第16話鬼と口論するJK

頭がフワフワする…


私、どうしてたんだっけ?


「ーっ…??」


なんだろ、酷く体がダルい。


腕1本動かすのも億劫になる。


「…ここ、どこ。」


もう朝なのかな?


って寝ぼけた頭で考えてたら、だんだんハッキリしていく視界に映ったのは知らない部屋。


真っ白な空間で、一瞬”あれ?私死んだ?”って間違えたじゃない。


でもこの点滴…それにこのベット。


「病院?なんで…」


何があったんだ?


ーガラ!


「?…あ、鬼。」


「あ?あ!!木葉!!」


「うるっさ…どっから出してんのよその声量…」


よっこいしょ、っと。


はぁ、体起こすのもダルい。


何があったの?これ。


なんで私が病院のベットで寝てんのよ。


「お前っ」


「ねぇ鬼。どうしてーっ!」


ー…びっくり…した…


体が何かに包まれたような感覚がして、私の顔のすぐ真横には鬼の頭があって。


上半身だけ起こしてる私をグッと強く鬼が抱きしめてる。


どうして?


え。なにごと?


「お前っ、お前!!」


「え、いや。え??落ち着け変態。離して痴漢。」


「どこも異常なさそうだな!!その毒舌!!」


「異常あるのあんただから。寝起きの女の子に抱きつくなんて…お巡りさん呼ぼう。」


「寝すぎだバカが!!お前、熱出して運ばれてから2週間経ってんだぞ!?」


…。


私は時空移動の超能力でも手に入れたかな?


え?


熱出して倒れて??


記憶にございません。


「悪い政治家みたいな思考になった。どいうこと?」


「覚えてねぇのか?2週間前、お前がベットで頭抱えてウンウン唸ってたから救急車呼んだろ。」


頭抱えて???



あ。思い出した。


「そうだ。頭痛かったんだ。倒れたのか私。」


「おうよ。熱下がったのに起きねぇしよ。このまま死ぬのかと思ったぜ…」


はぁーぁ…って深く息を吐いて、腰が抜けたみたいにドカ!とパイプ椅子に座り込んだ鬼。


死んだと思ったって、私が死んだとしてコイツになにか不利になることあんの?


意味わかんない。


「なんだよその顔。」


「私が死んでもあんたに迷惑はかからないでしょ?」


「はぁ?」


あ、怒った?


怒気のこもったはぁ?だ。


生意気だな。


「だから。なんで私が死ぬ事に対してそんな敏感なのよ。住処は他にも見つけられるしあんたが困る事は…」


「…なんだよ。」


「…。」


マジギレじゃん。


雰囲気がいつもと違いすぎる。


なんで?


私、本当の事しか言ってないよね??


「困る、困らねぇじゃねぇだろ。」


「なんでよ?メリットなくない?」


「んっのバカが!!お前が死んで悲しむ奴がいんだよ!!」


「どこに?いないわよ、私には。」


見たところ入院中の服とかは鬼が揃えてたみたい。


乱雑に入れられた物達が”手慣れない奴がやりました”って言ってる。


て事は。


パパやママは私が入院して意識なくてもお見舞いとかは来てないって事よ。


…いないわよ。


私がいる事もいない事も変わらない。


無駄な同情ね。


グイ!!


「ー!?」


「ここだ!!」


「いった。首折れる。」


「うるせぇバカ!!俺はお前が死ぬ事を望んでねぇ!!」


「ーっ。」


「ずっと1人だったんだろ!?でも今は違ぇ!!今はっ…俺がいんだろ。」


ふーっふーっ。って唇噛み締めてすごく悔しそうに震えてる。


なんでよ?あんたがそんな顔する必要ないでしょ?


顔を無理やり持ち上げられたから首が痛いじゃない。


でも、なんでだろ。


それよりもずっと、胸の奥の方が痛い。


「あんただって…そのうちいなくなる。」


「ならねぇ。」


「なるよ。里に帰る時が来る。だから中途半端に私に関わらないで。」


「帰らねぇ!!帰る時はお前も連れてく!!」


「私は人間よ。」


「中身は鬼より鬼らしいから大丈夫だ!!」


なにそれ、どういう理屈?


すごい自信たっぷりに鼻から息吐いてるけど。


起きたばかりで抵抗できないから調子に乗ってる?


馬鹿なことばかり言って。


「嘘かもしれないじゃない。」


「お前にそんな事したら俺は抹消されんだろ。つかねーよ、こんなくだらねぇ嘘。」


「ーっ。なんの保証もないくせにっ…」


「なっ、わ!?なんで泣くんだよ!?泣く事ねぇだろ!?」


泣いてなんかっ…


「泣いてないわよクソ鬼っ!〜っ。…あ、ありがとう…」


別に嬉しくて泣いてるわけじゃない。どうなるかも分からない先の事なのに、子供みたいな約束を話すんだから呆れてるだけ。


それだけよ。


「ーっっ!!!」


「てかいい加減離せこの力加減の下手くそな雑鬼!!起きたばかりで疲れてるのよ、寝る!!」


ペチン!て手を叩き落としたら簡単に離れた。


バフン!て布団に潜ったけどなんかソワソワする!!


てか最初からこうすればよかったわ!


―――


「(今の顔はズリィって…)」


袖で耳まで真っ赤な顔を隠す鬼を、騒ぎに気づいた看護師達が見てニヤニヤしていたのは内緒の話。








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