしいっていながらべるのなんてありえない!」

「うんそうだね〜。でもなんでそんなにゆるせないの?」

「だって……その!あれ!」

「そのあれじゃつたわらないわよ?」

「リズは蟲族むしぞくそだてられたからだろ?」


 テントをえたククがリズとアオイ会話かいわむ。


「そうなのリズちゃん?」

「むしぞくじゃなくて蚕族かいこぞく!」

「そいつらふくめて蟲族むしぞくってばれてんだよ」


 ククはリズがすわっている長椅子ながいすかいがわにある椅子いすふかすわる。


たしかに、子供こどもころから一緒いっしょらしてたやつらとおんなものまえわれたら気分きぶんにはならねぇわな。だけどな、なかにはいろんなやつがいる。そして、そいつらの御先祖様ごせんぞさまたるるいべることもある。それにいちいち腹立はらたててちゃあきていけねぇしな。それに、自分じぶんきときらいをとおすのに、他者様たしゃさまきらいはゆるさないってのは我儘わがままぎるぞ」


 肯定こうていしてくれている言葉ことば心地好ここちよいていたリズにククは否定ひてい言葉ことばげかける。


「じゃあククさんはテイヨーさんのまえとりべるんですか?」

べるぞ」


 それを不満ふまんおもったリズはにくまれぐちたたくが、気味ぎみかえされる。


「なんなら鵜鷹テイヨウうし。それにな、リズ」

「なんですか?」

「おまえるいぞく理解りかいしてんのか?」

「へ?」


 リズの素頓狂すっとんきょうこえをあげると、ククはあたまかかえ、ためいきく。


「いいか?のうみそ爆発ばくはつさせんなよ?」


 そうとするリズをアオイ触手しょくしゅ捕縛ほばくする。


「いやあぁぁあ!」

「そんじゃはじめるぞ。まず最初さいしょに――」


 五分後。


「フゥー……ただいま!ってリズ?」


 カイがリズとともあつめた植物類しょくぶつるい背負せおってキャンプもどると、そこには力尽ちからつきたリズの姿すがたがあった。


「おかえり」

なにがあったの?」

「リズにるいぞくちがいをおしえてた」

「それ団長だんちょうもあやふやなのに!?リズー?きれるー?」


 カイはリズのかたらすと、すぐにました。


「ふうぇ?」

「あ、きた」

「またてたの!?ってカイくん!?」


 リズは一瞬いっしゅんにして、カイから距離きょりをとると、まづそうにうでさすっている。


 その様子ようす見兼みかねたのか、ククがわざとらしくむ。


「その……カイくん……あの……」

「そうだ。リズ、さっきはごめんね」

「え?」


 リズが謝罪しゃざい言葉ことばまっているあいだに、カイさきあたまげた。


 リズはカイきゅう行動こうどうおどろきをかくせずにいた。

 あやまるべきなのは自身じしんだとおもっていたからこその反応はんのうだった。


「なんてうか、心遣こころづかいがらなかったし、まだ出会であったばっかりでもっとかんがえて行動こうどうしたらかったのに。いや気持きもちにさせてごめんね」


 本音ほんね謝罪謝罪つたえるカイに、リズはそうとした言葉ことばんでしまった。


つぎからはをつけるね」

カイ、リズからもはなしがあるらしい。なぁリズ」

「は、はい!」


 リズはククに後押あとおしされ、カイ真正面まっしょうめんから目線めせんわせる。


「カイ!」

「は、はい!」


 突然とつぜん大声おおごえ自身じしんばれ、カイ身体からだちぢこませる。


 リズは深呼吸しんこきゅうすると、あらためて、カイけて身体からだをくのげた。


「さっきはごめんなさい!!」


 リズの謝罪しゃざい言葉ことば薄暗うすぐらくなったもりなかひびわたった。


 あまりにもおおきなこえだったからから、正面しょうめんっていたカイ勿論もちろん、そのまわりの者達ものたちみみふさいでいる。


 カイはそっとみみからはなすと、リズの姿すがたた。


 しばらくの沈黙ちんもくのちカイひらいた。 


「いいよ」


 カイやさしいこえでリズの謝罪しゃざいれ、許した。


「いいんですか!?」

「うん。というか、さっきったとおり、ぼくにもがあったわけだしね」

「はぁ……よかった〜……」


 リズが安堵あんど表情ひょうじょうかべると、まぶしい笑顔えがおせる。


「まぁそれはそれとして」

「ん?どうかしたの?」

他者たしゃまえむし幼虫ようちゅうべるのはやめてね。気持きもわるいから」

「へ?」


 真顔まがおうリズによってまたその沈黙ちんもくつつまれる。


 カイはなんとか笑顔えがおでなんとかつくろっているが、内心ないしんおだやかではない。


「リズ……おまえ……ノンデリか?」

「ノンデリ……ですか?」

「いや、うん、あと自分じぶん感情かんじょうのコントロールの仕方しかたおしえるわ」


 ククはそういながら、一連いちれんながれを見届みとどけると、椅子いすからこしげる。


「よし、まぁおまえらはまだまだ子供こどもだし、これからも沢山たくさんぶつかりことくさるほどあるだろうからな。あやまれるってのは成長せいちょうあかしだからな」

「とかえらそうなことってるわりにはしょっちゅうキレてっけどなおまえ


 いつかえってきたのか、ククのうしろからかおのぞかせながらセイギがう。


「セイギ!おかえりなさい!」

おう!ただいマ゙!?ってぇ!」


 ククがセイギの鳩尾みぞおちりをらわす。


「なぁにすんだこのクソトカゲ!」

とくに?」

「ちょっとまえ自分じぶんいたセリフわすれたのか!?」

「……もの、どいつもこいつもみんな一貫性いっかんせいくてもいいんだぞ」

「うっわ!せっこ!」


「ただいまー」


 ククとセイギが喧嘩けんかしているなか鵜鷹テイヨウしげみのなかから獲物えものきずりながらあらわれた。


 鵜鷹テイヨウきずる獲物えもの巨大きょだい鹿しかのようなつのえた草食獣類そうしょくじゅうるいだった。


「ククー、これ解体かいたいおねがーい」

「あぁわかっ……たッ!とりあえずこいつぶちのめしてからなぁッ!」

「ぶちのめされるの間違まちがいだろーがクソトカゲ!!」


『ただいまーってまた喧嘩けんかしてるの?』

「「喧嘩けんかじゃねぇ!かぶらせてんじゃねぇよ!ころすぞ!!」」

【|・-・、・-・・、--、--・-・、-・、・・、--・-、《なかよしだね》】


 セイギとククがなぐっているうら欠伸あくびをしながら琉那ルナあるいてきた。


「なーにー、またけんかー?」

「あ、団長だんちょうてたんですね」

「シュラフあったかくてさ〜。ついついちゃった〜。晩御飯ばんごはんまだ〜?」

「あっ!そうそう、料理りょうりはじめないと!」

「それじゃ、ククとセイギはいといて、さっさとごはん作ろっか」


 鵜鷹テイヨウ喧嘩けんかしている二体にたい横目よこめうと、各々おのおの準備じゅんびかった。


 すでにソルナはオレンジいろまっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る