鬼とJK
ペンギン
第1話鬼と知り合ったJK
毎朝毎朝、私は憂鬱だ。
「木葉〜ママ仕事に行ってくるからー。夕飯はテキトーにね、お金置いてく!」
「…ん。行ってらっしゃい。パパは?」
「パパ?あー、来週には出張から帰ってくるわよ。あ!私も明日から出張だから!それじゃ!」
「…ん。」
バタバタバタって大慌てで出ていくのは私のママ。
今の時代珍しくもない共働き世帯に生まれた私は、仕事熱心な両親とほとんど会話した記憶がない。
さっきの会話でも十分長い方だ。
「私も学校行かなくちゃ。」
めんどくさいな。
どうせサボってもバレないし。
仮病でも使おーかな。
「でもそろそろりゅーねんしそ。はぁ…行くか。」
体がダルいから足が重い。
トボトボって歩いてノソノソと靴をはく。
私は生まれてから1度だって清々しい朝を経験したことがない。
「経験したところでだけどさ。」
しまらない顔で外に出て駅に向かう。
この世の不幸全て降りかかりました?って目で歩くのは日課なんだ。
前にクラスの子に「ペットでも死んだ?」って聞かれたのはいい思い出。
ペットいませんけど?って返ししかできなくて。こんなんだから友達らしい友達もいないんだ。
「事故にでもあって死ねば、生まれ変われるのかなぁ。」
味気ない世界。
淡白な私には丁度いいんだろうけど、何もかもがつまらない。
友達って楽しい?
学校終わった帰り道に見かける同級生達は皆一緒にご飯食べたり遊んだりしてる。
それって楽しい?
「経験したことないや…」
死んだ目で見る空は他の子と変わらない色なのにね。
「…おい」
「ん?」
「お前…食いもんねぇのか」
「うわきったな。」
ぼんやり歩いて空を見上げていれば、私がよく逃げ込む寂れた古い神社の前にいた。
色もすすけた鳥居がなんとも不気味なここは誰も近寄らないから隠れ家に丁度いい。
そんな私の聖地に物乞いする男が這いつくばってる。
いや何事?
どゆこと?
「汚ぇとか言うな。食いもんあんだろだせ」
「お願いの仕方は教わらなかったようだ。お願いしますでしょ?」
「人間にお願いなんかするかよ」
「じゃぁあげない。当然だよね」
そんじゃ。って歩き出す時チラッと見えた顔は前髪が長くてよく分からなかったけど、口をアングリ開けてた。
驚いてるのかな?
見捨てるのかって。
「おい人間!!こういう時人なら助けるだろ!?」
「そんなに優しい世界じゃないのよ。よかったね勉強になって。さよならバイバイ二度と会いたくない」
「そこまで言うか!?ちょ、食いもん!!」
「そんな必死になるなら言いなさいよ。食べ物を恵んで下さいって」
「ぅぐっ」
這いつくばった体制のまま顔だけあげて悔しそうに口を歪めてる。
そんな一言も言えないなんてどんな教育受けてきたのよ。
「言うの?言わないの?」
「クソがっ!!食いもん下さい!!オラよ!!」
「受け取れ敗者」
ーべチン!!
「うべぇ!?なにしやがんだ!?」
オラつきが消えないから後で食べよーと思ってた菓子パン、顔面に投げつけてやったわ。
いい音させるじゃない。
「恵んでやったでしょ、菓子パン。有り難く思いなさい」
「お前絶ッッッッッ対友達いねぇーだろ」
「エスパー?」
「当たってんのかよ。外れろよなそこは」
バリィ!ってすごい勢いで包装紙破いてハイスピードで貪りだした。
そんなお腹すいてたの?
このなんでも手に入る時代に??
「貧困家庭?」
「あ?なんだよ?」
「いや、なんでも。」
「へぇ。てか他にねーの?これだけで足りるわけなくね?」
「あるけどあげない。私の好物だから。」
「目の前にひもじくしてる奴がいるのにか。」
「知らんし関係ないし。もういいでしょ?それじゃ。」
構ってられない。
これじゃますますエスカレートしてどんどん物乞いされるわ。
もうほっといて学校行こっと。
ーグギュルルルルルル!!!!
「…は?」
「腹減ってんだって」
「嘘でしょ?そのお腹なに飼ってんの? 」
空腹の音?今のが?
「しょーがねぇだろ。里を追い出されてからなんにも食ってねーし。冤罪でだぜ?マジでざけんな」
「興味無いけどそーなんだ。」
「あれよ興味」
あ、いかんいかん。
そろそろ本当に行かなくちゃ。
「他人に興味なんて持てないって。それじゃ」
「薄情者め。はぁ…腹減ったぁ…」
「…」
クルリ。ースッ
「あ?なんだよ。…あ。」
学校、行くには行くけど。
なんか後ろ髪引かれるし。
これくらいならしてもいい施しだと思う。
うん。それだけ。
「ご飯、それで少しは買えるでしょ。そんじゃ学校遅れるから」
「1万円…簡単に出しやがった…」
お札が食べ物に見えてます?ってくらいヨダレだらだら。
汚いなぁ。
帰りは会わないように気をつけて帰らなくちゃ。
懐かれたら大変だしね。
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