第12話 デート

 次の日の休日。

 霧先輩と集合予定の駅前には、ソワソワと落ち着かない私の姿があった。


 傍から見たらただの変質者にしか見えない私であったが、メイクと服装ばバッチリと決まっていた。


 早起きして服を決めたり、アクセサリーを決めたりする予定だったが、今日が楽しみ過ぎて全く眠りにつけず、昨日の夜から朝方に掛けて悩みまくってしまった。

 おかげで寝不足である。


 その分、今日のコーデとメイクは私史上完璧とも言える出来になった。

 ダメージホットパンツに、青白の縦縞模様が可愛いワイシャツ。その上から腰元にベルトを巻いている。

 今日はおオシャレで伊達メガネまで装備している私。


 鏡の前で自分の姿を見て、つい可愛いと口から漏れてしまったくらいだ。


 メイクも悪目立ちしないように、落ち着いたトーン。

 クマだけは全力で隠したが、それでも自分の顔が引き立つナチュラルメイクに仕上がった。


 深夜の一二時からこれらを始め、今は朝の十一時。

 夜中はずっと集中していた私の体は、家を出る頃にはヘトヘトであった。


 これじゃ霧先輩と会うためにしたことなのに、本末転倒だと思うけど大丈夫。

 どうせ霧先輩に会った瞬間、その疲れは全部吹き飛ぶから。


「ごめん、待った?」


 スマホを見ている私に飛んできた、透き通るように綺麗な声。

 顔を上げると、そこに居るは私服姿の霧先輩。


「……ヤバかわ」


 制服と私服では印象が変わるとはまさにこのこと。

 細身のデニムに、フリルのついた水色のブラウス。

 厚底のスニーカーを履いていて、身長がさらに高くなっている。


 ピチっと太もものラインがハッキリと浮かびあがっていて、今すぐそこに顔を挟まれたい。

 もう疲れなんて吹き飛んでしまった。


「萌音ちゃん、今日の服いいね。すごい女子って感じ」


「先輩こそ、大人な雰囲気が出てて、すっごく可愛いです」


 お互い、全身を眺めながら褒め合うと、じわじわと顔を赤くする。

 こんな先輩を今日は一人占めしていいなんて……なんて最高の日なのだろう。


 いっぱい遊んで仲を深めて、疲れた霧先輩の体をじっくりマッサージしてそのあとは……。


 グヘへ……想像するだけで不快な笑みがこぼれてしまう。

 でも、今日はあくまで普通のデート。

 最初から下心丸出しではただの獣でしかない。


 ちょっとはそうゆう展開に期待しつつも、霧先輩との時間を楽しむことが最優先だ。


 うん。期待するのはちょっとだけ……ホテルに連れ込もうとも思わない。

 ……って、無理ゲーでしょどう考えても!


 霧先輩と二人きりでデートだよ⁉ そうゆう展開を意識しない方が無理があるから!


 まぁ、デートっていうのは私が勝手に言ってるだけだけど……そんなの今は関係ない。


 帰り際、駅へと向かう道でいい感じになり「どこかで休憩する?」などと霧先輩に言われた暁には、鼻血が止まらなくなりそうだ。


 所詮はそんなの夢物語で、霧先輩から誘われることなんてない。


 だけど……やっぱり期待しちゃう私は、可愛い乙女なのかもしれない。


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