第20話鬼とJKと襲来の母
この鬼と知り合ってそろそろ半年になる。
私にしてはかなり長い間、誰かと一緒に過ごしてるなって感心するんだ。
「おーい木葉ー。」
「なに」
「そろそろボディソープなくなるぜー。」
「ん。買っとく。」
こんな感じでもうコイツとの共同生活が当たり前になってきちゃった。
なんか悔しいな。
でも退屈じゃないからいいのかな。
なんて考えて夕飯を作る鬼を見る。
癪だけど退院祝いに作ってくれたご飯、すごく美味しかった。
だからご飯は鬼の担当で私は洗濯と食器洗い担当。
掃除機かけは交代制に変わっていった。
「じー。」
「なんだよ?」
「なんでも。それよりさ」
ピーンポーン。
…?
会話を邪魔するみたいに、久しぶりに鳴った我が家のインターホン。
でも今は夜の20:15。こんな時間に誰が訪ねてきたんだろ。
「誰だ?こんな時間に。」
「私出る。」
「やめとけって。危ねー奴だったらどうすんだよ?俺が出てくらぁ。」
「…。じゃぁ任せた下僕1号。」
「この半年で下僕から昇格しねーのなんで。」
はぁーぁってため息ついてキッチンの火を止めてからスタスタと玄関まで歩いていく。
静かに閉められたリビングの扉をみて”慣れたもんだよなぁ。”って一人言が零れた。
だから鬼が戻ってくるまで本でも読んで待ってようかなって、立ち上がりかけた体をまたソファに戻したんだけど。
すぐに鬼からお呼び出しがきた。
「おーい木葉!!ちょっときてくれー!!」
「はぁ。なによまったく。玄関開けるだけで大騒ぎして…」
めんどくさいなぁ。
こんな大声じゃ聞かなかった事になんて出来ないし。
なんで私が…
ドスドスドスドス!!
「?なに、この足音。」
まるで怒ってますと言いたげなドスドスした歩く音。
しかも何かトラブってるっぽい。
女の人の声と制止する鬼の声がちょっと喧嘩腰。
一体誰が来たって言うの?
「ねぇ鬼。静かにしてくんない?近所迷惑。」
「木葉!?あんたこの男誰よ!?」
「ー…ママ?」
「本当にお前の母親か?」
…お、驚いた。
私が知ってるママより髪も伸びてて色も変わってて。一瞬、ママって分からなかった。
そして行く時は重そうなスーツケースだったけど、今はなんだか軽そう。
一時帰宅?
でも連絡なんてなにも…
「木葉聞いてるの!?あんた親がいないからって男連れ込んで…っ!学校にもまた行ってないってね!?まったくもう、なにしてんの!?」
「え、いや。一時帰宅?」
「そうよ必要な物取ったらまた出る予定だったの!それなのにこんな…」
「なんだよ。」
あ、鬼がムッスーてしてる。
そりゃいきなりこんな怒鳴られたら不服か。
私だってここまで怒鳴られたことないから驚いてるし。
「なんだよですって?はぁもうほんっっと信じらんない。パパに連絡して警察呼ばなくちゃ。」
「ちょ、ママ警察って…彼は友達なの。心配して様子見に来てくれただけだから。」
あ、ダメだ。話聞いてない。
速攻パパに電話して話し始めてる。
てかパパと連絡取れるんだ…
ママ以上に見てないからどんな顔かも朧気だな。
「おい木葉、このおばさん本当に母親か?」
「まぁね。そんな疑う?私はママに似てるって言われてきたけど。」
「あー…顔はたしかに言われてみりゃそうだな。性格は全然ちげーけど。」
「そこまで似たくはないな。それよりもどうやってママを納得させるか…」
不審者がどうとかこうとか。
すごい騒ぎ立てて本当に警察呼ばれそう。
マズイな…こんなに怒ると思わなかった。
「はぁぁ!?なんですって!?」
「ビクッ。ど、どうしたのママ」
「ちょっと待って!!」
「え?」
「なんだ?どうした?」
ケータイを無造作にテーブルに置いて観葉植物をゴソゴソといじってる。今度は一体なに?
「あ、本当にあった。」
「ん?…隠しカメラ?」
「マジかよ!?いつからあったんだ!?」
少し落ち着いたのか、ママがはぁ〜って脱力して座り込んでる。
テーブルからはさっき無造作に置かれたケータイ越しに、これまた久しぶりのパパの声。
なにがなんだか…
『久しぶりだね木葉。聞こえるかい?』
「あ、うん。このカメラなに?」
「こっちは性格木葉だな。」
『はは!それはどうもイツキ君。娘が世話になってるよ。』
「世話してやってる方。」
「ふがっ」
パパって、こんな声だっけ?
なんだかいつも通りの夜が騒がしくなっちゃったな…。
事態が早く治まればいいんだけど。
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