#18 冒険の始まり

 科学発展都市シシュウ


 その南西部なんせいぶからさらに西側にしがわすすむと、巨大きょだい雑木林ぞうきばやしひろがっている。


 むかしからこのもりは〔龍道りゅうどうもり〕とばれており、その由来ゆらいはカルディア地方ちほうへとわたさい使つかわれる安全あんぜんみちのひとつだからである。


 その〔龍道りゅうどうもり〕のなかすすひとつの冒険団ぼうけんだん――〔十人十色組じゅうにんといろくみ〕――が、巨大化きょどいかした黄色きいろ蟹族かにぞく――クラサのり、すすんでいた。


 かれらは各々おのおの自由じゆう移動いどう時間じかんたのしんでいた。


 灰銀色かいぎんしょくかみをウルフカットのロングテールに仕上しあげた少年少女しょうねんしょうじょ――カイはニッケルハルパのげん調整ちょうせいしている。


 そしてそのとなりすわる、山荷葉さんかよう花弁はなびらのようにしろく、ながく、やわらかいかみかぜらしている猫族ねこぞく吸血族きゅうけつぞく蝙蝠族こうもりぞく混血こんけつ少女しょうじょ――ユリはカイおといている。


 そのうしろでは紺色こんいろおおわれた狼族おおかみぞく青年せいねん――セイギと、宇宙服うちゅうふくのような機械仕掛きかいじかけの身体からだ原生族げんせいぞく青年せいねん――アマがしりとりをしている。


 黒紫色こくししょくに、紫色むらさきいろのメッシュがはいった長髪ちょうはつをオールバックにしている青年せいねん――ククは寝転ねころび、あしんだ状態じょうたいちいさな寝息ねいきてている。


 黒色くろいろつやのあるなめらかな長髪ちょうはつなびかせる神族じんぞく女性じょせい――比嘉琉那ひよしるなが、紅色べにいろ荒々あらあらしいかみひたい左側ひだりがわからえた白色しろいろ細長ほそながつの鬼族おにぞくの少女――リズの紅色べにいろかみっている。


 そのとなりでは銃火器じゅうかき点検てんけんを行っている赭色そおいろ短髪たんぱつ鳥族とりぞく女性じょせい――鵜鷹テイヨウ


 そのさらにとなりで、赤橙色あかだいだいいろからかみさきにかけて透明とうめいのグラデーションになっている貝族かいぞく兎族うさぎぞくのハーフの女性――あおい酒抜さけぬきの影響えいきょうすこ苛立いらだっている。


「よし!できたよ〜!」


 琉那ルナはリズのかみからはなすと、手鏡てかがみをリズにわたす。


 リズはかがみうつった自身じしん姿すがたると、あかるい笑顔えがおまっていく。


 リズのほのおのようなくせつよ長髪ちょうはつをシニヨンのかたちまとめ、そこからさらにポニーテールをやした髪型かみがたにへと仕上しあげていた。


ふぁはいいかわいい!!」

「いつまでくちふくんでるの?」


 リズは出発時点しゅっぱつじてんくちれた冒険食ぼうけんしょくをまだ咀嚼そしゃくしている。


はっへまふいんはもんだってまずいんだもん

「それだったらわたしにちょーだい」

いいへふほいいですよ

「そんじゃ、口開くちあけて、じっとしててね」


 鵜鷹テイヨウうままに、リズはくちひらく。

 それと同時どうじに、鵜鷹テイヨウはリズの目線に合わせて口を開く。


「あ、やっべ」

「ん?どうし――ッ!!」


 セイギはこれからこることを予期よきして、ククのあたま上着うわぎける。

 ククは必死ひっし抵抗ていこうするが、流石さすがにも体格差たいかくさがあるため、ほどけない。


 その二体にたいのやりりを不思議ふしぎそうにていたリズだったが、その理由りゆうをすぐにることとなった。


 リズのまえにはくち、おおきくひらいた鵜鷹テイヨウかおがすぐそこにまでせまっていた。


(あれ?これ以上いじょうちかづいたら、ぶつかる――)


