第10話鬼と忍び込むJK

夜の学校。


そんな事を言えば誰しもが気味悪いと思うかもしれないけど、実際はそんな事もない。


暗くて雰囲気が少し違うなー。ってくらいかな。テレビはやっぱり大袈裟ね。


「小窓小窓…あ、あった。」


「ここから入るのか?俺入れねーじゃん。」


カラカラって音を鳴らして開いた、細身の女の人がギリ通れるくらいの小窓。


1階職員室前の廊下の隅っこにあって、ホコリが凄かったから絶対鍵開けても気づかないって思った。


案の定、ここはノーマークだったみたいね。


「だから言ったでしょ、あんたは入れないかもって。」


「こーいう事かよ。しょうがねぇな、俺は上の窓から入るぜ。鍵開けろよな。」


「?上の窓って…2階になるわよ?」


「?おう。だから開けろよ。」


1階にある部屋は全部施錠されてるから私には開けられない。


2階から学年ごとの教室があって、私の教室は2階だ。


そんなとこにどうやってくるってのかしら。


まさか壁をよじ登って?


「ヤモリか。」


「何を想像した。」


「別に。まぁいいんじゃない?来れたら開けてあげるわよ。」


とりあえずこいつの頭の中は相当ハッピーな奴なんだって事は理解したわ。


さてと、グズグズしてないでさっさと罠を仕掛けて帰りましょ。


バカを相手にしてると私もバカになる。


「先行くわよ。帰りもこの小窓使うから。」


「なんかすげーバカにされた気がする。」


「キノセーキノセー。じゃぁね。」


小窓は締めてっと。


上がり慣れた階段でも薄暗いとそれなりに雰囲気あるわね。見えにくいったら。


「あった、1-A。早いとこ準備してーっっ!!」


「《あ、け、ろ》コンコン」


ひ、悲鳴…あげるとこだった…


え、さっきまでアイツ下にいたわよね??


なんで今、目の前のベランダにいるの?


カラカラー


「なんだよお前、先に行ったくせに来んのおせーな。」


「やかましいわ化け物。お帰りの際はあちらの方角にある由緒正しいお寺へどうぞ。」


「滅しようとしてんのか!?誰があんなとこ行くかバカヤロウ!!」


「なんであんたが先にベランダにいんのよキモイコワイ近寄らないで。」


「そこまで言うか?はぁ、俺は鬼だってずっと言ってんだろ。お前ら人間と同じ身体能力だと思うんじゃねぇ。」


「え?あれマジだったの?」


「嘘だと思ってたのかよ。」


そんな非科学的な事すぐ信じられるかっての。


本当に鬼なんだぁ…


あれ?でもツノなくない?


「角ないじゃん。」


「あるつってるだろ!?見せたら汚ぇから近寄んなって言ったのどいつだ!?」


「あったっけ?そんなの。」


ギャァギャァ怒ってるけどほっとこ。


さてと、私の机はぁ。


「あらまぁ。なんて事でしょう、匠の技によってこんなにも見違えて。」


「は?なんだよ突然。…すげぇな。」


時すでに遅し。


幼稚な悪口が書かれてなんかぐちゃぐちゃ。


教科書一式持って帰っておいてよかったぁ。


「あーあ、決定的瞬間逃しちゃった。ま、いーや。またやるだろうし。」


「平気なのかよ?」


「これくらいで悲しむと思ってるあの子達を心配するわ。」


「本当に相手悪いよなぁ…」


それは同意ね。


こんな稚拙な嫌がらせではなんとも思わないっての。


それじゃ早速。


「前の子の椅子と横の子の机脇。真後ろの私のロッカーと天井のカド…ふふ、完璧。よし!撤収するよ。」


「隠しカメラこんなに一気買いできるとは…金あるよなぁ。」


「そう?」


気にしたことないけど。


さて、持ってきた袋も回収して…


「!。おい木葉、この時間誰もいないんだろ?」


「そのはずだけど。」


「…隠れるぞ」


「は?ちょっ!」


グイッてムリヤリ引っ張られてベランダに出されたっ。


いきなり真面目な顔になってなによ?


てか隠れるってなにから?


「ねぇ」


「しっ。誰か来るぜ。結構な人数だ。」


「?…あ。」


誰か来る?って言うから耳をすませば。本当だ、廊下の方から何人かの声がする。


男の子?ワイワイしてるな。


どこから入ったのか深夜の学校に忍び込むなんてなんて奴らなのかしら。


何しに来たやら。


ーボッボッ


「なに?これ。」


「ここに入られたら迷惑だろ?追い返すぞ。」


この鬼が手をかざしたところに出てきた青っぽい灯り。


人魂?みたいな。昔話に出てきそうなやつが浮いてる。


本当に人間じゃないんだなぁ。


「これは鬼火ってんだ。飛ばせばビビって逃げんだろタブン。それっ。」


フゥって息かけたら飛んでいって。


そのままスゥー…と教室の扉をすり抜けていった。


そして…


ーーぎゃぁぁぁぁ!!!!


「あー。見たかった。」


「言ってる場合か。荷物持ってトンズラするぞ。」


さっきまでワイワイしてた子達のとんでもない悲鳴が響く。


どんな様子が見れないのは残念だなぁ。


まぁ私も見つかる訳にはいかないからしょうがないけど。


てかあれ?あの子達いるなら私、どこから外に出ればいいの?


鬼はさっさと荷物まとめてるけど。


「ねぇ、私外出れなくない?」


「なんでだよ?俺につかまればいいだろ?」


「は?」


よっこらせって私の持ってきた荷物担いで。


ギュッて抱きしめられた。


そのままベランダに足をかけて…


「…なにするの。」


「飛び降りる。」


はっ!?飛び降りーっ


ースタッ


「〜〜っっ」


「降りたぜ、ほれさっさと帰るぞ」


なんて奴なの…本当に落ちやがった。


なんの前触れも許可もなく…


ドベシ!!


「いて!?なんでだよ!?」


「死ねくそ鬼」


「はぁ!?」


もうコイツと出かけるのやめよ。


命がいくつあっても足らない。

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