第6話 旅の宿で寛ぐサクラザワ君が理不尽な受難に見舞われた泣きの涙の話①
これはまぁ第1話の続きみたいな話さ。
社員旅行の宿泊ホテルでは、楽しい宴会に続いての2次会、さらに3次会まで、宿内のパブやカラオケコーナーで行われたよ。
コンパニオン付きで全て費用は会社持ちだったから、みんな喜んで飲んで歌ってお姉ちゃんと戯れていた。
ウチの会社は少人数の事務職女子を除いてほとんどが男ばかりだったからね。
サクラザワ君と俺もしこたま飲んで歌って酔っ払い、すでに2次会の段階でダウン寸前だったので、自分らの部屋にフラフラと引き上げた。
和室の部屋にはすでに布団が3組敷いてあった。…十畳の部屋だったから余裕をもって少し間を空けて敷かれていたのがありがたかったね。
…もう俺たち二人は倒れるように布団に横になると、身体も気持ちもグッタリしてしまってすぐにでも眠ってしまいそうだった。
「あぁ…もうダメ、ぐったり、眠い、サクラザワ君…お休み!」
「僕ももうグロッキーですよ、森緒さん…」
二人でそう言って、部屋がゆらゆら心地よく揺れるような酩酊状態の後、これからまさに睡魔に呑まれかけた時だった。
部屋の扉が開く音がして、
「…あぁここだ、…そいれは失礼します、…う〜…らいじょぶれすよ、もうひとりれ寝れますよ、じゃ!」
と声がして若い男が部屋に入って来た気配がした。
サクラザワ君は部屋の窓側の布団、俺は真ん中の布団に寝ている。
入って来たのは同室仲間のヒラヤマ君。…24才の若手社員だけど、どうやら雰囲気から察するに、先輩社員や上司などから相当酒を飲まされて来たようだった。大丈夫か?
しかし、部屋の扉が閉まる音がして、続いてスッ、スッと和室を歩く音が聞こえた。…どうやら入口側の自分の布団まではやって来たようだ。
次に「ドサッ!」と布団の上で崩れ落ちる音が聞こえた。
…俺は疲労と眠気で半分モウロウ意識の中、顔だけヒラヤマ君の方を向けると、それでも奴は掛け布団をズルズルと身体の上に引っ張っていた。…そうして間もなく静かになった。
(やれやれ……)
他人事ながら安堵した俺に、再び睡魔が襲って来て、本格的に眠りに落ちて行こうとしたその時!
「えろえろっ…!」
ヒラヤマ君方面から音がした。
(うわっ!…もしや!?)
俺はもはや再び顔をそちらに向ける気力も無くなり、ただそのおぞましい音だけを聞いていた。…奴が布団から出た気配は無い。おそらく布団の端に戻しているのだ。
…しかしその後、奴が布団の中で寝返りをうった気配があり、再び部屋に静寂が訪れた。
俺がほとんど眠りに入った時、もう一度、「うっ!」と奴から小さくうめき声が上がり、その直後再び、「えろえろっ…!」と音が聞こえたのは、俺が意識を失うのとほとんど同時のことだった…。
…って訳で②へ続く!
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