第29話鬼とJKとパパ

「のう木葉、聞いてもよいか?」


「なに」


夜も明けて今はお昼。


昼食も取ってタヌキを抱えながらソファで本読んでたらいきなり質問がきた。


左手を頬に当てて”?”って首傾げてる。…可愛い。


「木葉と同年代の人間は皆、学校とやらへ行ってると聞いたが木葉は行かんのか?」


「…」


「ヤシチ、その話はなしだ。」


「??」


鬼がペチッて軽くタヌキを叩いて黙らせる。


もしかして気を使った?別にいいのに。


でも学校かぁ…そうだよなぁ。


「そろそろ行かなくちゃか。」


「無理して行くこともねぇだろ?ろくな事ねーぜ。」


「いや、いいよ。私もそろそろ行かないとって思ってたし。」


「そうなのか?まぁ、、ならいいけどよ。」


あの事件(?)からもうだいぶ経ったし。


皆盛り上がりも冷めてるだろうと思うし。


仕方ない、行くか。


「なにやら事情がありそうじゃの?わいも行ってやるぞ!」


「は?何言ってんの?」


「世話になってるんじゃ、護衛くらいやらねばのう!」


…キラキラって目を輝かせて私を見あげてる。


あ、行ってみたいってだけね。はいはい。


まぁタヌキいた方が心強いだろうけど。


「バカ言ってんじゃねぇヤシチ。お前は俺と留守番だ。」


「なぜじゃ?木葉も気軽に話せるわいがいた方が心強いじゃろ?」


「そりゃまぁ。でも入校手続きとかあるから…」


ーprrr.prrr


「わ!?なんじゃ!?」


「私のスマホ。一体誰が…え。」


「どうしたよ?誰からだったんだ?」


パ、パパ??


え、なんでこのタイミング??


てか私の番号知ってたの?


「とりあえず出てみる。ーはい。」


『やぁ木葉、話は聞いてたよ。久しぶりだね。』


「は?え?…あ、そうだ。カメラか。」


そうだこの家、パパがカメラ仕掛けてたんだった。


そうかそれで…


このタヌキの事も知ってるのかな?


『強盗の時は大丈夫だったかな?怪我が無くてなにより。イツキ君にもお礼を言っておいておくれ。』


「…ん。」


『それで本題なんだが。そこのヤシチ君を木葉と同じ学校に通わせようと思う。』


「え?できるの、そんな事。」


『はっはっはっ!当たり前じゃないか!木葉、この機会にパパがいい言葉を教えてあげよう。』


いまさら強盗の時の話持ち出してきて遅。とか思ってればパパ、すごく上機嫌にいい言葉を教えてあげようって。


なんだろ。あまりいい言葉ではなさそう。


でもこんなにパパと話すのも珍しいからきいてみようかな。


「…一応聞いておく。」


『世の中金だよ。それじゃ後はパパに任せなさい☆忙しいから切るぞ〜。』


ープツン。


ツー…ツー…ツー…


…。


とんでもねぇ父親だ。


「とんでもねぇ父親だな。」


「同じこと思うな。」


「これは考えても仕方ないぞ。じゃが面白い父上じゃな、木葉。」


うーん。って3人でスマホ見つめて暫く硬直。


娘になんて事吹き込むんだこの父親は。


「まぁいいや。よかったねタヌキ、これで学校行けるよ。」


「だったら俺もっ!!」


「何言ってんのジジイ。キツいって。」


「扱いの差!?エグくねぇ!?」


「さてと。任せろって事は追って連絡来るんだろうからそれまではゆっくりしてようかな。」


キーキー騒ぐ鬼をシカトしてまたタヌキを抱え直す。


ふぅー。と一息ついたところでまた私のスマホが震えた。


ーprrr,prrr


「…パパだ。」


「伝え忘れかのう?」


「出てみるか。ーはい。」


『やぁさっきぶりだね木葉。入校手続き終わらせたから明日にはヤシチ君の制服届くよ。それじゃ、学校楽しんできな。ープツン』


…早くね?


いやいやいや。


早すぎない??


「なんでお前の親はぶっ飛んでんだよ。しかも両親とも揃って。」


「知らないって。私もこういう人だって知らなかったし。」


「そうなのか?木葉は親と仲良くないのか?」


「そういうわけじゃない…と思う。たぶん。」


「すげぇ曖昧。手続き終えたってなぁ…はぁ。ヤシチ、迷惑かけんなよ。」


「な!わいは誰にも迷惑なんぞかけた事ないわっ!!」


「俺にかけてんだろ、多大な迷惑を。それと木葉」


「なによ。」


「くれぐれも人を殺すなよ。」


「お前は私をなんだと思ってんだ。」


ポンって肩に手を置いて真剣に話してきてるけど。


コイツが私をどう見てんのか理解したわ。


てか殺るなら絶対1号はあんただってのに。


あれ?なんか前にも似たようなこと言った気が…気のせい??


ま、いーや。


「明日から一緒に行こうか、タヌキ。」


「うぬ!木葉はわいが守るぞ!」


「うんうん頼もしい。どっかのアホ鬼とは大違いだ。」


「それは俺の事か!?」


「以外に誰がいると?」


「そうだけどっ!なんでだよ!?」


んがぁってショック受けてるけどしーらない。


明日はちょっと楽しみかも。

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