第7話 相性
「ちょっと気になるところはあるけど……。萌音ちゃんが言いたくないなら無理には聞かないよ」
「……ありがとうございます」
「一つや二つ、言えないことくらい私にもあるし」
「先輩も何かあるんですね」
「まあね。私だって人間だし」
気を利かせてか、あえて私の目を見ないように作業を進める霧先輩。
何この先輩! 完全に私を惚れさせにきてるんですけど⁉
会った瞬間からもう好きになってるけど、その気持ちをさらに増幅させてくる。
「えへへ……霧先輩のおかげで、悩んでたことも大丈夫になりました!」
なんか、全部吹っ切れたような気がする。心に出来た隙間を、この数分の間に霧先輩が埋めてくれた。
顔良し、性格良し、スタイル良し。好きな要素を全て持っている霧先輩。
せっかく詩音先輩が用意してくれたチャンスを逃すわけにはいかない。
というか、元々詩音先輩は私が惚れると思って霧先輩を呼んだのだろうか……。
そうだとしたら、かなりの策略家だ。頭がいいとこうゆうところでまで有効活用できるのか。
私にはそんな戦略、思いつきもしないだろうから尊敬しちゃう。
……よし! このチャンスをものにするぞ!
仲良くなって、遊びに行って、最終的には恋人になって……。
ホテルに行って、ベッドに霧先輩を押し倒して襲いたい。
恋人になる前にエッチをしたい私だけど、今回ばかしは少し感情を抑え気味にしよう。
体の相性も付き合うとなったら大事だから確認しておきたい。けど、いきなりがっついても関係が壊れそうだし、様子を見ながらの行動になりそうだ。
それに……私の性欲についていけるかどうかもまだ分からない。
そのせいで一度振られている身だから、下手に手出しはできない。
もし行為自体が嫌いだったら、私は諦めるしかなくなる。
でも……! 仲良くならないことには話は進まない。
最初からネガティブになっていたら、手に入れられるものも手に入らなくなってしまう。
できるぞ私! 霧先輩と仲良くなるんだ!
そして、毎日のようにイチャイチャエッチをするんだ!
「霧先輩! 私と友達になってくれませんか!」
まずは友達になることから始めよう。
最初の工程だが、交友関係の基礎で一番大切なことだ。
「と、友達……?」
グーンと顔を近づける私に困惑する霧先輩だが、
「そうです! これからも霧先輩と一緒に居たいと思うので、是非友達になってください!」
一向に引かない私。
「ダメ……ですか?」
ここで殺人級に可愛い上目遣い。
推しに弱い霧先輩なら、これでイチコロのはず!
キュルキュルとした子犬のような眼差しで見つめていると、霧先輩は頬を分かりやすく染める。
「もちろんだよ……。私も萌音ちゃんともっと仲良くなりたかったし」
赤くなった頬を人差し指でかきながら、オドオドとした目で私を見る。
「やったぁ!」
「これからも萌音ちゃんとは関わるだろうし、それに……いい子だし、私とも相性良さそうだから」
「そ、そですか……」
相性がいいまで言われてしまった……! ダメだ、嬉しくて昇天しそう。
霧先輩も、これだけグイグイ言っている私を嫌がっている様子はない。むしろ好意にも思える言動が多々ある。
これはいける! 親密になれる!
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