第17話鬼と退院のJK

あれから。


私は無事に完治して退院した。


そして今は家に向かって帰宅してるところ。


「病院って暇疲れするのね。やる事なさすぎ。」


「そりゃお前、病人にやる事なんか与えるかよ。」


そりゃそーよ。


だって病院だもの。


分かってるけど当たり前のこと言われるとなんかムカつくな。


「ん?あ、ここ…」


「あ?あぁ、俺が倒れてた神社か。」


見慣れた道を通って歩いていれば、いつの間にか暫く来なかったあの寂れた神社の前だ。


そう言えばこの鬼が来てなんだかんだ1ヶ月過ぎるのか。


とても濃い1ヶ月だったなぁ。


「クーリングオフって、神様は受け付けてるのかな。」


「それは俺をって事か!?」


「以外に誰がいると?」


「そんなに俺が傍にいるのは不満なのかよ!?」


ふが!?て変な声出して驚いてる。


そこまで不満じゃないけど。


そう言えば、こいつはなんで里を追い出されんだっけ?


「不満ではないけど。下僕1号はなんで里を追い出されたのよ。」


「せめて友達にしねぇ?下僕って。」


「2号は未定。」


「1号だけで十分だろ。」


「いーから質問の答えは?」


話がそれた。


私はコイツが追い出された理由を知りたかったんだ。


なんかすごく下らない理由で追い出されてそうってなんとなく想像つくけど。


さすがに1ヶ月一緒にいるからね。なんとなーく気になる。


「追い出された理由って、お前笑うなよ。」


「まぁ、うん。」


「…たくあんだよ。」


「…は?」


「里の長のたくあん。俺が盗ったんだろって。証拠もねぇのに決めつけて追い出された。」


…たくあんって、あのたくあん??


沢庵と書いてタクアン?


本気で言ってるの??


「想像のウン100倍もくだらな過ぎて笑いすら起きない。」


「やめろよその目!!本人が1番くだらねぇって思ってんだからよ!!」


「それが理由で追い出されたなら、あんた里で嫌われてるわよ。」


「なんで!?」


「いやだって…沢庵で追放とか草も枯れる。」


「うぐっ。そうなんだけどよ…。」


くっっっだんな。


それで追い出されて1ヶ月、お風呂も入れずご飯も食べられずで過ごしたの??


割に合わなすぎる。


「私今度からあんたの事たくあんって呼ぶわ。」


「やめろよクソだせぇから。」


「他人をこんな哀れに思うなんて人生初。貴重な経験をどうもありがとう。」


「嫌なありがとうだな。」


うぐぅって呟く鬼をチラっと見れば周りの景色を見ながら歩いてる。


この前私に”いなくなんねぇ!”とか大口叩いてたクセに恥ずかしくないのかな?


あ、そんな事してるうちに家に着いた。


さてさて、まずは洗濯物回して…


ーガチャ。


「ただいー…な、なにこれ?」


「…退院祝い。」


「…」


驚いた。


玄関開けてまっすぐリビングまで行けば、ケーキとご飯が並んでる。


誰が作ったの?これ。


「手ぇ洗って席つけよ。昼だけど食っちまおーぜ。」


「誰が作ったの?」


「俺。」


「マジでか。」


「味は保証しねぇけど。退院オメデト。元々ガリガリなんだからきちんと食えよ。」


「痩せ型と言え。筋肉ゴリゴリのゴリラ鬼。」


「俺は普通だ。ったく。」


ニカッて笑ってソファに倒れ込む鬼。


誰かにご飯作ってもらうって、初めて。


なんか私この鬼が来てから色々な初めてを経験してるなぁ…


「〜っ。て、洗ってくる。」


「おー。早くしろよな。」


「ん。」


今顔、少し赤いかも。


早く出て顔洗って通常に戻らないと。


パタパタパターパタン。


―――



「…喜んでるみてーでなにより。」


口を結んで喜びを噛み締める鬼であった。

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