第2話チラリズム

「ウッホホ、ウッホホ、ウッホホのホー♪」

歌いながら、部室に現れたのは大原だ。

これでも、初段である。

「何、やってんの?」  

と、大原は山崎と金子に声を掛けた。

「俺達がセクハラをしたと、イチャモンを付けてきたキャプテンが、的貼りしかやらせてくれないんだ」

「馬鹿だな、もっと頭を使えよ。結局、クレバーなオレのような男が成功するんだ。早くオレの様な、ダンディーな男になれよ!アッ、七海ちゃん、おはよう」

小沢七海はカケを着けている最中だった。

「あ、大原先輩。……鼻毛出てますよ!」

「……」


「アハハハ、大原、どこがダンディーなんだ?なぁ、金子」 

「うん、そうだ。お前も、的貼りだ!」 


大原は、更衣室に閉じこもった。

すると、道場が静かになり、部員が、

「よろしくお願いしますっ!」

と、叫ぶように言う。

顧問の広瀬先生だ。

武闘派で厳しいが、たまに優しい時もある。

広瀬は置いてある弓道着を洗濯する為に、更衣室を開けようとすると、内側からロックされていた。

ドアをノックする。なかなか開かない。

ようやく、ドアが開いた。中から大原が、

「だから、うちは新聞取らないよ!バーカ」

「お前、何してんだ……」

「……せ、先生」


バキッ!


ぐはっ!!


広瀬は大原をビンタした。

「お前も、今日は的貼りだ!いいな?」

「は、はい」


広瀬先生は、来月の大会の必要事項をキャプテンの有友に説明して、その2週間前に団体戦のメンバーを決める様に話した。

それだけ言うと、校舎に向かって歩き出した。

山崎、金子、大原は的貼りを黙々としている。

大原は、山崎と金子に言った。

「出来る男は殴られる、男らしさも必要だ!アッ!」

「どうした、大原」

「どうした?」

「ちょいと、お二人さん耳を貸しな」


3人は黙りながら、一点を見つめていた。胸当てを外した、1年の女子の弓道着のすき間から、おっぱいの谷間がチラチラ見えていたのだ。

これで、大原の株は急上昇。

3人は的貼りに集中出来ない。


「おいっ、お前ら。どこ見てんだ?」

声をかけたのは副キャプテンの長谷川亮だ。

長谷川も2段である。

「何をおっしゃてるのですか?ねぇあなた」

「そうだそうだ、うちの息子がどうしました?」

「お前ら、女子の胸見てただろ?」

「金子ママ、うちの息子誠が何をしたのか?」

「いや〜ねぇ〜。うちの息子がノゾキをしたと難癖付けてきましてね。うちの息子はそんな子ではないのに」

「パパ、ママ、僕はまだ若いから女子の事なんて気にしてないよ」

「ほら、そこのお兄さん。うちの家族を犯罪者扱いするのは、失礼じゃありませんこと?」

長谷川は、

「じゃぁ、尋ねるが、何故に股間を膨らませてるんだ?」

「ん?」

「あっ、何てこったい。うちの息子は反抗期」

「私なんか、女なのにテント張ってる」


「お、長谷川。また、こいつら、ノゾキかぁ〜」

「有友、女子には胸当てを外さないように伝えてくれ」

「そうだな。コイツら集中しないからな」

「再来週中に団体戦のメンバー決めろってさ。広瀬先生が」

「しょうがない。こいつ等外して、調子良い1年から3人選ぶか」

「そうした方が良いと思う」

弓道の団体戦は、5人一組だ。


「いつから、パパはこんな薄情モノになったのかなぁ?」

「ナオ、私はパパを信じています」

「オラも」


「あっ、水谷さん」

「おはよ。何で、金子君達が的貼りしてんの?1年の仕事なのに」

「それがさぁ〜、聴いてよ水谷さん。キャプテンに無理やり、いやらしい言葉を言えって脅迫されたから、イヤイヤ言ったら女子に嫌われて、今日は的貼りなんだ。酷い話しだよね」

金子はさっぱりと言ったジェスチャーをして、水谷の同意を得ようした。

「あんた達、ちょっと臭いよ!」


うわぁ〜、水谷さん耳が痛い!


これが、大体のメンバーだ。水谷は2年の女子して、Fカップなのだ。

有友の彼女でもある。

その日は、19時まで活動してお開きになった。


帰り道、的貼り3人は並んで帰った。

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