第79話鬼とJKと寂れた神社

―――


春、夏、秋、冬


順調に1年が過ぎて行く。


少し前に半袖に手を通したはずなのにもう長袖とコンニチハ。


佐竹の告白の後、やっぱりすぐに噂は出回った。とんでもないスピーカー妖怪がいるみたいで…巫女の本領発揮か?って思わされたくらい。


でもそんな噂も受験や就活って言う強敵の前じゃ静まるしかないようですぐに皆お勉強モード。ヒーヒー言いながら奮闘する3年生には構ってる余裕はなかったみたい。


そして高校生最後の冬休み。


今日は珍しく鬼しかいない。


いつもはユキメやタヌキも交えてワイワイしてるから2人きりが久しぶりすぎる。


何すればいいのコレ。とりあえず塩ぶつけとく?


「なぁ木葉」


「ギクッ。なに」


「何で今肩揺らした!?なにしようとした!!」


「別に。」


「なわけねぇだろ!?その手の塩を捨てろ!!」


チッ。バレたか。


まぁいいや、何か用事みたいだし。


くだらない用事ならその時ぶつけよう。


「捨てはしないけどなに。出かけるの?行ってらっしゃい。」


「切り捨て早ぇし出かけるけどお前連れてだ!!てかそれ暇だからぶつけようとしたろっ!」


「半分正解。もう半分は静かだったから。」


「おかげで賑わったけどな!!」


なによ、ダンボールでガード固めちゃって。


そんなの聖水でいくらでも突破できるのに。


ていうかお出かけって…なんで私まで。


「私はここで本読んでるから。どうぞご自由に。」


「はがっ!久しぶりに2人きりなんだぞ!?滅多にねぇのに!!」


「かまってちゃんか。これからいくらでも2人きりの時間なんてできるでしょ。あんたの里に嫁に行くんだから。以上」


「ひでぇっ!!」


って断ってんのに。


ぐっぬぬぬって悔しそうな声出してなんかわざわざソファで寛ぐ私の目の前にまで歩いてきた。


なに、やろうっての。


「なに。」


「木葉。頼む、一緒に来てくれ。」


「はぁ?…なんで顔赤いの。」


「いいから!!どうせ暇なんだろ、少しだけだ!!」


「…はぁ、しょうがないな。あの暖かい羽織かしてよね。」


「おう。」


手を握ってくる鬼が私でも分かるほどガチガチ震えてる。


珍しすぎて鬼死ぬのかと思った。


てか手汗すご…手洗ってから行こ。


「先外出てるぜ。絶対来いよ。」


「はいはい」


寒いから出たくないのになぁ。


まったく。


これで大した用事でなかったらますます怒るよ?


―――ってついてきたのはいいけど。


ここは…


「あんたを拾った寂れた神社だ。なんで?」


そう、あの煤けた緋色の鳥居があるあの神社。


鬼を拾ってから寂しくなくなった私はここに逃げ込む事もなくなってたっけ。


お手入れされてないのが分かるほどに本殿は砂埃を被っていてところどころ蜘蛛の巣も見える。


懐かしいな。


「その。雰囲気とかねぇーけどよ、ここしか浮かばなかったから。」


「はぁ?肝試しでもするの?」


「ちげぇっての!!…ちょっと耳借りるぜ。」


「え、なに?え??」


スーッハーッ。


った大きく深呼吸して私の髪を耳にかけたすぐ後に、”カチッ”て音がした。


何かつけられた?まさかイヤリング?


「うし。おぉ、なかなかだな。」


「なにが…?」


「その耳飾りは俺の鬼の妖力で作った完全オリジナルなんだぜ。」


「へぇ。え。それをなんでここで?これだけなら家でよかったじゃん。」


こんな寒い思いしてここですること?


どうやら持ってきた塩が役に立つみたい。


「もう少しで卒業だろ。そしたら妖怪の里来るだろ。」


「まぁ。」


「わ、渡せる機会ねぇだろ。」


「別にいつでもいいでしょ。」


「〜〜っっ。」


「???」


ますますなに?手の先まで真っ赤になるほどの物なの?コレ。


「その。改めて言う。一生大事にするから離れんなよ。」


「・・・!?!」


「妖怪が自分の妖力込めて作った飾りを渡すって事は、人間で言う指輪だ。だからここを選んだんだ。」


「いや…なんで。」


お、、驚いた…


ってことはコレ、結婚指輪と同等って事??


いや渡すにしても場所のチョイスおかしいでしょ。


「懐かしいじゃんか。俺ここで初めてお前と会った時、菓子パン投げられたし。」


「そりゃまぁ。社会の敗北者にしか見えなかったから。」


「今言われても傷つくな。ここ元はなんの神がいたか知ってるか?」


「さぁ?私の憩いの場だったけど。」


「縁結びの神だぜ。偶然だと思えねぇだろ?」


「…」


二ッ。て笑ってドヤ顔されてる。


縁結びか…そうなんだ。


だったらここでイヤリング渡されるのもいいかも?


「この場所のおかげで俺は生きながらえたし木葉見つけたしな。渡すならここしか浮かばなかった。」


「そっか。センスゼロだけど考えには納得。」


「それでこそ木葉だ。」


なに苦笑いしてんだか。


結婚指輪…かぁ。


「くす。大事にしなさいよ。」


「え?」


「雑に扱ったら里もろとも灰にするから。」


「お前やっぱり魔王だろ?言うセリフがラスボスなんだよ。」


「うるさいな。ほら帰るよ下僕1号。2号もそろそろ帰ってくるでしょ。」


「下僕!?ってお前それは…はぁ、懐かしい呼び方すんなよな。」


「くすくす」


はぁ〜って大きく息を吐いて肩の荷が降りたであろう鬼を連れて帰るか。


寒いからね。








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