第7話 召喚士はやらかす




「少しお尻がひりひりするわね……」


「あ、ごめん。ちょっと強く叩きすぎたかも」


「その、もっと強くても良かったのよ。こう、痛いの、気持ち良いから」



 時刻は真夜中。


 俺とフィレアは宿の一室でちょうど色々と激しめなエッチを済ませたところだった。



「それじゃあ、私は部屋に戻るわね」


「う、うん」


「……どうしたの?」


「あ、いや、何でもないよ」



 俺は言葉を詰まらせるが、フィレアは不審に思いながらも部屋を後にした。


 隣の部屋の扉が開き、閉じる音がする。


 宿は二人部屋が一つ、一人部屋を一つ借りることにした。

 俺とフィレアは付き合ってるわけだし、同じ部屋にしようかと思っていたが……。



『一人は怖いですぅ』



 と、カナンが言ったのでフィレアとカナンで二人部屋を使い、俺は一人部屋になった。


 別に不満は無い。


 カナンはこちらの都合で呼び出してしまったわけだし、それくらいの融通を利かせるのは当たり前だろう。


 でも本音を言うなら……。



「……朝までエッチしたかった」



 俺は性欲が強い方だったらしい。


 まるで盛った猿のように、フィレアの身体を隅々まで貪りたがっている。


 というか、単純に身体の相性が良かった。


 意外とMっ気のあるフィレアに最初こそどう対応したものか分からなかったが、何ということもなかった。


 俺も意外とSっ気があったようなのだ。


 語気を強めて命令したり、お尻を叩いたりするのにとても興奮した。


 本当は朝までやりたかったのだ。



「でも、他に仲間がいるなら翌日に響くような真似はできないもんなあ」



 これが俺とフィレアの二人きりの旅だったなら、何も遠慮することはない。

 出発を明後日にしても良いから朝までシても問題は無いからな。


 でも、実際はそうじゃない。


 なら俺が我慢して然るべきだろう。さて、明日に備えて早く眠らねば。



「……その前に鎮めておくか」



 フィレアとのエッチを思い出し、ムラッとしたのでズボンを下ろす。


 と、その時だった。


 誰かがコンコンと俺の部屋の扉をノックし、知っている人物の声が聞こえてくる。



『アスターさん、起きてますかぁ?』



 カナンだった。


 俺は何かあったのかと思い、ベッドから身体を起こして部屋の扉を開ける。



「カナン、何かあっ――な、なんて格好してんだ!?」



 扉を開けた先にいたカナンは、何というか扇情的な格好をしていた。


 ネグリジェとでも言うのか。


 普段の神官服も所々露出があってエッだが、その姿はその何倍もエッだった。


 しかし、肝心のカナンは可愛らしく小首を傾げている。

 もしかしなくても自覚が無いのか、それとも狙ってやっているのか。



「はぇ? 何の話ですかぁ?」



 めっちゃ可愛い。


 加えて自らの身体を抱くように腕でおっぱいを持ち上げており、その大きさが強調されている。


 今し方一人遊びをしようとした手前、とても心臓に悪い。



「い、いや、な、何でもない。そ、それよりこんな時間にどうしたんだ?」


「ちょっと相談したいことがありましてぇ、少しお部屋に入っても良いですかぁ?」



 相談、か。


 それは乗ってあげるべきなのかも知れないが、こんなエロい格好をしてる美少女を部屋に招き入れることに抵抗がある。


 もしフィレアが起きてきて、カナンが俺の部屋にいることに気付いたら?


 何もやましいことをしていなくても、勘繰られてしまうかも知れない。

 せっかく付き合い始めて早々に痴情のもつれとか嫌すぎる。


 でも仲間からの相談には乗ってやりたい。



「時間は取らせませんからぁ。お願いしますぅ」


「うーん。わ、分かった、入ってくれ」



 冷静に考えてみれば、カナンは聖職者だ。


 ましてや彼女は一介の神官ではなく、女神教を代表する聖女。


 その身体は純潔でなければならない存在だ。


 フィレアもそれは理解してるはずだし、説明すれば分かってくれる、よな?


