第15話鬼と起きないJK

木葉の奴が倒れて3日は経った。


「おーい起きろよ木葉。俺暇じゃん…」


いつも通りリビングで寝てたら微かに聞こえたうめき声。


最初は魘されてんのか?って思ってたんだ。


でも1時間経ってもずっと唸ってるから何かあったのか?って覗きにいけば。


めちゃくちゃ汗かいてベットでのたうち回ってた。


体調悪ぃならなんで頼らねぇんだよ。


「っんとによ。今は一緒に住んでる奴いるだろって。俺の耳がよかったから気づけたものを。


人間の何倍も耳のいい鬼だから気づけたんだ。


救急隊員が来た時は意識もなくて顔も真っ青で本当に死ぬのかと思った。


気づかれなかったらどうしてたんだって。


「ゔ…」


「まぁ、なんとなくグレた理由は分かる気もするが。」


こいつの家に転がり込んでもう月の半分以上経つのに親をみねぇ。


この前の学校のトラブルでも一切顔を出さねぇし、今回みてぇに木葉が倒れて入院しても見舞いにすら来ねぇ。


親いねぇのか?って思ったが病院側から親御さんに連絡しましたって言われたからいるにはいるんだろ。


どういう家庭環境なんだ。


「ま…まぁ…」


ぐす…


珍しいよな。木葉が弱音吐くなんて。


寝言だけどよ。


「はぁ…なんだかなぁ。やるせねぇよ。」


いつも無表情で笑う時って言ったら人を貶めてる時くれぇで。


外にも出ねぇ会話だって最近やっとまともに返してくるようになったってのに。


…こいつはどれだけ長い時間、1人でいたんだろうな。


「木葉、辛い時くれぇ頼れよ。俺鬼だけどよ。」


「ぅ…うぅ…」


「恩人見捨てるほど、心まで鬼にできねぇって。お前はできそうだけど。」


いつもならこう言ったら何か飛んでくるんだけどな。


そんでいつも”勉強になってよかったね”って言うんだ。


まるでいつも自分に言ってたかのように同然にな。


「俺は傍にいてやるぜ。人の一生なんか短ぇんだからもっと笑って楽しめって。」


根はいい奴のクセに。


初めて会った時も戸惑いながらも俺に1万渡してきて。


その後も風呂代と服代で簡単に1万出して。


一緒に家に帰ってる時だって轢かれそうな猫がいたら逃がしてやってた。


本当はすげぇ優しい奴だって、見てる奴は知ってる。


「お前起きたら文句言ってやるからな。覚悟しとけよ。」


起きねぇから前髪かき分けつつ顔を触ってみる。普段こんな事したらたぶんナイフ飛んでくるぜ。


点滴でだいぶ熱は下がったと言ってもまだあちぃな。


そりゃそっか。40℃の熱出してたんだ。


よく死ななかったもんだ。


「ん…」


「…泣いてんじゃねーよ。バーカ。」


辛そうに寝息立てて…。。


。。。。


木葉の顔、ちゃんと見るの初めてだ。


なんだかすげぇ…「可愛い…((ボソッ」


…。


……。


落ち着け俺。


いくら顔が可愛くても木葉だぞ。


惚れたら最後、俺は色んな意味で鬼生の終了を悟らなくちゃならねぇ。


何も見なかった事にしろ。


「か、買い出しにでも行ってくるか。」


そうそう。


んで戻ってきた頃には起きてんだろ。たぶん。

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