第21話鬼とJKと母

今目の前には出来たてのご飯が並んでる。


「もぐもぐ」


「むしゃむしゃ」


「もぐもぐ。」


それを私と鬼、ママで重い空気のまま食事中。


いや、本当に重い。


鬼もピリピリしてるしママは戦闘態勢だし。


帰ってくるなら連絡してくれれば鬼を隠しといたのに。


パパは居候いるの知ってたみたいだけど…


ほんの数分前が衝撃だったな。


ー少し前。


「ちょっとパパ!この子はなんなの!?なんでうちにいるのよ!」


ケータイに向かって怒ってるママ。パパはHAHAHAと笑ってとても落ち着いている。


そんな様子もママを逆撫でるみたいで余計怒ってた。


『その子はイツキ君と言ってね。木葉が拾ってきた居候だよ。』


「なんだこれ?すげー血の繋がり感じる言い回しだな。」


「私が拾ったんじゃなくて餌やったら懐いたんだけどね。やっぱ野良に餌付けはダメだったか。」


「親子の証明されてよかったなお前。」


証明もなにも親子だけどね。


ママはなんで教えてくれなかったのかってまだ怒ってる。


「拾ってきたっていつから!?嫁入り前の娘しかいないのになんであなたは悠長なのよ!?」


『半年ほど経つかな?イツキ君が来て。大丈夫、全部カメラで監視してたけど彼はなにもしてないよ。』


「殺られてた方だしな。」


『あっはっは!たしかにね!いやぁあの見事なドロップキックは最高だったよ!』


「お前、鬼の血筋か?」


「人間だって言ってんでしょ。」


ドロップキックって、それも見られてたんだ…個人情報全部筒抜けだったみたい。


なんかヤダなぁ監視されてるの。


『でも、あれだけ派手に殴られてもこの子は1度も木葉を殴らなかった。』


「ーっ。だとしても年頃の男女が同じ屋根の下なんて…」


あ、パパが急に真剣な声だすから、ママちょっと怯んだみたい。勢いがスピードダウンしたな。


『いいじゃないか。この半年襲ってもないぞ?それにママ、木葉への送金忘れてたろ。』


「…あっ!!」


ハッハッハって笑い事なの?パパ。忘れられてたのも衝撃だけどさ。


まぁ私は送ってくれればどっちのお金でもいいんだけど。


『この半年は私のお金で2人を養ってたんだ。無駄遣いもしてないし、君に実害もないだろ?』


「…」


『もう少し様子を見ようじゃないか。私達も家に帰ることなんて年に数回なんだから。』


ーー


そう押し切られて腑に落ちないって顔のまま、ママは鬼を睨んでる。


そのままの空気でご飯作り再開したからご覧の通りの空気の悪さだ。


すごく逃げ出したい。


鬼おいてそのままトンズラしたい。


ご飯食べたら逃げよっかな。


ーガシ!


「!。なによ((コソ」


「お前1人だけ逃がさねーかんな。」


「…なぜ分かった。」


「お前のやりそうな事だからなっ!!てか当たるのかよ!?」


いつもは正面に座ってる鬼もさすがにママの隣は嫌なのか今日は私の横で食事中。


そんな位置で逃げよって考えを見透かされた私はガッシリ腰をホールドされてしまった。


クソ、勘のいい鬼は嫌いだよ。


「ちょっと、何話してんのよ」


「なんでもねーよ。食ったなら片付けろよな。食器洗いは木葉の当番なんだからよ。」


「木葉、木葉って少し馴れ馴れしくないかしら?人の娘たぶらかして。」


「たぶら…??別に惚れてないけど?」


「じゃぁなんで追い出さないのよ。変に庇ってやらしいったら。」


「んー。」


「じー。」


なんで、かぁ。


深く考えてなかったな。


追い出さない理由…


「便利だから?言う事聞く下僕だし。」


「なんじゃそりゃ!?」


はが!?て驚いてるけど今更驚くことないじゃない。


あぁ、もう。空気悪いからご飯食べて早く部屋行こ。


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