 リズがそのこといたときにはすで鵜鷹テイヨウくちびるがリズのくちびるれていた。


「ッ!?」

「……」


ばびぶんばぼぼぐぼびなにすんだこのくそい!!」

「ちょ!あばれんなよ!っておわーー!!」


 ククとセイギがクラサのうえから転落てんらくするが、リズにとってはそれどころではなかった。


 あわてふためくリズにたいして、鵜鷹テイヨウはリズのくちなかのこっている冒険食ぼうけんしょくしたからると、くちはなす。


 リズのかおは、これまでリズがきてきたこれまででもっとあかく、あつくなっていた。


「ん、あんがと」


 それにたいして、鵜鷹テイヨウ何事なにごとかったかのように銃火器じゅうかき手入ていれにもどる。


 その様子ようすて、アオイ揶揄からかうように、わらいながら鵜鷹テイヨウに話しかける。


テイちゃんったら相変あいかわらずのキスだねぇ〜」

最近さいきんってないから欲求不満気味よっきゅうふまんぎみかな〜」

彼氏かれしさん嫉妬しっとしちゃうよ〜?」

「うーん、おんな同士どうしだし、大丈夫だいじょうぶでしょ」


 「えーじゃあおねえさんともする〜?」と、冗談混じょうだんまじりにアオイわらっていると、クラサがとおったみちうように、砂煙すなけむりてながら、セイギがククをかついではしってくると、そのままクラサのうえ着地ちゃくちする。


Killキル youユー!!」


 鵜鷹テイヨウけセイギは中指なかゆびて、血涙けつるいしながらさけぶ。


「どしたの?」

「カップル!!テキ!!カップル!!コロス!!」

『あーあ、ちゃったよ、セイギのリアじゅうブッコロモード』

「なんなんだよ!?オレにたいするいやがらせか!?なぁカイ!おまえもそう思うだろ!?」


 みじめにさけぶセイギにカイなや様子ようすく、セイギにはなった。


「そもそも普通ふつうきてたらつがいぐらいできるくない?」

「ハァア!?オマエ!テキ!!モテモテモ!!コロス!!」

「なんかよくわかんないけどものすごくキレてるがする」

カイ、ごめんなさいは?』

「ごめんなさい」

「あーもう!ちゃんとあやまられたらおこるにおこれねぇじゃねぇかよ……」


 そのやりりを横目よこめ琉那ルナがククを回収かいしゅうたたこす。


「グッフ……」

「ククーきたー?」

「なんかだれかがってたような……」

「そんなんはどうでもいいから」


 琉那ルナ気絶きぜつしていた時間じかん記憶きおくかたろうとするククの言葉ことば無慈悲むじひてる。


「それでなんでおれたたこされたんだ?」

「そうそう!目的もくてきのダンジョンまでどんくらいかかるかな〜?って」

「なんだそんなことか……いえから出発しゅっぱつして、クラサのあし二日ふつかもかからないはず」

「そっかーありがと。えっと……出発しゅっぱつしたのが十二時三十分じゅうにじはんだから、いまは……わたし時間じかんったときには十五時五十七分四十六秒じゅうごじごじゅうななふんよんじゅうろくびょうかな?」

団長だんちょうがそううならそうなんだろうな。ってなるともうそろそろテントてないと」


 ククはそうつぶやくと、ポケットからホイッスルをし、く。


 甲高かんだかいホイッスルのおとしずかなもりなかひびくと、クラサはゆっくりと停止ていしした。


 うしろのほうさわいでいたカイたちもククに注目ちゅうもくする。


「よし、それじゃあいまのうちにテントてと、火起ひおこしと、今日きょう晩御飯ばんごはん確保かくほだな。それぞれ役割分担やくわりぶんたんしてもらう」


 ククは一瞬いっしゅんにして、役割やくわりける。


「まずカイとリズ。おまえらはとか、べれる植物しょくぶつさがしてってこい」

「「はーい!」」


 カイとリズは元気げんきよく返事へんじをすると、そのまま二体にたいもりおくえていった。


「そんで、セイギと鵜鷹テイヨウにくをよろしく」

おう!」

「りょーかい。こ」


 鵜鷹テイヨウはガンケースを片手かたてに、もりなかへとすすむ。


つかまえちゃ駄目だめやつっていまいたっけ?」

いまは〜……兎系うさぎけいはダメだな。あともう二度にど子連こづつなよ」

かってるって」


 セイギと鵜鷹テイヨウはなごえはなれていくのを確認かくにんしたククは、のこった団員だんいんにも役割やくわりあたえる。


「よし、それじゃのこった面子めんつにもるぞ。まずアマ、おまえこせ。クラサはその手伝てつだいな」

『了解〜』

-・・・、・--・-、・-はーい

「それで、おれ団長だんちょうはテントてるから。料理りょうりはユリ、たのんだ。アオイはその手伝てつだいな」

「はい、わかりました。アオイさん、調理器具ちょうりきぐすの手伝てつだってください」

「はーい♪」


『それじゃあ、たきぎあつめにってくるね。クラサ』

【|-・・・、・-、-・・・、・--・-、・-、《はいはーい》】


「それじゃあさっさとテントてて――」

「そのままぐ〜たら――」

「できるか。鵜鷹テイヨウとセイギの手伝てつだいするんだよ」

「えぇーヤダー」


 ククは一気いっきしずかになったその場でテントバッグをひらいた。

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