 そう思って俺はカナンを部屋に招き入れた。


 カナンは「私たちの部屋より狭いですぅ」と言いながら、俺がさっきまで寝転がっていたベッドに頭から飛び込んだ。


 無邪気で可愛い。



「それで、相談って?」


「そのお話をする前にぃ、まずは座りましょうよぉ」



 そう言ってカナンがベッド脇に座り、隣を手でポンポンと叩く。


 隣に座れと言うのか。


 まあ、特に断る理由は無いし、一人部屋は簡素で家具はベッドのみ。

 他に座る場所も無いため、俺はカナンの隣に腰かけた。


 カナンからふわっとした甘い匂いがする。



「アスターさんに相談したいのはぁ、これからのことなんですぅ」


「こ、これからのこと?」


「実はぁ、アスターさんとフィレアさんがエッチしてる声が聞こえてきてしまってぇ」


「!? そ、それは、ごめん。配慮が足りなかったよな」


「いえいえ、責めてるわけじゃないんですぅ」



 柔らかく微笑んだカナンが次の瞬間、俺の腕に抱き着いて大きな胸を押し当ててきた。


 な、なん、これ、柔らかっ!!


 スライムだ。

 メロンくらいの大きさに実ったたわわなスライムである。



「カ、カナン、何を……」


「聖女だってぇ、女の子なんですよぉ? お二人の激しいエッチの声を聞いたら、エッチなことしたい気分にもなるんですぅ」



 そう言ったカナンの表情は、確かに女の顔をしていた。

 普段は凛々しいフィレアが抱いている時に見せる可愛らしい顔と同じだ。


 誰に対しても聖女として接するカナンが、俺には女の顔を見せている。


 その優越感で興奮してしまった。


 すると、何を思ってかカナンが俺の下半身をちらりと見つめて目を細めた。



「アスターさんもぉ、やる気満々みたいですねぇ」


「い、いや、これはただの生理現象で……」


「せいりげんしょー? 難しいことは分からないですぅ」



 その台詞はいつも通りの可愛らしい物言いだったが、何となく嘘だと分かった。


 完全に俺を誘ってきているようだ。



「我慢しなくて良いですよぉ、アスターさぁん」


「カ、カナン……」


「私の身体ぁ、好きなだけめちゃくちゃにして欲しいですぅ」



 俺は誘惑に抗えず、カナンの豊満な身体に手を伸ばそうとして。



「……ごめん」


「はぇ?」



 本当はカナンの大きなおっぱいを揉みしだきたい。でも、駄目だと思った。


 俺にはフィレアという恋人がいる。


 ここでカナンに手を出したらフィレアへの裏切りになってしまう。


 だからカナンのおっぱいを揉むわけにはいかない!!

 揉みたいけど!! 揉みたいけど、俺はそれ以上フィレアを裏切りたくない。


 その思いが伝わったのか、カナンは俺の腕におっぱいを押し付けるのをやめた。



「そうですかぁ、残念ですぅ」


「……本当にごめん」


「良いですぉ。――どうせ断られたら無理矢理するつもりでしたしぃ」



 一瞬、カナンから笑顔が消えた。


 いつも微笑みを絶やさないカナンが思わずゾッとする冷たい表情を見せたのだ。


 あまりの変貌っぷりに困惑していると、カナンはおもむろに大きなおっぱいの谷間から手に乗るほどの小瓶を取り出した。


 そ、そんなところに物を仕舞えるのか!?



「これはぁ、淫魔の体液を抽出して作った媚薬なんですぅ。メリスさんに以前作ってもらいましたぁ」


「な、なんでそんなものを?」



 俺の問いに答えるように、カナンは媚薬を口に含んだ。


 そして、俺に抱き着いてキスしてきた。


 その拍子に媚薬を口の中に流し込まれてしまい、思わず吐き出そうとするも、カナンが舌を絡ませてきて飲み込んでしまった。



「んごくっ、な、何をっ、うぐっ」


「はあ、はあ、アスターさんったら可愛い。良いんですよぉ、媚薬を飲ませた私が悪いんですからぁ。アスターさんは何も悪くないですよぉ」


「ふぅー、ふぅー、お、俺は、俺は……」


「もぉ、仕方ない人ですねぇ。私が上になって動きますからぁ、後は私に身を委ねてくださぁい」



 そう言ってカナンはベッドで仰向けになった俺に跨がり、朝まで激しい時間を過ごした。









―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「うーん、有罪」


ア「断ったから!! 一度は断ったから!!」



「ギり無罪」「でもやっぱり有罪」「聖女が性女だった」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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