第5話鬼とちょっと嬉しいJK

ピピー


ピピピピピ!


「朝だぁ…」


眠いなぁ…


今日は金曜日。


学校行かなくちゃ。


めんどくさいなぁ。


「ふぁ…。」


まだボンヤリする頭をフル回転させてリビングの扉を開ける。


いつも通りシーンとした冷たいリビングがあるだけなはずだったのに。


「んがぁぁ。んぐぉぉ」


「うるさぁ。怪獣?」


大きないびきをかいて大の字で転がる不審者を発見した。


え、リビングで寝てたの?


布団もかけないで?


信じらんない。


「よく風邪ひかないわね。あぁそうか、そもそもコイツ神社で死にはぐってたんだった。」


部屋なんていっぱい余ってんだからどこか使えばよかったのに。


なんでわざわざリビングを選んだのか。


「いけない。顔洗ってご飯にしよ。」


朝から疲れるの見ちゃったや。さっさと顔洗ってこよ。


私が学校から帰るまでには居なくなってるでしょ。深く考えるとろくな事ないから放置放置。


「あ、疲れた顔。」


洗面台の前に来て鏡見てみたらゲッソリした私の顔がある。


あの男のせいだ。


警察に突き出すか?


「体格差からしてムリか。アイツデカイし。」


私の身長は158cm。


あの男はかなり大きいから185〜190くらいありそう。


バスケ選手かよ。


身長モンスターめ。


「討伐されればいい。」


「朝からなに怖ぇ事言ってんだよ。」


「あれ?起きたの?」


あらやだ。って口に手を当てて驚いたフリをしてみればまた口をへの字にして頭かいてるあの男がいる。


何しにきたのかな?


「お前がリビング出てく時に起きたんだ。討伐って絶対俺のことだろ。」


「それ以外に誰がいると?」


「お前友達いねーもんな。」


「今すぐ出ていけ不法滞在者」


喧嘩売りに来たんなら言いなさいよ。


受けて立つわよ口喧嘩なら。


心バキバキにして再起不能にしてやるわ。


「そんなキレんなって。顔洗うんだからそこ譲れよ。」


「随分ふてぶてしいな。我が家か。」


「違うのか?」


「違うわ。」


なんて奴だ。


ここは私の家であってあんたの家じゃないってのに。


どうやったらその思考になるのか。


宇宙人だわ。


「それよか腹減った。朝メシ何にすんだ?」


「そればっかね。鮭と卵焼きと味噌汁とご飯。だから?」


「いいセンスしてんじゃん。すぐ準備するぜ!」


「なぜ食べる前提。」


「なぜ食わせない前提。」


嘘だろ?みたいに言われても。


一応鮭は買いだめしてるけどさ。


毎朝同じメニューだし。


「しょうがない。食べたら出ていきなさいよ。不審者」


「どこが不審者だ。」


全部よ全部。


さて、バカはほっといてご飯用意して早く食べないと。


そんで学校の準備して家を出ないといけない。


「朝ごはん先食べてるわよ。学校あるから。」


「おーよ。いただきます言えよな。」


「お母さんか。」


妥当なツッコミして足早にキッチンに行く。


めんどくさいけどあの男のも用意して早く食べちゃお。


時間ギリギリだからマジで急がないとな。


「できた。…いただきます。」


一応ね。見てたらまたうるさいから。


そう、一応。


「あ、ヤバい。もう出る時間だ。」


ふと時間みたらもう家出る時間。


あのアホ構ってたら時間なくなっちゃった。


食べられるだけ食べて早く出よ。


「モグモグモグモグ!ゴックン!食器は帰ってきてから片付けるか。よし。」


バタバタバタ!


「なんだ?もう行くのか?」


「やっと出てきた。出るわよ、時間ない。」


「ふーん。気をつけて行けよ。行ってらっしゃい。」


「ーへ?」


急げ急げって玄関に向かって慌ただしく靴を履いて。


あの男に声かけられたからそっけなく返して。


返事すると思ってなかったけど、今…行ってらっしゃいって言われた??


「え、なんだよ?」


「今、行ってらっしゃいって言った?」


「はぁ?出かけるんだから当たり前だろ?てか行ってきますはどーしたよ。」



「え。え」


「?」


行ってらっしゃい…


初めて言われた。


気をつけても。


人生で初めて言ってもらった。


これはちょっと、、嬉しいかも。


「あ、え、えっと。なんだっけ。」


「行ってきますだろ?」


「ぃ…ってきます…」


「おう。転ぶんじゃねーぞ。」


「あんたじゃあるまいし。そんなみっともない事しないわよ。…それじゃ。」


なんだとコラァ!て怒鳴ってるけど無視。


でもなんか、今日は少しだけ足が軽いな。


少しだけ。気持ちが軽い。


いい事あるかな(笑)


―――


「行ってらっしゃいって、普通だろ?」


とJKが出て行った玄関を見て心底首を傾げる鬼だった。


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