第78話鬼とJKと告白
「ーっいた!!」
昼にユキメから衝撃発言されてすぐに家を飛び出したってのに、全然見つからなくてもう夕方だ。
ショッピングモールに水族館、公園とか色々探し回ったのに見つけたのは木葉お気に入りのカフェじゃねぇか。
たしかここ、夜はパフェやってんだよな。
ここ来る時だけは目尻下げんだ、木葉の奴。
「早く引きはがそうイツキ!!あの男の子だろ?木葉を諦めないって奴!!」
「チッ。あいつだ、ったく。っんとにしつけぇっ」
走り回ったせいで息は上がるわ汗は止まんねぇわ…。
はぁ、見つかったからいいか。
早く木葉を連れてかねぇと。
ーカランカラン…
「いらっしゃいませ。空いてる席どうぞ」
「俺と付き合って欲しい、日暮!」
ザワッ。
店員が案内する声とほとんど同時に響いたデケェ声。
周りの客は告白だってソワソワしてる。
一足遅かったかっ
「俺この1年、色々考えたんだ。どうすれば信用を築けるかって。だから今日会ってくれたのすげぇ嬉しかった。」
「ん。」
「どうかな。やっぱり俺じゃまだ付き合えない?」
「…」
「あんっのやろっ!!」
ひっぱたいてやる!!
「はぁ、諦め悪いよね、あんた。」
「…木葉?」
表情一つ変えねぇでカチャンとカップをソーサーに置いた木葉。
ま、まさかOKしねぇよな?
「そりゃ諦めたくなくて頑張ってたし。俺達もう3年生になるだろ?もしOKなら高校生活残り1年、思い出作りたいじゃん。」
「あんな事言ってるよイツキ!!止めなくていいの!?」
「…ちょっと待とうぜ。」
正直、気が気じゃねぇよ。
このまま木葉がOKしたら嫁にって話もなくなるんだ。
でもよ、木葉の雰囲気が”NO”って言ってんだよな。
「悪いけど、イエスと言えない。」
「っっ。…ちなみに理由は?まだ信用足りなかった?」
「ううん。私、鬼のとこに嫁ぐんだよね。」
「・・・え。」
「だから。嫁ぐの。高校卒業たらイツキと結婚する。仕事はおじいちゃんの神社継ぐし、だからクラスメイトとは高校で関わりが終わりなんだよね。」
シーーーン。
空気重いな。
そりゃま、フラれたしな。あいつ。
しかも結婚の話まで出されたらもう何もできねぇし。
「い、いつから?」
「去年」
「嘘だろ…言ってくれよ…」
「噂立つでしょ。それに何回も告白断ってるし。でも、誠実さは伝わった。」
「…」
「だから今日、ちゃんと理由を話して断るために来たの。私はどう考えてもイツキ以外と付き合うのはムリだし。」
…な、なんだよ。
普段俺の名前言わねぇクセに。
イツキ、イツキって…。
「ばかやろ。帰ろうぜトモナ」
「うぅっぐすっ!!!僕は信じてたぁぁあっ!!」
「あっ、コラ!!」
トモナあの野郎!!うわぁぁんって泣いて木葉の方に走って行きやがった!!
さっきの聞いてたってバレたら殺されるぞ!?
ーガシ!!「うわ!?トモナ!?」
「え、誰?」
「半居候の呑んだくれ。何してるのここで。」
「木葉が男と出かけたって聞いて連れ戻しに来たんだ!!もう、心配しちゃったじゃないかぁぁ!!」
「って事は鬼もいるの?」
「よ、よぉ木葉。何も聞いてないぜ。」
「耳を削がれるのと目玉を潰されるの、どっちがいい。」
「悪かった!!本当に悪かったから怒るなよっ。」
「盗み聞きなんて最低。婚約破棄してやろうか。」
「はが!?そりゃねぇって!!心配して当たり前だろっ。自分の女が他の男と2人で会うんだぞ、俺の知らねぇとこで!!」
「…」
「だから…な、なんだよ。」
「いや。恥ずかしくないのかなって。」
「は?」
って、ヤべ。ここカフェだ。
あまりの言い草に全力で返しちまったけど、周りから野次馬されちまってる。
「はぁ。と、言うわけだから。これでも大事にしてくれてんの。だからあんたとは付き合えない。」
「…」
「もう行くね。それじゃ。」
「あ、あの。イツキさん。」
「なんだよ」
木葉が席を立って金置いて帰ろうとしてんのに、今度は俺に用か?
なんだよ、視線痛ぇから帰りてーのに。
「俺、本当に日暮が好きだったんです。入学した時からずっと。」
「え、そうなの?知らなかった。」
「正直、俺すげーモテるから調子乗ってたんです。話しかければ付き合えるって。でも、日暮は何話しかけても”ん”しか返ってこなくて。」
「木葉らしっ。」「想像つくな。」
「うるさいよあんたら。」
それきっと話聞いてねぇぜ?
興味のねぇ”ん”だろ?
「なのに…いつの間にかイツキさんと知り合ってて。あなたとはちゃんと会話できてて。…すげぇ悔しかったっす。」
「苦労したけどな。だからなんだよ?」
「本当言うなら、まだ諦めきれません!!」
「はぁ?」
こいつ強情だな。
俺の嫁になるってフラれてんのに、何言ってんだか。
「それだけっす…俺、帰ります。」
スタスタスタ。って俯いて行っちまった。
それだけってなぁ。
「いやぁ、モテるねぇ木葉。」
「嬉しくないな。興味ないし。」
「バッサリしてるねぇ。イツキ、もう油断しちゃダメだからな!!」
「っはぁ…。分かってるっての。」
また無表情に戻ったけど、想われてんのが知れてよかったのか?
卒業まで気ぃ抜けねぇな。
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