第1話

頭痛が止まらない、薄暗い部屋の中でも視界が点滅する様に眩しい。ゆっくり目を開いて、パイプ椅子に座っている古川マリアを見る。飛行機のことを思い出して、あれは夢に近いものだけど、現実に繋がっている。


今の感覚を一つの言葉にしたら「違和感」。何故かというと、飛行機の中では彼女のことが全然思い出せないけど、今、古川マリアの顔を見るだけで話していた内容の全部が思い出せた。だから違和感しかない、記憶があいまいで矛盾しているところがあるのに気づく。


「悩み事が多いですね」


とマリアが言い出した。


「君、確か僕が起きた後に飛行機にいなかった…一体…」


「言いたいことはちゃんとわかります。でも、今そんな場合はありません」


彼女が僕の手を優しく握ると温かい気持ちが湧いてくる。お医者様を呼んで診てもらった後に、すぐに退院ができた。で、マリアはずっと僕のそばに居てくれた。


「あのさ、なんで?」


「何がですか」


マジか。一応訪ねたけど、ツッコミが来ると思わなかった。


今まで全部夢のようだったが、この子と話すと現実感を感じ、今は本物の自分だとわかる。顔に当たっている風、だるさ、マリアのさらさらな髪の毛で今は夢や幻覚じゃないと確信した。


2人で、契約しているアパートに到着した。会社の人に言われて全部片付けていると思うので、マリアに「上がっていいよ」と告げる。


中はまだ見ていなかったけど、結構大きい、少なくとも4人ぐらいが余裕で暮らせる大きさ。一旦部屋まで荷物を運び、居間に戻る。


ソファに腰を下ろして、天井を眺める。深呼吸して、頭にヤマト国に着いた時からに起きたことを整理し、隣に座っている古川マリアに声を掛ける。


「なぁ、いいか」


「はい、なんでしょう」


「飛行機のことは、もしかして、君の仕業とか?」


「ばれちゃいましたね。そうだよ、ちょっとだけいたずらな歓迎がいいかなと思いまして、勢いでやりました。」


「歓迎っていうか、君も裏社会の人なんだね」


無邪気な笑顔で頷くマリアは悪い人ではないと確認ができた。


「あと、どうしてマリアの荷物もここに?」


「これから私たちはパートナーになるのですから、同じアパートに住むのは当然のことです」


仕事の都合ね。納得。


「改めて自己紹介しようと思っています。私は古川マリア。25歳で幻覚を作ることができます。よろしくお願いいたします」


「ああ、よろしく。では、せっかくだから、僕も自己紹介ね。カーロス・アルメイダだ。27歳で神の目を持っている者」


瞬間、マリアの目がパーと開いた。神の目は人、妖怪などの心の真実を見ることができる力だ。マリアが興奮するのも無理もない。この力があると、未来を見ることができるからだ。自分の死を含めて。

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