第6話 慣れてないからさ、私……
「でも、もったいないなぁ……霧先輩、めっちゃ可愛いのに……」
髪の毛をまた戻した霧先輩の顔を眺めると、不意に口から出てしまう。
「かわっ……! 萌音ちゃんって、そうゆうこと言うのに、あんまり抵抗ない人?」
「あっ! 私、つい……」
「いいんだけどさ、可愛いとか言われるの慣れてないからさ、私」
「……可愛い」
照れ隠しで分かりやすく顔を逸らし、口をすぼめ、耳に髪を掛ける姿に、また私は言ってしまう。
ダメだ、私……。
霧先輩のことが気になって仕方がない。
クールな見た目に反して、人見知りなのと恥ずかしがり屋というギャップが、私にとことん突き刺さる。
「萌音ちゃん……あんまり先輩を弄んじゃいけないんだよ……」
赤くなった顔を必死に両手で隠す。
あぁ……その表情。背筋がゾクゾクして、子宮うずいちゃう……
本能的に、体が霧先輩のことを欲しがってしまっている……
言葉で責めて、もっと赤面させて……体も焦らして火照らせて。
恥ずかしさでぐちゃぐちゃになった霧先輩をイジめたくなる。
考えるだけで、体が熱くなって濡れきちゃうよ……
「ねぇ、萌音ちゃん大丈夫?」
「ふぁ! だ、大丈夫です!」
顔の前で手を振られた私は、一気に現実に呼び戻される。
いけないいけない。
変な妄想をしてしまった。初対面の先輩、しかも初心で恥ずかしがり屋という私が一番タイプな人で下を濡らしてしまった。
まぁ、濡れているのは霧先輩を一目見た時からなんだけど……
このままじゃ集中できない……頭の中が霧先輩で埋もれてしまって、作業どころの話ではない。
……詩音先輩め。期待以上だけど、とんでもなく私のタイプの人をよこしてきたな……
二人きりにしてくれたことはありがたいけど、会わせてくれるなら遊びに行った時の方がよかったよ! 今日は絶対にお持ち帰りできないし!
「萌音ちゃん。詩音から聞いてた話より平気そうでよかったよ」
キョドっている私の様子に、霧先輩はクスっと笑う。
嫌だ……私も恥ずかしい姿を見せてしまった。
それにしても……霧先輩の笑顔、可愛すぎてヤバぁ……また濡れてきちゃう。
「え、詩音先輩から私のこと聞いてるんですか?」
「事前情報として詩音から色々と聞いたよ」
ここで、キャ! 霧先輩が私のことを知ってくれてる! なんて喜べるわけもなく、ただ驚いた表情をする私。
内容が内容だから……ね。
どこまで知られているか分からないが、何も隠さず全て話されてたら、霧先輩に顔向けできない。
恐る恐る、腰を丸めながらも霧先輩に聞いてみる。
「ちなみに……どこまで……?」
「萌音ちゃんが振られて、落ち込んでるから慰めるのと仕事を手伝ってあげてって」
「別れた理由……は?」
「詳しくは聞いてないけど、その……体の関係がどうとかは……聞いたよ」
あまりそうゆう話に慣れていないからか、霧先輩は頬を赤らめる。
良かった。私のイメージがマイナスになることは話されていないようだ。ナイス詩音先輩。
初対面の人は第一印象が大切だから、ここで既に伝えられていたら、萌音ちゃんってそうゆう人なんだ、という前提が頭の中に固着してしまう。
もし霧先輩にド淫乱の痴女だとか思われていたら、私は軽く死ねる。
そうだったなら、次の全校集会の前に詩音先輩の飲み物に下剤を入れて、全校生徒の前で失禁させる。
その映像を撮って、私は色々と一人で楽しむことだろう。
詩音先輩も私が何をしでかすか分からないから、踏み込んだことを霧先輩に言わなかったことはいい判断だと思う。
私が怒ったら怖いのは、詩音先輩が一番知っているからね。
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