第30話鬼とJKと変化した朝

「ぼへぇ〜…」


「ほれ木葉、久しぶりの早起きだからって顔が締まらなすぎだぜ。」


「やっぱ行くの止めようかな。めんどくさい。」


コト、コトって置かれていくいつもの朝食を見つめてまだ開ききらない目をこする。


今日から学校行くとか言ったけどめんどいなぁ。


そりゃ半年も休んでればねぇ。


「バカ言うなって。つーかお前、単位足りるのか?」


「一応。心のケアって事で提出物出せば欠席扱いにしないって言われたし。」


「そうなのか?でもそんな提出物いつの間にやってたんだよ?」


「企業秘密。まぁそりゃね、担任だったやつの悪事まで盛大にバラ撒いたからそれなりの譲歩ってやつよ。」


ズズズ…って作ってもらったお味噌汁飲んでふぅ。と一息ついたらなんだか頭が起きてきたみたい。


学校にも今日から行くって言ってるし行くしかないんだけどさ。


めんどいなぁ。


ドタバタドタバタ!!


「木葉!見てくれわいの制服じゃ!」


「ん。似合う似合う。」


「本当に思ってるか?てか見てねーだろ。」


「細かいなぁ。本人喜んでんだからいいんだよ。」


わっはっはっ!わっはっはっ!ってクルクル回って大はしゃぎしてるわ。


そんなに嬉しいの?制服が?


謎すぎる。


「相変わらず冷めてんな。おいヤシチ、お前も食べちゃえよ。学校だろ」


「む?おぉそうじゃの!いただきます!」


「食べたら行くよ。私が付き添いなんだから。」


「うむっ!」


ガツガツガツガツ!ってすごいスピードでご飯が消えていく。


ダイ○ンも驚きの吸引力。


もしかして最先端掃除機でもお腹につけられた??


「慌てて食うなっての。ほら、2人とも。」


「…なに?コレ。」


「なにって、弁当だろ?学校なんだから。」


「…。」


ズイって目の前に出されたピンク巾着と紺色の巾着。


鬼が当たり前みたいに容易してくれてたのお弁当なんだって。


お弁当…か。


「いらなかったか?」


「いや…なんか。普通の家庭のお母さんみたいって言うか。その…」


「誰がお母さんだ。」


「お弁当…初めてなの。なんか受け取っていいのか分かんない。」


「はぁ?なんでだよ。お前らのために作ったんだぜ?素直に受け取れよ。」


ポンポン。って頭撫でてポスンと私に巾着に入ったお弁当を渡してきた鬼。


二ッて笑っててすごく満足そう。


お弁当かぁ。お弁当。


これが皆と同じ朝なのかな?


お母さんがお弁当作ってくれて渡してくれて…それ持って学校行ってお昼に食べる。まぁうちでは鬼だけど。


なんだかこそばゆい笑


「…ん。ありがとう。」


「おう!ヤシチ、食い終わったか?」


「うむ!木葉、早く学校へ行こう!」


「そんな楽しい所じゃないけどね、学校って。まぁいいや、早く準備して行くよ。」


「楽しみじゃのぉ、学校!友達100人出来るんじゃろ?なにしようかの!」


「純粋か?私が汚れすぎただけ??」


「いや、コイツがバカなだけだ。おいヤシチ!皿は片付けて水に浸てから行けよ!」


「お母さん。」


世話の焼ける!とか言ってるけどやってる事がドラマで見るお母さんなのよね。


なんて言うか性格もだけど、性別からして鬼は間違ったのかもしれない。


母性本能の塊じゃん。


「イツキはお母さんになるのか?」


「ならねぇよっ!!そもそも性別ちげぇだろ!?」


「そうか。去勢予約入れとくよ。鬼だけどきっと動物病院で受け付けてくれるから。」


「去勢って…取らねぇからな!?今までで1番恐ろしい事をやろうとすんなっ!!!てかならねぇって!!」


いぎゃぁっ!!て屈んで離れてった。


そうか、結婚控えてんのに取っちゃダメか。


じゃぁシリコンか…?


「性転換手術の費用は…」


「やらねぇし望んでねぇ!!もういいから早く行け2人とも!忘れ物はねぇな!?届けねぇからな!!」


「見事な母親ぶりじゃのぉ。」


グイグイ押して玄関まで連行された。


はぁ…行かなくちゃ。


「母の日のプレゼント、期待しといてよ。」


「せめて父の日にしろ!!ったく。気をつけて行けよ、2人とも。ヤシチ、ちゃんと木葉についてろよな。」


「分かっておる!任せておけイツキ!」


「おーよ。それと木葉」


「なに。殺るなら1号はあんたよ。」


「なんで俺!?ちげぇよ!その、ダメなら帰ってこいよ。待っててやるから。」


「!」


「とりあえずの行ってらっしゃいだ。」


トンって背中押してきた鬼の顔はちょっと不安って書いてあるみたい。


これじゃまるで過保護な父親だね。


「…ん。行ってきます。行こうタヌキ」


「うぬ!行ってくるぞイツキ!」


ブンブン元気よく手を振るタヌキ引っ張って玄関の扉を閉めた。


さ、半年ぶりの学校へ行かなくちゃだ。


―――


「木葉のやつ、最近ちゃんとありがとうと行ってきます言うようになったよなぁ。」


嬉しそうにニマニマ笑う鬼だった。

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