第26話鬼のお迎えとJK

もぐもぐ


ムシャムシャ


「ガツガツガツガツ!」


「…よく食べるね。」


「まだガキだからな。」


3人揃ってご飯食べていればタヌキのがっつきが半端ない。


そんなお腹すいてたの?ってくらいめちゃくちゃ食べる。


なんか初めて会った時の鬼みたい。


「ふっ。」


「!?どうした木葉、具合でも悪いのか?」


「なんでよ?」


「お前がそんな顔で笑うって珍しいからだって。なんかあったのかよ?」


そんな顔ってどんな顔?


たしかに懐かしいなぁとは思ったけど。


てか私にだって普通に笑う時くらいあるわ。


「こんなにがっつくとこ見てると初めてあんたを見た時を思い出すなって思っただけ。」


「は?」


「菓子パン1つにすごいがっついてたじゃない。」


「…よく覚えてんな、そんな事。」


口をへの字にしてそっぽ向いちゃった。


さすがに一緒にいて半年経つとコレが照れてるだけなんだって分かるようになったな。


最初の頃は謎にそっぽ向かれて翌日から練りからしの炊き込みご飯にしてやろうかと思ったけど。


「印象深かったから。ところでこのタヌキはなんでここまで来たの。」


「あ、そうだ。どうしたんだよヤシチ。お前だけが里から出るって何かあったのか?」


「ハムハムハムハムッ!ごっくん!そうじゃった、ワイはイツキを迎えに来たんじゃ。」


「迎え?この鬼を?」


うぬ!って頷きながら食べてる。


迎えって…沢庵で追い出されてたのに?


沢庵…


「くす。」


「お前今俺が追い出された理由思い出したろ。」


「別に?てか沢庵太郎の冤罪は晴れたってこと?」


「思い出してんじゃんっ!!なんだよ沢庵太郎って…」


ぐっぬぬだって笑


でもそっか、迎えか…。


まぁ、期間限定の同居人だって事は理解してたし。


いつか帰る事もちゃんと分かってたから…


「…もぐもぐ…」


また…1人か。


まぁ前の生活に戻るだけだし。


少しすればまた慣れるよね。


「…ヤシチ、長に言っとけ。」


「なんじゃ?」


「俺しばらく帰んねーって。」


「はぁ!?なんでじゃ!!里はお前がいなくちゃ守り手が足りんのじゃぞ!?」


「なのに沢庵で追い出されたのか。やっぱり嫌われてたんじゃ??」


「ちげぇよ!ったく。先に俺を追い出したのそっちだろ。だから暫く戻んねぇ。」


戻らねぇって、できるわけないでしょ。


迎え係まで出されてるのに。


駄々っ子か。


「駄々っ子めが!!なぜじゃ!?里に戻ればお前もそろそろ婚姻じゃろ!?」


「え?そうなの?」


「年齢的にな。別に許嫁がいるとかそんなんじゃねぇし。」


「じゃがお前の実力と立場なら引く手あまたなはずじゃ!!」


「そんな偉かったのかお前。」


「お前って!?」


これは意外。沢庵ごときで追い出されてるから下っ端かと思ってた。


それなら尚更戻った方が…


「とにかく。俺はまだ戻んねぇ。」


「なんでよ?モテ男のリア充め。」


「僻みか?はぁ。約束したろ、お前と。」


「??」


「半年前。お前がぶっ倒れた時だよ。」


…まさかあの1人にしないって約束、本当に守ろうとしてる?


バカじゃん…


「婚期逃すよ。」


「鬼の一生は長ぇ。そのうち出来んだろ結婚なんか。つーわけで、明日帰れよな。」


「なぁ…っ」


って驚きながらも箸は止めないんだ。


食い意地は一人前じゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る