第24話鬼とJKと…??

それは朝から起きた。


ーピーンポーンー


「誰だろ…おーい鬼ー。」


「あ?なんだよ?」


「客人。」


「…。」


クイックイッて人差し指で玄関の方を指さして合図してれば鬼の口が一になった。


なによその不満ですって顔。


「ほら、早く。」


「おま、俺メシ作ってんの見えねーのかよ。」


「見えてるけど。私の本、今いいとこなんだよね。」


「んが!?それだけか!?」


「うん。行ってらっしゃい。」


「お前なぁ…」


しょーがね。って呟いて結局玄関向かうのよね。


文句言いたいだけ?まさか反抗期?


「下僕1号のクセに生意気な。」


まぁ今回はいいか。ちゃんと玄関行ったし。でも次からは練りからしでも鼻に突っ込んでやろうかな。


さ、早く本の続きをーガッシャァァン!!ー


「!?」


なに、今の音!?


とんでもない音が響いた!!なにか割れた?


玄関に割れ物なんて…


「まさか…」


1つだけ置いてある。割れ物。


最近あの鬼が買ってきた花の飾られた綺麗なヒール型の置物。


思ったより可愛くて好みだったから玄関に飾ってたんだ。


まさかそれを割って…?


パタパタパター


「ちょっと鬼、今の音なによ?」


「げっ!?木葉!?」


「む??なんじゃ、女子おなご?」


「なにそのちっこいの。」


なんか玄関でアワアワしてる鬼とキツネ…?犬?みたいな顔立ちしたフワッフワの子供がいる。


たぶんだけど、アレは妖怪??


まぁそれは一旦置いとくか。


今は音の正体を暴かなくちゃ。


「ちっこいのとは失礼だぞ!!わいはタヌキ妖怪のヤシチ!!人間の女子が頭が高いわ!!」


「おいバカやめろヤシチ!!死にてぇのか!?」


「むむ?なんじゃイツキ、あんなか弱き女子に恐れをなしておるんか?」


プークスクスて。


うわぁ、なんて生意気なの??


こういうガキ嫌いなのよね。


「ちょっと鬼、さっきから何してんの?」


ーブミ!!


「ぶぎゃぁ!?」


「音の正体は何かって聞いたんだけど。」


ーゴーリゴリゴーリゴリ


「うぐっ!?ふぐ!?やっ、やめないかこのっ!!ぐふ!!!」


「あー…」


踏み潰してそのままクッキー生地を延ばすみたいにゴロゴロコネてたらなんか聞こえるわ。


てかこのチビ、タヌキなんだ。


たしかに踏み心地はフニフニでいいな。


「たっ、たすけっ!!ぐっふぉっ」


「なぁ木葉、その辺に…」


「え?なに??何も聞こえない。」


「あー…。うん。謝れヤシチ。勝ち目はねぇ。」


「イヤじゃ!!なんで人間なんぞにそんなっ」


「んー。懐かしい。どっかの誰かにも初対面で言われたなぁ。」


「うっ。」


ゲシゲシ!ゲシゲシ!!


って踏み潰し続けたら下からずーっとやめろー!って聞こえてくる。


やめろ?やめて下さいでしょ?


「人にモノをお願いする時の言い方は習わなかったのかな。」


「人間の女子なんぞにっ」


「じゃぁやめない。いいよね?不法侵入されてるし。」


「いやぁぁぁっ!!!」


「容赦ねぇ…」


さて、いつやめて下さいって言うかな。


「分かった!!言う!!やめて下さい!!ほら!!」


「はぁーい、いい子ですねーついでにごめんなさいは?」


ーーバッッチィィン!!


「がふっ!?ご、、ごめんなさいぃぃぃっ!!」


あーあ、泣いちゃった。


上から目線すぎるから拾い上げてほっぺ一発叩いただけなのに。


ま、いっか。謝ったし。


「それで?さっきの音は…。…。」


「え、えっと…あのよ!新しいの買ってくるからそんな怒るな!な??」


「誰、割ったの。」


「イツキじゃ!!イツキが割ったんじゃ!!」


「あっ!お前またっ!!」


あの割れた音、やっぱりヒールの飾りだ。


めっちゃ粉々。


気に入ってたのに。


「へぇ?鬼が?」


「ち、ちげぇ!!断じてちげぇ!!」


「…ニッコリ。ねぇ、タヌキ。ちょっとおいで」


「ひっ!!い、いやじゃ…」


「お・い・で。」


「ガクガクガクガク」


すごい震えながら私の足元まで近寄ってきた。


なによその魔王でも見るかのような目は。


失礼しちゃう。


ガシ!


「本当は?誰がやったの?」


「イツキ!!」


ズコ!「正直に言え!!バカが!!」


「ふぅん??そーなんだ。」


ニッコリ笑ってタヌキ持ち上げて。


縄でグルグル巻にしてからリビングに向けて歩き出す。


鬼が私に嘘つくと思えないからこのタヌキが嘘ついてるのは分かってるんだよね。


さて、どう煮てやろうかな。


―――


「南無阿弥陀仏…」


唱えるしかできない鬼であった。

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