第2話鬼に懐かれたJK
時間が流れるのは早いもので。
あの変な男の子にあった時間からもう夕方だ。
チャイムが鳴って皆が下校やら部活やらで散り散りになっていく。
「私も帰ろっかな。」
帰ったところで1人なんだけどさ。
ママ、今日は早く帰ってくるのかな。
「はぁ。帰り買い物して帰らなくちゃ。」
わいわいと賑わう下駄箱を通り過ぎて校門に向かう。
グラウンドでは授業中とうって変わって、活気ある運動部の声が響いてる。
日常に楽しさを見いだせない私にはこの通りがちょっとだけうざったらしい。
「…今日の夕飯は…なににしよっかな…」
1人で食べるご飯にも慣れた。
朝昼晩ずっと1人だから。
変に友達なんて作ったら大変かも。
だってあの家の寂しさに耐えられなくなっちゃうから。
「…」
「じゃぁ俺唐揚げ希望。」
「どっから湧いて出た。」
だんだんと人の気配もなくなってきた下校途中に朝聞いたような声が図々しくも私に要望を出してる。
なんでいるの。
顔の面厚いわね。
「お前を待ってたんだっての。」
「えぇ…こんなに嬉しくない気持ち生まれて初めて。人生暇なの?」
「俺の事言えるか!?朝から”この世の絶望全部味わいました”みてぇなつまんねー顔してるお前がっ」
「なんて失礼な奴なんだ。てかなんで待ってたのよ。もうなにもあげないわよ。」
「失礼はお前だからな。」
なんて奴だ。
ふてぶてしくも唐揚げ要望してるくせに。
口をへの字にして横に並んできた。
なんか着物?もボロボロで雑巾みたい。
「汚なぁ。」
「本当に人間なんだよな?人の心どうしたんだ?」
「うるさいなぁ。てか並ばないで臭い」
「ぅぐっ。いーんだよ!これからお前ン家行って風呂入るんだから!!」
…
私の耳は上手に機能しなくなったようだ。
それか宇宙人とでも話してる?
あれ?私って日本人よね??
「110っと。」
「ざけんなバカ!!」
ベシ!
「いたっ。これ暴行罪よね?死刑確定ね」
「命の重さを学んでこいよ。ビンタ一発でそんなポンポン他人を殺せるか。」
「チッ。てかそんなベタベタな格好で何日お風呂入ってないわけ?モラルどーしたよ。」
「あ?あー。んー。1ヶ月…か?」
ーズザッ!!
うん、ビックリ。
私ってこんなに早く動けたんだ。
一瞬でこの男との間に距離できた。
「二度と近寄るな不衛生の塊め」
「だから風呂よこせって!!」
「嫌に決まってんでしょ。そんな汚い奴家に入れるか。まずは銭湯にでも行ってくれば」
「そんな金あるならあんな所で干物になんかなってねぇ。」
「朝の1万」
「飯に消えた」
メシにって…
あの1万円を?全部??一瞬で??
信じらんない…
「私はあんたが消えるべきだと思う。」
「どう育てられればそこまで鬼畜になれるんだよ。」
「うるさいなぁ。とりあえず銭湯に行って。そして二度と私の前に現れないで。手切れ金に1万渡すから。」
「マジでか。金持ち?」
んなわけあるか。
一般家庭だわ。
でもそうだな、アレに近づくのはさすがにイヤだ。
その辺の石にでもお札括りつけて投げてやるか。
「んじゃ、ちゃんと受け取ってね。」
「??」
「私のお殺!!」
ービュッ!!
ガツン!!
「いっっってぇぇぇえ!!!!このクソ女が!!なんて事する奴だ!!」
「その汚い手で叩かれた仕返し。それじゃぁね。あ、そのお金で服も買いなさいよ。」
ぬぁぁぁぁ!って悶絶する声をスルーしてさっさと退散。
二度と会いませんように。
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